von_yosukeyanの日記: Team Slashdot Japan外貨部 番外編
さて、証券会社のアナリスト風に表現すれば不確定性が高まっている今日この頃の為替市場ですが、ちょっと自分として考えていることを
・ドル
結局のところ、ブッシュ政権の「経済政策」って何よ? ってのが大きいですね。アメリカ嫌いな人にとってはどっちでもいいことなんですが、アメリカには伝統的に二つの政治勢力があります
一つは共和党右派を中心とする孤立主義者たちです。避妊の禁止や、公立学校におけるお祈りの時間を設けろ! と、ナショナリストのように見えますが、日本やヨーロッパのナショナリストたちとは決定的に異なる主張を行います。まず、外交政策では孤立的な立場を取ります。要するに、アメリカの勢力圏はアメリカ大陸に限り、軍事費の無駄なヨーロッパやアジア、中東に対するコミットメントを削減しろと声高に主張します。かつての安保ただ乗り論などもそうです
もう一つは、財政均衡を目指しながら、最終的には小さな政府を指向するところです。これは、孤立主義者たちの源流である州権主義が関わっていますが、レーガノミクス(レーガン政権の経済政策)のように政府債務の削減に合わせて連邦政府の権限拡大に歯止めをかけることを目指しています(実際には、国防費の増大によってレーガノミクスは財政均衡と小さな政府は実現できませんでしたが)
もう一つの政治勢力は、フェデラリストを源流とする対外政策積極関与派です。共和党中道から左のほうへ、民主党中道や右派を含む勢力で民主主義と自由主義経済の散布に積極的な勢力です。中東へのコミットメントも、イスラエルに対する援助に賛成したり、ドル高政策を支持してウォール街を世界の金融センターとして維持するのに非常に積極的だったりします。大体のところ、彼らは政治的には寛容派に属するので、諸外国から見れば受けはいいのですが
クリントン政権の経済政策は、基本的には自由放任的な経済政策を取りつつ、ドル高を支持しながら、財政均衡を目指しつつ対外政策的には積極的に関与するという政策を取りました。別の観点から見れば、伝統的な輸出産業ではなく、西海岸のハイテク企業や東海岸の金融センターの支持を受けた政権といえますが、対外政策としては一貫した理念があったかどうかは微妙なところです
これに対してブッシュ・ジュニアの経済政策は、支持勢力がエネルギー産業や輸出産業のような伝統産業の支持を受けながら、財政的には軍事や公共事業に積極的な支出を行うという新しい政策で、極めて中期のレーガン政権やブッシュ・シニアの経済政策に似ています。実際、経済政策のアドバイザはブッシュ・シニアの時代から引き継いだ人材が多くを占め、例えば副大統領のチェイニー氏(エネルギー産業)や、前財務長官オニール氏(世界最大のアルミニウム精錬企業アルコアの前CEO)や新財務長官のスノー氏(鉄道会社のCEO)、国家安全保障問題担当大統領特別補佐官のライス女史(スタンフォード大学教授でシニアのアドバイザー)などシニアが再び大統領に就任したかのような陣営です
いずれにしても、減税をスローガンに大統領に就任したジュニアですが、減税政策はあまり経済にはプラスになっていないという評価もありますし、一時期高い支持率を誇っていたのですが、最近のギャラップ社の調査によるとイラク攻撃への反対や経済政策の手詰まりから支持率が低下しているようです。共和党右派や民主党などからは、財政支出が拡大するイラク攻撃よりも現実的に同盟国を脅かし、アメリカにとって脅威となる北朝鮮政策を優先するべきだという声もあったりします
中間選挙を前に、財務長官も交代し新しい経済政策の発表が待たれるところですが、いずれにしてもドルへの投資は不確定要因が多く個人的には踏み出せない領域です
個人的には、中長期の債権や価格変動のある国債を原資産とする投資信託、そして長期の外貨定期預金はあまり魅力がないと思います。特に社債組み入れ比率の高い投資信託などは、今後下落リスクが高いと言えると思います。投資するならば、短期資金の組み入れ比率の高い外貨貯蓄預金やMMFあたりがいいんじゃないかと
・ユーロ
昨年鳴り物入りで流通が開始されたユーロですが、最近のドル安の影響で日本ではドル預金からユーロへのシフトがかなり急速に進んでいます。例えば、大手銀行は手数料でがっぽり儲けてるくせに実質的にはマイナス金利になるインチキ高金利の外貨定期預金を大々的なキャンペーンで売っていますが、はっきり言えば証券会社の外貨MMFやソニー銀行のような安い為替手数料でない限りあまりお勧めはできなかったりします
それはそれとして、個人的にはユーロの投資はそれほど安全ではないのではないか、と思っています。昨日今日始まった話ではないですが、ユーロの東方拡大は、これまでの加盟国経済にはプラスにはならないでしょうし、トルコの加盟という話になるとどうしようもなくなるんじゃないかなと思ったりします。EUと単純に言っても、そう一枚岩ではないところがアレでして、例えば経済的に立ち遅れたアイルランドに対して膨大な補助金を与える一方で、財政建て直しを迫られたイタリアやフランス、スペインなんかは支出削減でえらい目にあった、なんてのもあります。また、最近の話なんですが、EU理事会議長の上位に、大統領制を敷くという提案がドツボにはまっている状態で、現在の議長のジスカール・デスタン氏(元フランス大統領)あたりが積極的なのですが、新旧加盟国の間の対立、というのも懸念材料だったりします
