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von_yosukeyanの日記: ナローバンク 6

日記 by von_yosukeyan

昨日の日経「経済教室」に、カルフォルニア大学サンディエゴ校の星岳雄教授による『国営・ナローバンク化の道』という論文が載っていた

一々引用していてもアレなので、要旨を書いてみると

・郵貯を民営化しても、銀行過剰供給(オーバーバンク化)を加速するだけ
・預金保険は銀行経営にとって重荷になっているし、預金者にとってもモラルハザードによる被害を与える可能性がある
・決済性預金を導入してまで預金保険を維持すべきだろうか?
・郵貯をナローバンク化して、預金保険を廃止すれば決済性預金口座を新設する必要はない。また、その際の郵貯の資金運用は国債に限定し、財投債の購入には制限をかけるべき
・仮に郵貯をナローバンク化したとして、銀行から郵貯へ資金流出が発生すると考えられるが、その際に銀行から放出された国債を郵貯が購入するので国債の大幅下落のリスクは回避される

ナローバンクというのは、狭義の銀行のことで基本的に決済機能を提供し、融資などの信用創造機能は基本的には供給しない銀行のことだ。

以前、全銀協の郵貯民営化に対する提案について触れたことがあるが、全銀協の見解は、1)郵貯の分割民営化ならびに銀行免許の取得(即ち規制に守られた公社から金融庁の統制を受ける銀行業への転換)か、2)段階的に廃止のいずれかを選択すべきと述べている。これには問題がある

まず、1)の分割民営化の問題だが、どこをどうやったらこんな頭の悪い政策提言ができるのか理解できない。おそらく、国鉄民営化を参項にしたのだと思うのだが、日本型分割(営業地域ごとに分割)にしてもイギリス型分割(上下分割式)にしても、意味がない。全銀協が提案しているのは、営業地域ごとに分割する方式だが、この状態で銀行業免許を取得すればスーパーリージョナルバンクが誕生することになり、既存の地方銀行との激しい競争が発生することになる。もちろん、競争は喜ばしいことであるが、オーバーバンク状態にある地域金融機関の間で破綻が続出するのは目に見えており、全く現実的ではない

2)の段階的廃止だが、選択肢としては最良であるが決済機能として重要な役割を果たしている郵貯をいきなり廃止するのは難しい。しかも、現実的に廃止議論になれば政治的な抵抗がこれを阻むだろうから、正面突破的な廃止論は現状維持に繋がりかねない。

星論文の主張する郵貯の国営ナローバンク化政策は、これらの問題を一挙に解決する。まず、決済機能しか提供しないナローバンクは、決済システムとして不完全な上に経営資源としては非効率な銀行の決済業務を郵貯に肩代わりさせることができる。仮に、金融システムに深刻な流動性危機が発生した場合にも、郵貯が存在する限り決済システムは正常に動いているだろうから、新たに銀行にコスト負担を求める決済性預金の創設の必要性はなくなるし、普通預金では完全に逆ざや状態にある預金保険費の負担もなくなる

二番目に、そもそも小泉政権が郵貯の民営化を推し進める動機となっている財政投融資の拡大を、郵貯の資金運用を国債などに規制してしまえば、社会的コストのかかる郵貯民営化ないしは廃止の必要性がなくなる。この点では、郵貯廃止に抵抗するであろう勢力にも妥協を求めやすくなるし(というより、彼らにとっては失うものは何もない)、恒久的な保護が加えられるであろう郵貯は、預金者保護の観点から言っても妥当であると言える

問題点を挙げるとすれば、次の三つだ

第一に、郵貯のナローバンク化が決定されたとき、長期的には国債価格が中立になるだろうが、はやり大幅な価格暴落という現象が発生しうる。日銀による国債買い上げや、破綻懸念のある銀行に対して日銀特融などの対処が必要になるだろう

第二に、国営となればコストの問題がはやり発生することだ。大規模な追加的財政負担は発生しないが、非効率な点も多い郵貯の運用コスト増大が懸念される。英国のロイヤルメールのように、民間業者への郵貯業務の外部委託などが必要であろう

第三に、全銀協が郵貯廃止の論拠としている郵貯への金融資産の偏りである。現在、郵貯に対する預入資産の上限は1000万円だが、民業圧迫の可能性を廃するために、上限金額の引き下げが必要であろう。

第四に、仮に郵貯の資金運用を国債に限定するとしても、巨額の国債ポジションを、同じ国営企業である郵貯が保有するのは、国債価格の決定をいびつな構造にする危険性がある点である。ぶっちゃけ、ナローバンク化するならば預入資産に対して利子を付与しない完全な形のナローバンク化すべきであろう

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • >ナローバンク化するならば預入資産に対して利子を付与しない完全な形のナローバンク化すべきであろう

    昔郵貯の特徴として
    ・利息が複利計算
    ・通常預金の金利は普通預金よりも(1%位)高い
    という事が強調されていた記憶があります。
    現在は跡形もないですが。

