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uruyaの日記: 完訳 千一夜物語(7) / 豊島与志雄・他 訳

日記 by uruya

完訳 千一夜物語(7) / 豊島与志雄・他 訳
★★★★☆

黒檀の馬奇談
第414夜-第432夜
ペルシアの王サブールには、三人の美しい姫君と、王子カマララクマールがいた。ある年の春の祭礼で、空を飛ぶ黒檀でできた馬など、みごとな宝物を三人の学者から献上された王は、望むものを褒美としてとらせようと言う。すると学者たちは、姫君を妻として求めたいと申しでた。ところが、姫たちのなかでもっとも美しい末娘の相手となった、黒檀の馬を献上したペルシアの学者は、百をこえるほどの高齢かつ人間離れをした醜さなのである。カマララクマールは妹の悩みを聞き、思い直すよう王に求めるが、結婚に反対された学者はそれを恨み、降下の方法を知らせぬまま王子を黒檀の馬に乗せ、飛びあがらせてしまった。王子が帰ってこないことを知った王は怒り、学者を鞭打って牢へ入れる。
空へ飛び立った王子は、天性の勘で操縦法をマスターし、ヤマーンの都サナの宮殿に降り立って夜をあかすことにした。そこにはシャムスエンナハール姫が休んでおり、ふたりは恋に落ちるが、闖入者の存在はすぐに父王の知るところとなる。汝は人か魔神かと尋ねる王に対し王子は、自分がホスローの太子であることを明かし、すべての軍隊を自分に差し向ければ我一騎で打ち破ってみせる、それをもって婿として承認せよ、と申し出る。翌朝その通りにすると、戦闘開始の前に乗馬として黒檀の馬を引いてくるように要求。それにまたがると、空に飛びあがってペルシアへ向けて逃走した。
故国へ帰るも姫君への思いがつのった王子は、ふたたび黒檀の馬に乗ってサナへ向かい、姫君をさらって帰還する。都の手前に姫をのこし、王へ話を通しにゆくが、そこへ通りがかったのは王子生還後に釈放されていたペルシアの学者である。黒檀の馬とみごとな美女が一緒にいるのを見ると、姫をだまして馬に乗り、ルーム方面へ拉致してしまった。しかし醜い老人が乙女を連れているのを不審に思ったルーム人の王は、学者を逮捕して土牢に押し込め、乙女を後宮に引き入れる。
姫の姿が消えたことを知った王子は、行方をさがして放浪の旅を続けていた。やがてルームにたどりつくと、黒檀の馬に乗ってあらわれた美人がおり、国王は気に入って結婚しようとしたが、急に気が狂ってしまったため、治療する医者を探しているという話を聞きつける。王子は医者をよそおって国王に近づき、姫と再会を果たす。姫の病気は結婚を避けるための佯狂であったが、馬の霊が憑いているためだといい、黒檀の馬を引いてこさせると姫を乗せ、自分も乗り込むと空へ飛び立ち、ペルシアへ向けて飛び立った。やがて乙女を失ったことに気づいたルームの王は怒り狂い、学者を牢から出して処刑した。
姫を連れ帰った王子は晴れて婚姻を行い、サナの王に使者を出すと父王もこれを祝福。ペルシアとヤマーンは末永く親交を結んだ。