そういう観念的な問題は別としても、EU経済はある意味で踊り場に来ているといえます。通貨統合によって、一見生産コストの安い中欧や東ドイツの安い労働力、そして北欧諸国やアイルランドなどの競争力のある安い製品によって全体としては活況のように見えますが、EU経済の大黒柱であったはずのドイツ経済が墜落寸前なところや、中欧経済がバブルな雰囲気であること、フランスの失業率が相変わらず高止まりしていることなど、いくつかの深刻な懸念材料が存在します。
ドイツ経済は、銀行などの間接金融への依存率が高いことや、銀行と企業の株式持合い構造、労働市場における流動性の低さや、経済に対する様々な規制など、日本が直面している問題に極めて似ているといわれます。ただし、ドイツの場合には不良債権問題が存在しないのが異なりますが、同じように金融問題を抱えるドイツは、実は欧州中央銀行のシステムを構築した立役者であるという点で、コピーリスクを負っているところが問題であるといえます
もう一つ、これはドイツの問題にも共通することですが、西側にしても東側にしても、経済上の規制がまだまだ多く、これまでのような成長性を維持できるのか疑問に思えるところです。実は、僕自身が懸念しているのはこちらのほうで、高止まりしているユーロが輸出に重大な影響を与え地域経済が一気に冷え込む危険性を抱えていると思います
投資対象としてですが、短期資金の組み入れ比率の高い外貨MMFは高金利であることからお勧めです。ただし、長期国債や社債の組み入れ比率の高い外債投資信託などは、為替ヘッジを行っているものに限定すべきではないかと思います。ですから、あの分厚い目論見書をよく読んで、ユーロ組み入れ比率が過剰に高くないかチェックすべきだと思います
・ポンド・スイスフラン
ユーロに参加しなかったイギリスですが、ポンドの問題点はずばり物価高と不動産価格の急騰です。特にロンドンを中心とする都市圏の物価高と不動産価格の上昇は、少し前のニューヨークの状況に近いといえます。それでもモノや資金の流れはユーロ経済圏とリンクしているわけですから、ユーロ経済の悪影響をモロにかぶってしまうという問題点もあります
それでもポンドとスイスフランは、限定的ながらユーロのリスクをヘッジする有力な選択肢であると言えるでしょう。しかし、ユーロ失速の影響を考慮すると、中短期投資を中心に考えたほうがいいかもしれません。
・AUD、NZD
この二つの通貨は、マイナーながらもそれなりに人気を誇ってきました。決して効率的とはいえませんが、理想的な小さな政府ですし、歴史的にはヨーロッパ的な国家でも、経済の面ではこのところ急速にアメリカ的な政策を取っています。それでも、この地域が注目されないのは単にこれといった産業がないことで、鉱石やエネルギー、農業などの第一次産業に極度に依存しています。製造業といっても、単に補助金漬けの輸入代替的な産業部門がほとんどで、自動車などは補助金や中東やアフリカなどへの輸出が好調のようですが、第三次産業に到ってはぱっとするどころかたいしたことはありません
しかし、政治的には旧宗主国であるイギリスと、経済的にはアメリカの影響が強いとはいえ、貿易圏としては日本と極めて近い関係にありますしその重要性は高まりつつあります。また、経済に与える影響度では、ASEAN諸国や中国の存在も無視できなくなっており、ナショナリズム的な国民党政権下にあるオーストラリアでも、対外開放の機運が高まっているといえます
東チモールの独立に対する積極的な関与に見られるように、これまで極度に孤立的な政策をとっていた外交も、天然資源開発や国内の産業振興を動機として積極的に関与するようになってきています。政府の財政状態はそれほど悪くはなく、金利面で有利なことから通貨的にはヘッジ先として支持されています
ネックになるのは、やはり経済規模の小ささでしょう。オーストラリアの国家予算はわずか円換算で8兆円程度で、ドルやユーロからの逃避資金が流れ込めば、あっという間に通貨レートが乱高下してしまうところです。昨年も、円とのレートで10%を越える乱高下がありましたが、ひたすら長期投資を目指せば、年20%のリターンも夢ではありません。
・総論
どの通貨を選ぶにしても、短期的な売買による為替損益を狙うのはあまり関心できません。株や先物のように、24時間ディスプレイの前に張り付いてニュースを読みながらディールする訳にはいきませんから、多少の通貨変動があっても、株のように損切りを安易に行っても遺失利益や新しい投資チャンスなんてのはそうあったものではありません。最近では外貨でも金利低下が顕著になっていますが、かといって円金利と比べれば圧倒的に有利であることには変わりありません。投資の基本ですが、生活資金など緊急のお金ではなく余剰資金を気長に投資するべきでしょう
また、銀行、特に大手金融グループの販売する外貨建商品は避けたほうがよいでしょう。銀行国有化が取り沙汰されている今、預金保険が利かず、手数料の面でも不利な銀行の商品は買った段階で損をしているようなものです。やはり、証券会社の販売する投資信託をよく吟味して、自分に合った商品を選ぶべきです
投資信託の問題点は、組み入れ資産にかなりの差があるところです。一見高配当な商品に見えても、かなり格付けの低い債券が組み入れられていたり、株式や転換社債との複合商品だったりします。こういった商品の優劣は、大手投資銀行の発表するベンチマークや、格付けを参項にして見るのもいいと思います
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