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von_yosukeyanの日記: シルクワーム対艦巡航ミサイル 1

日記 by von_yosukeyan

さて、本日北朝鮮が発射した(注記:正確には本日当局によって発射が確認された)シルクワームという聞きなれないミサイルだが、これは基本的に沿岸警備用の地対艦巡航ミサイルのことである

シルクワームという名称は、DoDが1970年代に暫定的に与えた名称で、正確にはSSC-3 StyxというNATOコードが充てられている。開発国はソビエトで、正式名称としてはP-15 Termitという名称が与えられている

SSC-3は、元々は艦対艦巡航ミサイルSSN-2 Styxから発展したミサイルである。こちらのほうが聞き覚えのある人が多いと思うが、Styxは大ベストセラーとなったオサ級ミサイル艇シリーズの主力兵器として大量に実装された兵器で、A型では45km、最終発展形態であるD型では100kmの射程距離を誇る(この他にシーカーを改良したE型も存在する)

冷戦期、オサ・シリーズはStyxと共に友好国に大量供与されたために、第三諸国の海上防衛兵器としては極めてメジャーな兵器の一つである。推進システムは基本的にジェットエンジンで、発射時には補助動力として固体ロケットエンジンを使用するオーソドックスなものである。オサ級が大成功を収めた理由としては、ソビエトや中国のような長い海岸線を有する陸上国家にとって、海軍力とは沿岸警備程度で足りるという事情がある。これは、中東諸国や朝鮮半島にも共通することで、日本やアメリカ、イギリスのように海上戦力がミリタリーパワーの中核を形成しているような国では、オサ級のような比較的小型ながらも打撃力のあるミサイル艇を大量建造するという実例はない

もっとも、ソビエトは本質的には1970年代から本格的な近代海軍の建設を目指しており、オサ級の後継には暫定的にマトカ級を建造したもののすぐにより大型なミサイルコルベット艦の建造に入ったために、オサ級の直接的な後継艦は存在しないと言っても過言ではない。アメリカでこの系統の任務についているのは、ミサイルコルベット艦よりもさらに大型なオリバー・ハザード・ペリー級フリゲート艦で、主力打撃戦力はハープーン対艦巡航ミサイルである。その意味で、ソビエトのタランチュラ(タランタル)級ミサイルコルベット艦は、打撃戦力としてSSN-22サンバーンを搭載する極めて強力なもので、仮にこれを中国が配備した場合には深刻な脅威となると思われる

さて、大成功を収めたオサ級は第三諸国に向けて大量に供与されたが、関係悪化前の中国に対しても組み立てキットの形でオサ級が売却されている。その後、中国は独自にオサ級を100隻前後コピーして配備しているが、その際にもSSN-2 Styxもコピーしている。

このコピーされたStyxの陸上配備版をシルクワームと呼び、本家のSSC-3 Styxとは区別されているが性能的には大差がないと思われる。北朝鮮には、ソビエトから供与されたSSN-2と、中国から輸入したコピー版SSN-2、そしてシルクワームが存在するとされている。

Styxにせよシルクワームにせよ、極めて大量のバージョンが存在するために、どらくらいの脅威があるのか定かではない。誘導方式は初期には、地上ないしは艦船に搭載されたレーダーによる沿革誘導方式を採用しているが、慣性誘導方式もあり、D型以降ではIRシーカーも搭載されている。しかしながら、Styxはチャフ(アルミホイルが貼られた電波反射材)やフレア(マグネシウム材などを発火させる熱源)による妨害に弱く、実際に韓国軍との間で黄海上での交戦ではほとんど命中していない。

いずれにせよ、Styxは過去の兵器であり現実的な脅威はそれほど大きくないと見てよいだろう。むしろ、大統領就任式に合わせてわざわざ時代遅れのシステムの発射テストを行ったこと自体は微温的といえ、戦術兵器の通常発射実験と考えればメッセージ性は薄いと思われる。

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