女ペテン師ダリラとその娘の女いかさま師ザイナブとが、蛾のアフマードやペストのハサンや水銀のアリとだましあいをした物語
第432夜-第465夜
教王アル・ラシードは盗賊「蛾のアフマード」と「ペストのハサン」を、その経歴を生かすために警備隊長に任命した。それを聞きつけた「女ぺてん師ダリラ」とその娘「女いかさま師ザイナブ」は、自分たちと同じようなごろつきが徴用されたことに嫉妬し、さらなる功名をあげようと企んだ。
まずダリラは、近衛隊長「街の禍いムスタファ」の屋敷にいく。その家には若妻がおり、ちょうど子供ができないことについて夫婦喧嘩をした直後であった。ダリラは懐妊に功徳がある長老を紹介するといい、女を連れ出す。市場にさしかかると、若い商人が女に色目を使っているので、あれは自分の娘で結婚相手を探していると言って、これも連れ出す。市場のはずれ、両刀使いの染物屋の店舗につくと、ふたりを娘と息子であるといつわり、すけべ心を刺激して屋敷の広間を貸りうける。染物屋の屋敷に入ると、言葉たくみに若者らを丸はだかにさせ、財布や装飾品を奪う。さらに染物屋の店へもどり、自分が店番をするので家にいるふたりの相手をするように言って主人を追い払うと、店じゅうの財産に手をつけた。そして驢馬ひきを呼び止め、染物屋は破産したので財産をひきあげる、ついては驢馬を貸してくれ、そしてお前は借金とりがくる前に店のものをすべて打ち壊してくれと頼み、そのまま姿をくらました。
次にダリラは、商人組合総代の屋敷に行く。ちょうど娘の結納式の日で家はごったがえしており、邪魔な幼い弟が女奴隷にあずけられていた。ダリラは、子供の面倒をみているから喜捨の申出を取り次いでくれと言って弟を誘拐し、身ぐるみをはいで商売敵のユダヤ人の店に連れ込み、身柄を質に千ディナール相等の宝物を詐取する。
被害者たちのうち、先に老婆をとらえたのは驢馬ひきである。まず床屋ハッジ・マスードの家にひったてるが、ダリラは驢馬ひきは気が狂っていて「驢馬をかえせ」とわめきたてるのだ、治療するには奥歯を抜いてこめかみを焼くしかない、といいくるめ、あわれ驢馬ひきは床屋の手でそのとおりにされてしまった。驢馬ひきはなおも執念深く老婆を探して再度つかまえ、今度は商人たちとともに奉行の屋敷に護送する。しかしダリラは奉行の妻に取り入り、五人は奉行が買った白人奴隷だと言って、代金をせしめて逃走した。
次の日話を聞いた奉行は、「街の禍い」からの訴えもあったため、老婆を捕まえるよう五人に指示。またも驢馬ひきが見つけて連行すると、奉行は城外に杭を打って老婆をつなぎ、一晩中見張っておくようにいいつける。ところが五人は夜中寝入ってしまい、そこへ大の甘党のベドウィン人が通りかかる。ダリラは、菓子屋と諍いをおこしたために翌日甘いものを十皿も食わなければならないのだとベドウィン人をだまし、身代わりにさせて逃げてしまった。
ここに至って一連の事件は教王に報告される。教王は「蛾のアフマード」に捕縛を命ずるが、手柄をひとりじめにしようとしたアフマードは「ペストのハサン」の協力を求めず、部下の「駱駝の背のアイユーブ」を先頭に立てて捜査にあたった。しかしアイユーブをはじめアフマードらは「女いかさま師ザイナブ」の手にかかって睡眠薬をもられ、全員身ぐるみをはがされてしまう。教王はこれを知ると、ハサンに連行を命ずる。ハサンは、彼女らが手に入れた財物を持ち主に返せば罪に問わない約束を教王にとりつけ、ダリラを教王の前に連れ出した。事件の動機を聞くと、教王はダリラを亡父がついていた鳩の管理役の職につけ、他に四十人の黒人と四十匹の犬の指揮権を与えた。
カイロの泥棒「水銀のアリ」は気晴らしに市場に出て、水かつぎから水を買う。二杯めまで捨てて三杯めを飲み、一ディナールを渡すと、水かつぎはケチであると言って怒り出した。わけを聞くと次のとおりである。
父の遺産を受け継いだ水かつぎは、殖産しようと考えて資金を集め、バクダートへ行商に出た。しかしバクダードでは金を出して水を買う習慣はなく、まったく売れない。困っていると「蛾のアフマード」があらわれ、同郷の水かつぎを懐かしんで水を所望し、二杯めまで捨てて三杯めを飲み、五ディナールを与えた。市場のひとびとはアフマードと同様に水を買い、一ディナールずつ支払ったため、たちまち千ディナールのもうけとなる。充分となったため礼を言って帰郷しようとすると、アフマードは「水銀のアリ」宛の手紙を水かつぎに託した。
身分をあかして手紙を受け取ると、手紙の内容はアリをバクダードへ招くものである。アリは子分を残してバクダードへ出た。
「蛾のアフマード」が「水銀のアリ」を呼び寄せたことを知ると、「女いかさま師ザイナブ」は色じかけでこれをだまして貴族の屋敷の井戸に閉じ込める。アリは貴族の家人の手で救助されたが、この事件によってアリはザイナブを恋してしまった。相談されたハサンはアリに知恵をさずけ、黒人の姿に変装させてダリラの家の黒人料理人に接触させる。料理人を酔わせて情報を入手すると、アリはダリラの家のすべての家人に眠り薬を盛って眠らせ、身ぐるみをはぎ、四十羽の鳩を盗み出した。目が覚めたダリラがハサンを訪ねると、鳩を返す代わりにアリとザイナブの結婚を許可するように持ちかける。ダリラは、自分に異論はないが、ザイナブの法的な後見人であるダリラの弟、天ぷら屋ゾライクの許可が必要であるという。ゾライクはもと盗賊だった男で、店先に千ディナールの財布を吊り下げて盗みの挑戦者を募っては、財布の先に結びついた鐘が鳴ると石礫を放ち、ひどい目にあわせている。
アリはまず妊婦に変装して財布を盗もうとするが、気づかれて失敗する。次に馬丁に変装するが再度失敗。三度目は蛇使いにばけるが、これも気づかれてしまう。しかしアリのしつこさを警戒したゾライクが、財布を家に持ち帰り妻に命じて台所に埋めさせると、ゾライクをつけて一部始終をみていたアリは、財布を掘り出して盗むことに成功した。すぐに気づいたゾライクはハサンの家に先回りし、アリが帰ってくるとハサンになりすまして財布を受け取って逃走する。アリもすぐに気づき、ゾライクの家にとって返して妻子を縛り、妻のふりをして財布を受け取り、とうとう入手に成功した。財布とひきかえに結婚の許可を求められたゾライクは、婚資としてユダヤ人アザーリアの娘カマーリアの、金の衣、冠、帯、靴を要求する。しかしユダヤ人アザーリアはおそろしい魔法使いで、金の衣などを奪ったものにはカマーリアとの結婚を許可しようと言っては、近寄ってくる勇者らを動物の姿に変えているのである。
アリは単刀直入にアザーリアに事情を話し、譲ってもらうよう申し入れるが、魔法使いはアリを驢馬に変え、水売りに売ってしまった。売り先で騒動を起こしたアリの驢馬が戻ってくると、今度は熊の姿に変え、熊の肉を求める男に売る。屠殺されそうなところを逃げ出したアリの熊がまた戻ってくると、アザーリアはカマーリアを立ち会わせて犬に変える。だがこのとき、一瞬人間にもどったアリの姿を見たカマーリアは、一目で恋に落ちてしまったのである。
アリの犬は親切な骨董屋に拾われるが、骨董屋の娘はアリが人間であることを見抜いた。この家にいる女奴隷のひとりがかつてアザーリアに仕えており、妖術を習得して娘にも伝えていたのである。娘と女奴隷は、自分たちと結婚することを条件に、アリを人間の姿にもどす。するとそこへカマーリアが、アザーリアの生首をもってあらわれる。カマーリアはアリへの愛から、回教徒に改宗し、その証として魔法使いの首をとってきたのだ。アリはカマーリアも妻とし、また、ザイナブを法で許された四人めの妻とするため、ダリラの家に向かう。
こうしてアリはぶじに四人の妻を得た。アフマードからアリを紹介された教王は、彼をアフマードやハサンと同等の位置につける。アリは子分たちをバクダードに呼び寄せ、教王の許可を得て警吏の職につけた。

