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von_yosukeyanの日記: 中国の構造改革と人民元レート

日記 by von_yosukeyan

タイで開かれたAPEC閣僚級協議で、名指しは避けたものの人民元の切り上げ問題が宣言に盛り込まれた。米国のスノー財務長官と、日本の塩川財務大臣の強い意向で盛り込まれた形になったが、同時に中国に配慮した形で「各国が適切な通貨制度を採用すべき」という趣旨も併記された

人民元の切り上げ問題は、どちらかというと日本やアメリカの選挙の動向が非常に強く影響していて、実際のところ必要なのかという議論に関してはちょっと別の問題をはらんでいるようにも思える

ここで、人民元の切り上げ問題に関して少し整理しておきたい。

人民元は基本的にドルや日本円、ユーロなどの変動通貨制を採用している通貨とは異なり、固定通貨制(ペッグ制)を取っている。固定通貨制と一口に言っても、通貨レートが固定されているのはドルに対してのみで、中国の中央銀行に相当する中国人民銀行の公表ベースで1ドルが8.27人民元に事実上固定されている。問題は、この固定が1997年ごろから固定されたままになっている点である。

#しつこいが、中国の中央銀行は中国銀行ではなく、中国人民銀行である。中国四大商業銀行の一つである中国銀行(Bank of China)とは別物であり、もちろん岡山市に本店を置く有力地銀の一つ中国銀行とも全然関係ない。同様にドイツの中央銀行もドイツ銀行ではないし、アメリカの中央銀行もバンク・オブ・アメリカじゃない。これを知らない金融関係者もいる。どうにかしろよ>STB

といっても、ペッグ制をとっている国というのは人民元以外にもたくさんある。例えば香港ドルや、台湾ドル、マレーシアリンギ(リンギット)などはドルにペッグしているし、イギリス連邦諸国の中にはポンドに、アフリカ共同体通貨AUCはユーロにペッグしている。むしろ、大多数の通貨は完全な変動相場制を採用しているわけではなく、一定の変動幅を許容する変動幅制度など、何らかの規制が加えられているといえる

しかし、中国の場合には通貨レートが現在の水準となったのは94年ごろ、およそ10年間も事実上固定されている。この間、中国の経済は飛躍的に拡大し、世界の工場とまで呼ばれるようになった。つまり、人民元の価値は実態としては上昇しているが、レートが固定されているために、中国企業は安いレートで輸出を行うことができるという点だ

特に、この問題は日本よりもアメリカで強く認識されている。鉄鋼や繊維などの製品で、中国は固定レートによる恩恵を強く受けており、それがさらに技術力をつけつつある半導体、コンピューター、家電製品などでも拡大しているという批判だ。

これに加えて日本側の問題もある。円とドルの通過レートはここ2年ほどの間で、ほぼ115円から125円の間で推移するボックス相場となっており、円高に振れた場合にはドルに固定されている中国製品が高い利益を得ることができるからだ。

しかし、同時に人民元が固定化されていることのメリットもある。それは、固定化によって対ドルベースでの対中輸出が安定している点である。もう一つは、中国の産業自体が通貨レートの固定化によって価格競争力や効率化が達成されていない点である。そして、その反対として対中輸出は、ドルベースでは常に安定して行えるという点である。とくに、中国製品と競合状態にある日本企業の中には、合理化努力が功を奏している場合も多い。長期的には競争力維持に繋がる。また、輸出が拡大している工作機械や建設機械などでは、価格の安い中国製よりも、品質が安定しておりコスト回収が容易な日本製が高く評価されていたりする

そう言うわけで、人民元レートを早期に変動制に移行する必要というのはあまりないのだ。実際、日米が求めているのは、レートの適正化であって、それがペッグレートの切り上げなのか、変動幅制への移行なのか、それとも変動制なのかというのは明示していない。そこまで行えば中国側の反発も大きい

切り上げによって、中国は短期的には輸出に打撃を受けることは間違いない。しかし、中国の競争力は長期的に見れば産業の合理化を通じて増すことは確実だ。だが、中国の産業構造は未だに国営企業の処理問題、準大手商業銀行(省政府と深い関係にある)の不良債権問題、各種の規制や法制度の未整備など様々な問題をはらんでいる。

ここで外圧を加えることも容易だが、人民元レートの問題は新政権の下での中国の経済改革と平行して行われなければ、中国経済全体が混乱する可能性がある。そして、それは回復基調に入ったばかりの世界経済に与える影響も大きなものであり、中国の輸出に晒されながらも、同時に対中輸出の拡大によって回復基調にあるわが国の経済にも影響がある、という点を忘れてはならないと思う

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私は悩みをリストアップし始めたが、そのあまりの長さにいやけがさし、何も考えないことにした。-- Robert C. Pike

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