    利子を付加しないのは通常預金に限定した話でしょうか。
    高齢者向けの商品をどう取り扱うかが問題になるような気がしますので。

    #全銀協は自分たちに都合のよい提案しか出さない印象があるので嫌いです。
    • 付利しない、というのは当座や普通のような決済性預金のつもりで、定期・定額預金のような運用性預金のつもりはないです

      ただし、運用性資金を国営銀行で運用する意義はあるのか、といわれてもはっきり言ってないわけで、決済システムの維持という目的ならば運用性資金のポジションは払戻準備金くらいで、銀行ほど必要じゃないんじゃないかと思ったります

      そもそも、郵貯は国民の少額貯蓄手段の確保が現在でも目標としてあるのならば現制度を維持しても構わないのだと思いますが、現在のように貯蓄手段が多様化している状況では、わざわざ国費を投入してまで郵貯で多額の運用性預金を保有する意味はないし、第一運用先がないと思うんですが
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  • by koufuu (6853) on 2003年01月28日 10時54分 (#245092) ホームページ 日記
    ここのところニュースで見かけない(?)ので、すっかり忘れていましたが、ナローバンクといえば、IYバンク [iy-bank.co.jp]を思い出したんですが、最近、どうなってるのやら。
    --
    written by こうふう
    • IYバンクは設立時に、当初ATM管理会社だけ設立する予定だったんですが、銀行法施行令上ATMの管理業務は銀行が行なわなければならず、うまみがないので銀行免許を取得したという経緯があります

      例えば、東京三菱や三井住友が積極的に関わっているE-NETの場合だと、ATMの運用はE-NETが行なっていても、管理銀行はバラバラだったりするんですが(設置してあるATMに銘盤みたいな感じの紙にATM管理銀行と管理支店が書いてあったり。実際の管理業務は運送業者とか警備保障会社が請け負ってますが)

      で、この際にイトーヨーカドーと東京三菱の間で深刻な対立があったみたいで、イトーヨーカドーが旧三和銀行や三井住友の援助で設立されたのがIYバンクだったりします。IYバンクの勘定系パッケージは三和のもので日立製メインフレームで走ってますし(SIと運用代行は野村総合研究所)、なぜかIYバンクのディスクロジャーはIYバンクの安斎社長と、SMBCの西川善文君が対談してる資料とかが掲載されてたり(今は見当たらないけど)、ATMメーカーとしては後発なNEC製の独自のコンセプトのATMを大量に採用したりと、まぁいろいろアレだったみたいです

      で、その反動というかナニなんですが、IYバンクは現在も直接接続を除いてBANCSと全銀ネットにしか接続しておらず、MICS経由で地銀のカードが提携していないと直接使えないという問題があります。あと、CAFISには接続してるけどデビットカードは使えないとか、設立直後にインターネットバンキングの開始時期が非常に遅れたりとか

      東京三菱との提携は、昨年末にBANCS経由での接続がやっと開始されて、今月だか来月だかから直接接続(ほぼ24時間接続)に移行するみたいですが、地方銀行との提携が進んでいくのかどうかちょっと疑問に思ったりします

      特に、IYバンクは基本的には親会社のイトーヨーカドーとセブンイレブンの店舗などに設置されてるATMからの手数料収益を目的とした銀行ですが、イトーヨーカドーにしてもセブンイレブンにしても国内最大といいつつ、主に都市圏を中心に展開しているために、ATM自体の展開には限度があります。仮にすべてのIYグループ店舗にATMを設置したとしても、人口カバー率はそれほど高くないのではないかと思います

      特に、都市部ではSMBC系の@bank、BTMが中心となって結成したE-NET、同じようなコンビニATMコンセプトのLANSと、コンビニATM主要顧客層はほとんどカバーしているのではないかと思います。一方で、経費的に見ると営業経費で125億もかかっているのに対して、主要な収入源である役務収入が16億円しかありません。内訳をみてみても、125億の営業経費のうち、おそらく100億近くがシステム経費だとかATM設置にかかる固定費だと思います

      というわけで、収益を何とかしないとあかんわけですが、顧客を増やすといっても預金取引顧客のベースを増やすことよりも、提携行を増やしたり提携行顧客の利用が増えないと直接的には収益に結びつかないでしょうし、結構困った状況にあるんじゃないかな、と思ったりします

      それはそれとして、以前タクシー運転手だとかファーストフード、風俗関係のお仕事などで、夜間金庫の利用を制限する動きが強まっているのにあわせて、IYATMで夜間銀行的な役割を代行するサービスみたいなのをはじめるとか何とかって話があったと思ったんですが、アレってどうなったんでしょうね? 一応ATMには小銭ユニットが装着されているみたいですけど、現時点では使えないようになってます。アレを使って、小規模小売業者の売上金預け入れサービスみたいなのをやるとしても、ちょっと難しいんじゃないかと思ったりしてたんですが・・・。

      銀行法施行令上は、今年だか来年だかに黒字化しないとヤバイと思うんですが、どうなることやら・・・。
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      • 記憶では、IYバンクがナローバンクとなるという話が出た頃から、ナローバンクは教科書的というか理論上では考えられるけど、実際にナローバンクを営利企業として設立したところで採算に見合うのかどうかは疑問だったような。

        やっぱ、ナローバンクでは収益面では自由度が低くて難しいということなんでしょうか?