漁師ジゥデルの物語または魔法の袋
第465夜-第487夜
商人オマールには三人の息子がいたが、末子ジゥデルを特にかわいがっていたため、自分の死後に兄弟が諍うことを案じ、死に際して財産を四等分し息子らと妻に分け与えた。しかし兄のサーレムとサリームは財産分与についてジゥデルを再三訴えたため、裁判費用が嵩んで三人とも無一文になってしまう。兄たちが母親の財産をぶんどってしまったため、ジゥデルは母をひきとって漁師の仕事をはじめる。財産を使い果たした兄らを、母が不憫に思ってこっそり飯を食わせてやっていたことに気づくと、兄たちも養うことになる。
あるとき、不漁が続いたジゥデルは、足を伸ばしてカールーン湖に漁にでることにした。すると湖畔に騾馬に乗ったマグリブ人がいて、次のような頼み事をしてくる。
自分の手足を縛って湖に投げ入れ、手が先に浮いてきたならば網を投げて助け上げてくれ。そうすれば謝礼を支払うであろう。足が先だったときは自分は死んでいるので、その場合市場にいるユダヤ人に騾馬を売れ。百ディナールになるであろう。
言うとおりにすると足から浮いてきたため、騾馬を売って百ディナールを手に入れた。次の日もカールーン湖に出ると、別のマグリブ人がいて同じ事を頼んでくる。これも足から浮いてきたために、ジゥデルは百ディナールを得た。またその次の日、別のマグリブ人が同じ頼みをしてきたが、この男は手から浮かんでくる。網を投げて救い出すと、男は両手に赤い魚を抱えていた。
男はアブド・アル・サマドといい、先に死んだふたりとは兄弟であり、市場のユダヤ人もじつは回教徒で、兄弟のひとりである。父である大魔術師アブド・アル・ワドゥドが死んだとき、兄弟はその蔵書などを均等にわけたが、稀覯本「古人列伝」を誰が所有するかが決まらなかった。父の師匠が調停に入り、アル・シャマルダルの四種の秘宝、天球儀、瞼墨の壜、剣、印璽を手に入れたものがそれを受け継ぐことになった。それらは「紅玉」のふたりの王子の支配下にあるが、王子らはむかし父の大魔術師に追い詰められたとき、カールーン湖に魚の姿となって逃げ込んでいる。その湖自体にも魔法がかけられており、解除するにはジゥデルという漁師の手を借りなければならなかったのだ。
さらにアブド・アル・サマドは、宝を入手するためにジゥデルの力が必要なので、一緒に来て欲しいという。ジゥデルは支度金の千ディナールを母のためにのこし、共に旅に出る。望んだごちそうがいくらでも出てくる魔法の袋や、一日に一年ぶんの距離を歩く騾馬を使い、ふたりは五日後にマグリブに到着。歓迎の祝宴がはられ、到着から二十一日めに儀式を始めることになった。川に出て二匹の魚を放ち呪文を唱えると、水がふたつに割れて門があらわれる。アブド・アル・サマドは次のようにジゥデルに指示した。
門は第七まであり、第六まではそれぞれ剣士、槍士、弓士、獅子、黒人、竜が守っている。これらはジゥデルを殺そうとするが、臆することなく堂々としていれば消えてなくなるであろう。第七の門にはジゥデルの母が現れるので、脅して丸裸にしてしまえばかき消える。すべての門をくぐると莫大な財宝があるが、一切手をつけずアにシャマルダルに近づき、身につけている四つの宝を入手するのだ。
第六の門番まではパスしたジゥデルだが、老母を丸裸にするには忍びず、つい下ばきのみつけることを許してしまう。すると母の姿をしたものは魔神たちを呼んでジゥデルを袋だたきにさせ、宝の入手は失敗に終わった。次の挑戦には一年間待たなければならず、ジゥデルは一年間をその地で過ごす。
次の年再度挑戦したジゥデルは、宝の入手に成功する。アブド・アル・サマドは財宝がつまった袋とごちそうが出る袋を謝礼として渡し、神速の騾馬に乗せて故郷へ送った。家へ戻ると、母親が物乞いをしている。兄たちが千ディナールを使い果たしてしまったのだ。ジゥデルは袋からごちそうを出して母に供する。兄らもジゥデルが帰ってきたことを聞きつけ、ごちそうにありついた。
兄らは、ジゥデルが持ち帰った宝を横領しようと計画。ジゥデルを水夫として売り払い、財宝をやまわけにする。しかしごちそうを出す袋をどちらが所有するか争っていると、その騒ぎを聞きつけた王様は、ふたりを逮捕して牢に入れ、袋を没収。母親には毎月捨て扶持を与えることにした。
一方ジゥデルだが、彼の乗った船は難破してしまった。泳いでたどり着いたベドウィン人の村には親切な商人がいて、ジゥデルを連れてメッカの巡礼に出る。そこでジゥデルは、アブド・アル・サマドに再会した。アブド・アル・サマドは星占いをして、巡礼の期間が終わるまで待てば運気が開けるだろうという。そして期間が明けた後、ジゥデルに印璽を渡した。印璽には魔神「轟く雷電」が封じ込められており、印璽をなでると魔神があらわれ、望みを言えば叶えることができるのだ。ジゥデルは「轟く雷電」の力で家に戻ると、王の宮殿から兄たちの身柄を奪還し、すべての財宝を運び出させ、別に宮殿を建てさせてそこへ運び込んだ。
それを知った王は怒り、将軍を派遣してジゥデルの宮殿を攻めさせるが、「轟く雷電」がそれを撃退する。大臣は王に献策し、ジゥデルと講和することになった。ジゥデルの力を恐れた王は、娘エル・セット・アジアーをジゥデルと結婚させることにした。王が死ぬとジゥデルは即位し、兄たちを大臣の位につけた。
だが長兄サーレムは、サリームと謀ってジゥデルを毒殺し、さらに「轟く雷電」の力でサリームをも殺し、王の座を奪う。そしてエル・セット・アジアーを自分のものにしようとする。エル・セット・アジアーはサーレムを毒殺し、印璽を破壊してごちそうの袋も破き捨てる。そしてすべての顛末をイスラームの長老に報告すると、新しい王を重臣たちに選ばせた。

