von_yosukeyanの日記: 金融工学への"誤解"
この辺のスレッドから
まぁ煽りなのでアレなんだが、金融工学ってのは「市場で一儲け」するための学問ではなくリスク管理を定量化するための学問である。狭義にはファイナンス理論を指す場合もあるが、広義にはファイナンス理論にくわえ、会計学や法学も含んだ広い概念であり、金融工学という言葉をもってファイナンス論と解するのは誤りである
#ちなみに、リスク管理という言葉自体も、ファイナンス論や金融工学における定義と、政治学上の危機管理とは異なる概念であることに注意すべきだ。かなり混同している人もいるので。後者については、古典だが『多極化時代の戦略』を参照のこと
金融工学のリスク管理へのアプローチは、先に述べたように「市場で一儲けする」ものではない。実際、かつて投資銀行のソロモン・ブラザーズ(現ソロモン・スミス・バーニ)は、オプション市場や債券市場において、ファイナンス理論を応用した自己裁定取引(アービトラージ)で恐れられたが、彼らがソロモンをスピンアウトして設立したヘッジファンドLTCMが98年の金融危機で破綻したように、理論的な問題点がかなりある。LTCM破綻の原因となった98年中ごろの一連のデリバティブ取引が、本来彼らが"信仰"しているランダム・ウォーク理論の応用形態として適性なものであったかについては議論の余地があることは確かだが、それを割り引いて考えたとしても、そもそも彼らがなぜ安全な債券取引から株式や通貨オプション取引を行うまで追い詰められたかについては、AC氏が実に的確な洞察を行っているとおりである
さて、話はそれたが一般的な金融工学の応用範囲は、金融工学を応用したリスク管理である。例えば、あなたが多国籍企業の会計担当者だとしよう。毎月、海外の子会社からの売上を本国に還元するために、500万ドルづつ送金する必要があるとしよう。1月の為替は1ドル100円だったので、本国で5億円の収益を計上することが出来たが、2月の為替は1ドル80円だったので4億円しか計上できなかった。しかし、3月の為替は120円で6億円の利益を計上できた
このように、為替(まぁ株式や債券でも同じ事だが>年金、銀行)の変動が不確実であると、売上に関係なく企業収益を不安定にさせるリスクがある。伝統的に、江戸時代から未来の未確定な価格が存在するときに、先物と呼ばれる手法でこれをヘッジすることができた。
先物とは、ある未来の期日にある数量のモノを一定の価格で購入する契約のことである。例えば、先の例で言うと、1ドル100円で1ヵ月後の為替先物を予約すれば、1ヵ月後に1ドル80円だろうと、150円になろうと500万ドルを5億円に両替することができる。ただし、先物は損をする場合、すなわち1ドル150円になった場合でも、契約であるから5億円しか支払われないことになる
先物の場合は、こういった制約があるが、未来のある期日にある数量のものを一定の価格で購入または売却する権利のことをオプションと呼ぶ。オプションは、買いまたは売りの権利を売買することであるから、損をする場合なら別に行使しなくてもよい。一種の保険のようなものだ
オプションは、それ自体は現物(例えばこの場合には通貨)を介さない取引であるから、金融派生商品(デリバティブ)と呼ばれる。保険と異なるのは、買う権利(コールオプション)と同等の売る権利(プットオプション)が市場で売買され、流動性が高いのでデリバティブに払うプレミアム(保険料みたいなもの)が安く押さえられる。為替だけでなく、株式、債券などにもデリバティブの仕組みがあれば、様々なリスク(例えば今年の夏が猛暑になるか冷夏になるか・・・という天候デリバティブ)を回避して、収益を安定するのに金融工学は貢献してきた
しかし、デリバティブが市場でうまく取引されるには、価格決定の仕組みが確立していなければならない。デリバティブ自体は、現物取引ではなく、現物価格から派生する金融商品であるので、現物価格から適正な価格決定理論がなければ市場は成立しない。そこで生まれたのが、ブラックショールズ方程式である
ブラックショールズにせよ、何にせよオプションの価格決定原理が確立していれば、現物価格とオプション価格が適正価格から著しく乖離していれば収益機会が生まれる。この収益機会をとらえて巨額の資金を投じるのが投資銀行の自己裁定取引部門やヘッジファンドなどで、その代表的な例がLTCMだった。
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