uruyaの日記: 悪人列伝(1) / 海音寺潮五郎
悪人列伝(1) / 海音寺潮五郎
★★★☆☆
蘇我入鹿 / 弓削道鏡 / 藤原薬子 / 伴大納言 / 平将門 / 藤原純友
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史上悪人とされている人物を、史伝的に紹介してみようという作品。そこはそれ海音寺史伝ですから、八方論を張って自説へ誘導していくわけであります。小説的演出を排するぶん、本当のように見えて始末におえないですね。わらい。
蘇我入鹿
蘇我一族の事歴を紹介。仏教伝来とともにその庇護者となり、聖徳太子とともに時代をリードして隆盛を極めた。聖徳太子が死ぬと勢いは天皇家をしのぐようになる。このとき蘇我氏は、蘇我朝廷を開いてもうひとりの天皇になっていたのだ、というのが海音寺説。
弓削道鏡
道鏡伝というよりは、孝謙帝伝になっている。女帝で、はじめ藤原仲麻呂を愛人とし、のちに道鏡を愛して帝位につけようとした。ほぼ同時代の則天武后とよく対比される人物だが、海音寺は、男によって趣味嗜好を変え、男の思い通りに行動しようとする「かわいい女」だったと描く。
藤原薬子
平城上皇と嵯峨天皇が争った、薬子の乱の首謀者。平城上皇の年上の愛人で、裏から操って乱を起こした。美貌と野心を兼ね備えた女、と説明される。
関係ないですが、この人の名前を聞くたび、つボイノリオを連想して笑ってしまう。某インカ帝国。
伴大納言
著者もどこかの節で触れてたけど、本朝の悪人はスケールが小さい。大陸の殷紂・妲己のような、想像のはるか上空をいく狂い方をした人物は皆無。唯一、昭和初期の集団狂気はそれに近い。個より集合体となったときに狂気を発するのは民族性だろうか。日本人が真の狂人を産むには、個とネットの融合を待たねばなるまい。(産む必要ない)
伴善男も相当ちっちゃい男である。他者よりすこしだけ出世欲が異常だっただけ。
平将門
このあたりでやっとおもしろくなってきた。複雑怪奇でチマチマした貴族どもの陰謀劇は性にあわん。将門だってそうだろう。だからあんなことになった。
女問題がこじれて同族と喧嘩するわ、担ぎ上げられていい気になるわ、このころの武士は単純明快。要するに田舎農民の親分にすぎないからだ。結局は京の貴族らに、赤子の手をひねるように潰されていく。このあたり木曽義仲や九郎義経も同様。頼朝のような陰湿さをもった人間でないと、朝廷に対抗できない。
藤原純友
東で農民にかつがれたのが将門、西で海賊に祭り上げられたのが純友。
偶然にも時を同じくして反旗をあげた両者。歯車がちょっとずれたいたら天皇家がどうなっていたかわからない、と説くけれど、自分としては賛同しない。魑魅魍魎の世界を多少かき回すだけの結果なのではないか。墨に落ちた白一滴はやがてまぎれる。
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