アブー・キールとアブー・シールの物語
第487夜-第501夜
イスカンダリアの染物屋アブー・キールは、染物を頼まれた布地を勝手に売っては飲み代にしていたため信用を失い、やがて窮迫。正直者の床屋アブー・シールに寄生して暮らしていた。しかしアブー・シールも客筋が悪く、けして裕福ではない。ふたりは相談し、どちらが稼いだ金であろうとも折半するという約束で、いっしょに旅に出る。
二十日の船旅のあいだ、そして上陸してからも、調髪をして金を稼ぐアブー・シールに対し、アブー・キールは船酔いが収まらないと言って寝て暮らしていた。しかし上陸後四十日を経過したのち、アブー・シールは病にかかって半死半生で寝込んでしまう。アブー・キールはアブー・シールの財布を持ち出して外へ出た。
そこでアブー・キールは妙なことに気づく。この街のひとびとは、白と青の布地しか身につけていないのである。青以外に染める染物の技術を持っていないのだった。アブー・キールは王様に進言して染物工場を建設。カラフルな染物を独占生産し、莫大な富を築く。
親切な宿の門番の介抱でやっと回復したアブー・シールは、アブー・キールが成功していることを知り接触しようとする。しかしアブー・キールは、アブー・シールを棒叩きにして追い返すのだった。失意にくれて宿屋に帰ったアブー・シールは、気分転換に浴場へ行こうと思い立つ。しかし、この町には浴場というものが存在しないのだ。アブー・シールは王様に進言し、浴場を建設。浴場というもののすばらしさを知った王様は、この商売を手厚く保護し、アブー・シールはたちまち巨万の富を手にした。
アブー・シールの成功を聞いたアブー・キールは、厚顔にも湯屋へ出向いて言い訳を述べる。アブー・シールが許すと、この湯屋には脱毛剤が足りないと助言して、生石灰を使用した製法を教える。そしてその足で王様に謁見し、アブー・シールはキリスト教徒の間諜であり、脱毛剤に見せた毒薬を用いて王を暗殺するつもりなのだと讒言する。湯屋に向かった王様は、果たしてアブー・シールが脱毛剤を取り出すところを見ると、彼を捕縛させて生石灰の袋に詰め、海に突き落とすように命令する。
その命令を受けたのは、アブー・シールを乗せてこの地まできた船の船長であった。船長は、船旅のあいだ頭をあたってもらい世話になっていたアブー・シールを島に隠し、ニセモノの袋を海に捨てることにする。王様の合図によってその処刑は行われたが、合図の瞬間、王様がはめていた指輪がするりと抜け、海の中に落ちてしまう。その指輪は、腕を振ることで罪人の首を瞬時にとばすことのできる魔法の指輪であり、それによって王様は臣下を服従させていたのである。王様は、指輪を紛失したことを極秘にした。
アブー・シールは島で魚釣りをしていたが、釣れた魚のエラに指輪がはさまっているのを見つける。王様が紛失した指輪であった。船長がそれに気づき、アブー・シールは王様の前に出て指輪を返却する。そして脱毛剤の件がアブー・キールの策略であったことを訴えると、王様はアブー・キールを捕らえ、生石灰の袋に詰めて海に突き落とし、処刑した。
それからアブー・シールは王様に請い、インスカンダリアに帰還する。イスカンダリアの浜辺には袋が流れ着いており、開けてみるとアブー・キールの遺体が詰まっていた。

