パスワードを忘れた? アカウント作成
454657 journal

uruyaの日記: 海は涸いていた / 白川道

日記 by uruya

海は涸いていた / 白川道
★★★☆☆

伊勢商事社長、伊勢孝昭。三十六歳。佐々木組組長にさそわれて、布田昌志とともに上京したのは九年前のこと。布田が暴力団組織に深くかかわる布田商会を運営するのと対照的に、伊勢は真っ当な飲食店経営で実績をあげ、裏金をプールする仕事のみで、組とかかわっている。伊勢の本名は芳賀哲郎という。その名前を捨てたのは、上京の直前、実父を撃ち殺してからだ。

実父は暴君で、両親の離婚により解放されるまで、伊勢はつらい日々を送っていた。継父は対照的に、血のつながらない伊勢をいつくしみ、伊勢も継父を深く尊敬した。その継父の姓が、芳賀である。しかしその生活も長くは続かず、継父が急死すると、あとを追うように母親が火事で死亡。伊勢と、妹の薫は養護施設ですごすようになった。薫には天性の音楽の素養があり、音楽教授の家に養子縁組みされ、いまでは天才ヴァイオリニスト馬淵薫として成功。西地コンツェルン御曹司、西地圭介と熱愛の噂があった。

施設に残った伊勢と仲のよいものがふたりいた。弟分の三宅慎二と、藤城千佳子である。三人の運命が、十数年の歳月をへだててふたたび交錯したことから、停止していた伊勢の過去が、また動き出すことになった。クラブ勤めの千佳子には、岡堀というヒモのようなフリーライターの男がいる。千佳子が伊勢と知り合いであることを知ると、岡堀はしきりに周囲を探りはじめる。岡堀のメモから、何を嗅ぎまわっているかを知ったふたりは、思いあまって過激な行動に出る。

─────

おれ、この仕事が終わったら田舎に帰って結婚するんだ…フラグが立つまでが前半、立ったあとが後半。前半で丹念に描き込まれた人間関係が、後半の怒濤の展開を支える。むっちゃおもしろい。直接には描かれていていない薫の存在を、まるでそれが聖域であるかのように、登場人物全員が支えようとする。ある一点の落としどころに向かって、何の迷いもなく突き進む、漢(おとこ)の姿。かっこよぎだろ。震えるわ。

カバー折り返しのところにのってる著者近影、まあトッポイおっさんですわ。経済ゴロっぽい経歴、というよりまんま経済ゴロで前科持ち。ギャンブラーとしてもつとに有名。そんなおっさんの書いた小説ねえ…なんて、わりと斜にかまえて読み始めたのに、ぐいぐい引っぱり込まれてしまった。

出てくる男たちのほぼすべてが、情熱あふれる気持ちのいい野郎たちである。多少の違和感はあるものの、それを超える熱さも感じる。とても熱い作品だ。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

UNIXはシンプルである。必要なのはそのシンプルさを理解する素質だけである -- Dennis Ritchie

読み込み中...