        で、売上金預入サービスは、どうなんでしょう?ほんとにやるんですかね?手数料収入どれぐらい見込んでいるのやら…。まぁ、インフラとして設置してしまったATMの固定費を回収するためには、打てる手は打とうという話かもしれませんが。
        --
        written by こうふう
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        • >やっぱ、ナローバンクでは収益面では自由度が低くて難しいということなんでしょうか?

          確かに、ナローバンクは収益性が低くて、既存の銀行でもリテールサービスは本音ではやめたいと思っている分野でしょう。例えば、大手銀行の中では顧客をスコアリングして収益に寄与する顧客を囲い込む銀行(例えばみずほなど)がありますし、どこの銀行でもやってますがプライベートバンク的な資産管理サービスを行うところ、それにリテールバンキングを縮小するところ(例えば東京三菱など)など一応そういう動きはあります

          しかし、だからといって商品性が豊富だから儲かるという訳ではありません。例えば、信託銀行の商品は普通銀行や長銀に比べても豊富な商品がありますが決して収益性が高いという訳ではありませんし、事実ワンストップバンクを指向して合併した4大金融グループにしてもスケールがでかいという以外に何の取得もありません

          IYバンクが現在のような袋小路に陥ってしまったのは、コピーリスクと事業計画の甘さです。

          コンビニに金融サービスを持ち込むという着眼点はコンビニでの料金収納サービスの延長から考えれば、一見説得力があるように見えて実際には致命的な問題を抱えています。それは第一に、コンビニ収納サービスは基本的には銀行業務ではないために金融監督当局による規制を受けないところにあります。第二に、バックエンドシステムはともかく店舗システムでは既存のPOS端末を活用できるために固定費が少なくて済むところです。

          ATMというのは銀行法施行令によって銀行業免許を取得した法人にしか運用が認められていないもの(実際には例外がある)ですし、仮にIYバンクのように銀行業免許を取得した新規参入銀行の場合には、親会社の経営状態がどうあれ早期の黒字化が求められます。その場合であれば、新規参入よりも圧倒的に既存の銀行と提携した役務提供のみであったほうが有利です。また、コンビニのマルチメディア端末なんかが典型的な例だと思うのですが、顧客にサービスやメリットが認知されるのに時間がかかるので、やはり銀行業免許取得は不利になります。欧米の場合でも、CirrusとかPLUSにしても銀行業免許を取得した法人が提供している訳ではないですし、反対に銀行業免許を取得しているからといってメリットがある訳ではないです(独自のサービスを提供するなら別)

          IYバンクの場合には、銀行業免許を取得したことによって地方銀行の反発を食らってしまったという側面もあります。BANCSにしか加盟しておらず、MICSに加盟できなかったのは、りそなやUFJのようにリージョナル・バンクを志向する都市銀行による地方への進出です。その布石に成りえるのが、コンビニを拠点とする新しいリテール層の獲得で、別の話でも現在日銀と財務省が推進しているマルチペイメント [jammo.org]なんかも非常に反発を食らっていたりします。そういう訳で、比較的地方銀行の受けがいいE-NETでさえ当初は(現在でも)かなり反発がある訳で、すでにE-NETのサービスが開始されている地方によっても、運用主体となる地銀の方針によってサービスにばらつきがあったりするのはそういうところにあります

          どちらにしても、そう言った地方銀行の警戒を解消する術を持たず安易に参入したIYバンクに事業計画への甘さがあったことは確かですが、もう一つのコピーリスクでも問題がありました

          元々、コンビニATMという考え方は特にアメリカでは一般的なインストアブランチ(スーパーマーケットのテナントとして銀行支店やATMの設置)のコンビニ版で、日本では旧さくら銀行が開始したものだと記憶しています。現在はSMBCの@bankになっていますが、コンビニチェーンでは後発ながらも首都圏など都市部に集中的に出店しているam/pmをパートナーに選んだあたりが、非常に面白い取り組みであると思います

          なぜならば
          a)am/pmは都市部に集中しており、ちょうどSMBCの営業地域と重複する
          b)全国をカバーするわけではないから、認知度の向上が早く、設置数も少なくて済む
          といったところでしょう

          しかし、その後99年に規制緩和の影響で郵貯ATMの対外開放が開始され、イトーヨーカドーグループによるコンビニATM構想が発表される頃には(当初は銀行業免許取得は意図していなかった)、E-NETやLANSといった似たようなコンセプトを示す銀行が現れ、旧富士銀行のようにステーションATMを自前で設置する動きもありました。この時点で、現在のような飽和状態を想定しているべきであったのですが、IYはこれらとの差別化を図るために銀行業免許を取得する道を選んでしまいました

          大分前に読んだレポートなので、どこのものか忘れましたが、ATM利用頻度が最も高いセグメントは20代と30代くらいだそうです。丁度、コンビニ利用者層とかぶる年齢域ですが、年齢が上がるにつれて財布の中の平均的な現
          親コメント
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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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