匂える園の道話
第502夜-第505夜
「三つの願いごと」
敬虔な教徒だけが三つの願いを叶えることができる夜を迎えた男は、妻に願い事をたずねる。第一の願いで陰茎を大きくしてもらったが、大きすぎて用をなさない。第二の願いで陰茎を小さくしてもらったが、今度は小さすぎる。男は第三の願いで、もとの大きさに戻してもらった。
「若者と風呂屋のあんま」
風呂屋のあんまは、大臣の息子の陰茎がひどく小さいことに気づいた。若者は、美しい女さえいればこれは大きくなるのだろうと言い、あんまに紹介を頼む。あんまは、あんなに小さいモノでは用をなすまいと思い、自分の妻をあてがう。しかし若者の陰茎は、若く美しいあんまの妻を前にして本当に大きくなったのだ。若者にすっかり夢中になった妻を見たあんまは、飛び降りて自殺した。
「白にもいろいろ」
人妻を恋した男は、女の身持ちが堅くどうにもならないために憎さ百倍、復讐を誓う。下男と仲良くなって、夫婦の留守に上がり込むと、ベッドの上に生卵の白身をたらした。帰宅した夫は、それが精液であると疑って、妻を処刑しようとする。しかし下男がそれを焼いて卵の白身だと証明したため、事なきを得た。

陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラーの物語
第505夜-第515夜
漁師アブドゥッラーは九人の息子がおり、生活は裕福とは言えず、その日取った魚で暮らす毎日であった。十人目の息子が生まれた日、いつものように網を入れたアブドゥッラーは、人魚の男を引き上げる。人魚は名を同じくアブドゥッラーといい、海中に暮らす、れっきとした回教徒なのであった。海のアブドゥッラーは、これから毎日、陸の果物と海の珊瑚・真珠・宝石を物々交換しようと提案し、まず駕籠いっぱいの宝石を陸のアブドゥッラーに渡す。陸のアブドゥッラーは、不漁のときいつもパンをもらっていたパン屋に寄って宝石の一部を渡し、残りを家に持ち帰った。
次の日、果物と宝石を交換した陸のアブドゥッラーは、宝石商にそれを売りに行く。宝石商は陸のアブドゥッラーを泥棒だと思い、鞭打って王様に突き出すが、陸のアブドゥッラーが持っていた宝石は、王妃が盗まれたものと合致しない。王様は宝石商を叱って追い返す。事情を聞いて感心した王様は、この財産の持ち主を保護しようと考え、娘の「栄え」と結婚させ、大臣に起用して妻子も呼び寄せさせた。
その次の日、海のアブドゥッラーと宝石を交歓してきた陸のアブドゥッラーは、パン屋が店を閉めていることに気づく。陸のアブドゥッラーが逮捕されたのを聞いて逃げ出し、家に籠もっていたのだ。王様にパン屋の話をすると、王様はパン屋も呼び出して、もうひとりの大臣に据えた。偶然にも、パン屋も王様も、すべて同じアブドゥッラーという同じ名前を持っていた。
一年あまりが過ぎたころ、海のアブドゥッラーは、陸のアブドゥッラーを自分の国に招待する。怪魚ダンダーンの肝油でできた薬を塗れば、海中でも息ができるという。ついていくと、海の中の人々はすべてお臀のかわりに尾を持っており、陸のアブドゥッラーを「シッポがない」とからかうのであった。海の王様にも謁見し、さんざん物見高くおもしろがられた末、陸のアブドゥッラーは宝石を持っての帰還することを許可される。
陸の王様にそのことを報告すると、陸の王様は、大臣かつ婿である陸のアブドゥッラーをからかった海のひとびとに不快感を示す。陸のアブドゥッラーは王の怒りを慮り、それから海のアブドゥッラーに合うことはしなかった。

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「のた魚いらんかね」「シッポがない」

全十三巻中のちょうど真ん中。夜数も五百を超えて、折り返し。
『女ペテン師ダリラと…』のあらすじはWikipediaに投稿しました。ログインし忘れたのでIPアドレス投稿になりましたが、コピペしてもされてもいませんので、念のため。

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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー

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