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uruyaの日記: 黒後家蜘蛛の会(5) / アイザック・アシモフ

日記 by uruya

黒後家蜘蛛の会(5) / アイザック・アシモフ
★★★☆☆

同音異義
ニコラス・ブラント。弁護士。ある事業家が亡くなり、三人の息子たちが後を継ぐことになった。合議制を採用して事業は円満かつ順調に運営されているのだが、彼にはちょっとした心残りがある。事業家は死に際して、正式な後継者を指名したのかもしれないのだ。事業家が言い残した言葉は「トゥ」

目の付けどころ
ホレイス・ルービン。イマニュエル・ルービンの甥。偏屈で変わり者の実験化学教授とそりがあわない彼は、単位修得の危機を感じ、話し合いを行った。教授は彼にさんざんイヤミを浴びせた後、無理難題をふっかけてくる。「今わたしの頭に浮かんでいる元素名を当ててみたまえ」

幸運のお守り
アルバート・シルヴァスタイン。ノベルティグッズショップ経営者。あるホテルに滞在していたときのこと、同宿の一家が幸運のコインを紛失したと言い出した。ひどくあわてた様子で、居合わせた人たちも協力して探し回るがみつからず、ついには持ち物検査やボディチェックまで行うが、とうとう発見できずじまい。

三重の悪魔
ベンジャミン・マンフレッド。書籍流通で財をなした立志伝中の人物。極貧の小年~青年期に彼をかわいがってくれた資産家は、一冊の稀覯本を持っていた。資産家が亡くなり、遺言によって蔵書のうち一冊だけを相続することになったとき、彼はその本を見事に的中してみせる。キーワードは「トリプル・デヴル」

水上の夕映え
チェスター・ダンヒル。歴史家。青年時代に夢中になって読み、今や入手困難な歴史本を手に入れたい彼は、広告を出して売り主を募った。やがて売ってくれるという人から手紙を受け取るが、うっかりエンベロープを捨ててしまい、連絡先住所がわからない。手紙の内容からわかるのは、名前と、水上に夕日を望む岸辺に住んでいること。

待てど暮らせど
ブラッドフォード・ヒューム。投資顧問。副業で講演を行っている彼に、テレビ局からインタビューの依頼が来た。しかし指定された弁護士事務所の会議室に、カメラマンが現れない。信用のおける人物で、すっぽかすようなことはありえない。ホテルは目の前で、すでに部屋を出ている。途中で事故にあったわけでもない。結論として、カメラマンは意外な場所にいたのだが、はたして?

ひったくり
ウィリアム・テラー。コラムニスト。彼の妻が使っていた、古びたハンドバッグがひったくりにあった。しかしその二日後、ハンドバッグの中身が、現金も一セントも違えずに、返却されてきたのだ。ハンドバッグ自体を除いて。犯人の目的は。

静かな場所
シオドア・ジャーヴィック。ルービン担当の編集者。静けさを愛する彼は、年に数度リゾート地を訪れて喧噪を避けることにしていた。あるとき「ダーク・ホース」と名乗る同好の士と知り合い、とっておきの静寂の場所を教えてもらう。ところが、その後何度おなじ場所に行こうとしてもたどりつけない。もう一度ダーク・ホースに聞くことができればいいのだが…

四葉のクローバー
アレグザンダー・マウントジョイ。大学学長。テロリストに拉致された被害グループのうち、政府関係者だった者が殺害された。素性をテロリストへ漏らしたものがいたらしく、密告の容疑者は学内の四人に絞られている。被害者が残した四葉のクローバーのスケッチに、密告者に関する何らかのメッセージが隠されているようだ。

封筒
フランシス・マクシャノン。プログラマ。若いころ、スパイ摘発に協力した話。向かいに住んでいた無愛想な男が、女性から受け取った手紙の中身を捨て、封筒だけを大事そうにしまい込んだ。消印収集を趣味にしていた彼はその行動に目をとめて怪しみ、FBIへ報告したことが摘発につながったのだった。しかし、その男が封筒のみを懐に入れた行動の意味はいまだ謎のままである。

アリバイ
レナード・ケーニヒ。もと諜報員。スパイのアリバイを破った話。そのスパイは、自分のみが知りうる情報を流すために、周到な用意をしていた。そっくりな替え玉をたててバーミューダへ派遣し、現地で女性と知り合うなど印象に残る行動をさせていたのだ。いざ嫌疑がかかると旅行に出ていたと証言するが、彼はそのアリバイを崩して見せる。

秘伝
マイロン・ダイナスト。鉛管工。妻の秘伝、ブルーベリー・パイのレシピが盗まれた。その日妻は、婦人会の集まりを断ってレシピを書き留めていた。部屋はほぼ密室状態で、その場にいたのは婦人たちから預かった四、五才の子供たちだけである。

─────

後半テロやスパイがらみの話が多くなってるのが世相を反映してますな。東西冷戦終結前夜。レーガン・ゴルバチョフ時代。イライラ戦争真っ最中。

『秘伝』のあとがきに、わたしが生きている限り黒後家蜘蛛シリーズは書き続けていくだろう、ということが書いてあり、しんみりきました(事あるごとに同様のことを書いてるけど、ちょうどここで出てくるとはね)。アシモフはあと六作品を書き残して、一九九ニ年に亡くなった。

黒後家蜘蛛シリーズ作品で、現時点で手に入るものは、ここまで。The Return of the Black Widowersにその六作品が収録されているのだが、一冊の本にはなっていない(個別に翻訳、雑誌掲載はされている)。出版されないのだろうか。されないだろうなあ…とりあえず復刊ドットコムに投票しておいた。まあリクエスト集まってもおそらく無理だろう。

基本的に、ブラックウィドワーズメンバーたちの衒学的な雑談を楽しむ作品だと思います。提示される謎、それに対してやいのやいの分析するメンバー、最後にヘンリーがおごそかに解決を提示。ミステリというより、フォーマットにのっとった小粋な小咄ですな。このフォーマットだけで世界が成立している。読んでいるうちに個々の出来不出来は意に介さなくなり、世界にひたることのほうを楽しむようになった。希有な作品のひとつだと思います。

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