von_yosukeyanの日記: 民事訴訟法改正案要綱
日経の記事によると、本日開催された法務大臣の私的諮問機関である法制審議会民事・人事訴訟法部会において、民事訴訟法改正案要綱が決定された。法務省のWebサイトには議事録や関連資料はUPされていないが、ここ数年、法曹関係者を悩ませている「民事訴訟の迅速化」をより一層進める内容のようで、かねてから日記とかコメントでブツブツ言っているように、個人的にはあまり関心しない話だ。
スラド的には関心が高いであろう無体財産権(知的財産権)訴訟では、特許権、実用案件、コンピュータープログラムの著作権の控訴審を東京高裁に集中して審議されることが盛り込まれた。これについては、個人的に思うところがある。
かつて、行政訴訟は一般の裁判所とは別に、行政裁判所という専門裁判所で審議されていた。現在では廃止された法律なので、行政法の教科書に部分的に掲載されている条文や、ジュリスト別冊行政判例百選の資料編に全文が掲載されているのみだが(確認はしていないが、もしかすると中野文庫にも掲載されているかもしれない)、この戦前の行政裁判制度にはいくつかの欠陥があった。行政裁判所は、たった1箇所、それも東京にしか設置されず(第一条)、しかも裁判官は高等行政官経験者(今で言うキャリア官僚)でなければならなかった
これは、情報公開法制定時にも高等裁判所所在地の地方裁判所でないと第一審が提起できないのと同じような問題だが、民事訴訟手続の迅速化の名の下において、知的財産権訴訟が事実上東京でしか審議できなくなってしまう。ひいては、これは裁判を受ける権利を著しく制限するものになると言えるし、裁判官の不足をもって正当化することはできない問題であると思う
この他に、医療過誤訴訟などで計画審議の導入が盛り込まれているが、これにも問題がある。弁護士の人に聞いた話だと、大阪地裁で昨年提起された医療過誤訴訟の数は、前年比で二倍近い数だという。「弁護士が金儲けのために訴訟をおこしまくっている」なんて司法統計を無視した意見もあるが、それ以前に医療訴訟の発生件数の急増(その弁護士は「医者が無能になってきたのが原因ではないか」と言っていたがあまり根拠はない)や専門問題に明るい裁判官の数が足りないのが現状のようだ
繰り返すが、民事訴訟の長期化は制度的や専門知識をもった裁判官の不足ではない。それ以前に、圧倒的に裁判官が足りないのであって、その問題の背景には司法予算の恒常的な不足がある。司法予算の不足にしてみたところで、昨今の財政状況を反映したものですらなく、戦後、いや戦前から続く政治や財政当局による司法軽視が現在のような問題を引き起こしていると断言できる
民事訴訟法改正案要綱 More ログイン