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uruyaの日記: 限りなき夏 / クリストファー・プリースト

日記 by uruya

限りなき夏 / クリストファー・プリースト
★★★☆☆

限りなき夏
一九四〇年、トマス・ジェイムズ・ロイドは戦時下のイギリスにいた。街にはロイドが「凍結者」と名づけた者たちが徘徊しており、カメラのような装置を首からさげ、気に留めた光景を見ると、そこからビームを照射する。するとそこにあったものは、活人画のように時を止める。ロイドにだけ凍結者や活人画が見えるのは、彼がいちど凍結されてからふたたび動き出した人間だからだ。
一九〇三年、富裕な家に生まれ二十歳になったロイドには、婚約者がいた。しかしロイドは婚約者のシャーロットではなく、妹のセイラに恋をしていた。

青ざめた逍遥
わたしが子供のころ、家族で「フラックス流路公園」へピクニックにいくことを楽しみにしていた。恒星船が飛び立ったあとに残ったフラックス流体の川を公園にしたもので、「明日橋」を渡れば明日へつき、「昨日橋」を渡ると昨日に戻る。あるときわたしはいたずら心を起こし、明日橋を渡りきる少し手前から岸へ向かってジャンプすると、数十年後の世界へ出てしまった。家族とはなれて心細くなったわたしに、ある青年が近づいてきて帰り方を教えてくれ、戻ることができたのだが、そのときその青年は、公園の片隅に座っているエスティルという少女を指し示し、恋の情熱を述べたのだった。

逃走
政治的大問題が発生したという知らせを秘書から受けたロビンズ上院議員は、大急ぎで事務所へ戻ろうとする。すると車のまわりに少年達があらわれて、取り囲みはじめた。

リアルタイム・ワールド
ダン・ウィンターと妻のクレアは、異星の生態系を観測する観測所の一員として科学者たちと暮らしている。表向きダンの役目は報告書を地球へ向けて通信することだったが、本当の任務はトルヌーヴ効果を測定することにある。各個人の環境や生活範囲によって異なる時事情報の影響を数値化しようという試みの実証で、ごく限られた情報しか得られない環境のなかで、被験者たちには個人ごとに影響指数の高いニュースだけが知らされる。すると情報を遮断された人々は、願望や推測、想像をもとにして噂のネットワークを作りだすのだ。そして実験を通してダンが気づいたのは、ある一定の期間ののちに、彼らが作り出した幻想が、徐々に現実を予測しはじめたことである。

赤道の時
戦争が行われている世界。赤道上空には渦があり時間を歪めている。それが何であるかは誰も理解していないが、渦を利用してたった数時間で地球を半周する航法が確立されている。そのため赤道周辺は中立地帯になっている。

火葬
グライアン・シールドは叔父の代理でコリン・マーシアの葬儀に出席した。奇妙な島の風習に疎外感を感じたグライアンは早々に立ち去ろうとするが、故人の一族のひとりアラニアから露骨な誘いを受けて連れ出される。アラニアによれば、コリンがめずらしく火葬にふされたのは、スライムに刺されて死んだからだという。スライムとは生理的嫌悪感を抱かせる嫌な昆虫で、毒がある。もっと嫌なことには、雌の口に育児嚢があり、噛みついた動物の体内に幼虫を寄生虫として送り込むのだ。

奇跡の石塚
死んだ叔父の遺品整理のため二十年ぶりにシーヴル島に渡ろうとしていたレンデン・クロスは、若く美しい警官リースに呼び止められる。交戦地帯であるジェスラでは護衛なしでの島への渡航は禁止されており、レンデンはリースとともに旅をしなければならないらしい。
こどものころ、レンデンの叔父はシーヴルで神学校の事務職をしていた。叔母のアルヴィは死病にかかっており、彼女の見舞いをかねて父母と一緒に定期的にシーヴルに渡っていたが、レンデンにとってそれは憂鬱な行事であった。いとこのセラフィナと気が合わなかったことも陰鬱さに拍車をかけた。

ディスチャージ
記憶喪失の兵士は、輸送船に乗せられてミュリジー島についたとき、記憶の一部を取り戻す。ラスカル・アシゾーンという画家が超音波顔料をもちいて描いた絵画は、それに触れた人にセックスファンタジーを想起させる。若い画家だった彼は、アシゾーンの絵に触れて大きな感動を得たことがあるのだ。兵士はミュリジーに上陸してアシゾーンの絵を探すが、やがて娼館に迷い込んだ彼の目の前で、かつてアシゾーンの絵を通して見たセックスの光景が再現される。
その体験ののち前線に送られた兵士は、開戦を前にして脱走を決意する。

─────

このところ忙しくて、これ一冊読むのに二週間かかってしまった。さらっと感想。

『限りなき夏』
『青ざめた逍遥』
SF的背景のラブストーリー。幻想的でロマンチックなお話。『青ざめた逍遥』のラストがわけわからん状態になってて笑った。絵を想像すると相当おかしい。

『逃走』
起こっていることの説明は一切なく、投げっぱなし。デビュー作だそうで、なるほど他作品にもそういう傾向があるよね。

『リアルタイム・ワールド』
幻想と現実が入り交じって真実はどこにあるか誰にも分からない。SF的にはこれがもっともSFらしい。

『赤道の時』
『火葬』
『奇跡の石塚』
『ディスチャージ』
〈夢幻群島〉という連作短篇。よくわからんけど戦争が三千年も続いてて、よくわからんけど夢幻群島という島々がある世界。各話は特につながっていなくて、同じ世界を使っているというだけしか共通点はない。『奇跡の石塚』にはやられたなあ。説明できないけど。

背景にSF的ガジェットを使って幻想的な物語をつくるのが特徴の作家のようだ。性的なネタが多いのも特徴かな。きっちりとした解決をつけるタイプじゃないので、たぶん好みはわかれると思う。俺は好きな方。

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あつくて寝られない時はhackしろ! 386BSD(98)はそうやってつくられましたよ? -- あるハッカー

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