von_yosukeyanの日記: 組込システムとライセンス
坂村発言が、よく誤解または歪曲されて理解される背景に、組込向けシステムにおける事情というのが理解されていない場合が往々にして存在する
例えば、携帯電話向けシステムでは最近日立のSH mobile(開発時にはSMAPと呼ばれていたので適切な略ではないが以下SMAPとする)のようなアプリケーション・プロセッサを搭載する事例が増えている。こういったアプリケーション・プロセッサを搭載する意義として以下のようなものがある
a)従来のブラウザ・フォンは、ベースバンドプロセッサの余剰能力を利用してブラウザを動作させていたが、ベースバンドプロセッサの余剰処理能力ではJavaの実行や、画像処理には不足する
b)従来のベースバンドプロセッサにITRONを利用したシステムでは、開発コストが増大する傾向にあり、LinuxやCEのようなOSを採用して開発コストと納期の短縮を実現したい
ハードウェア的にはSMAPなどを採用する傾向にあるが、ソフト的には組込向けのLinuxを採用するという事例が今後出てくる可能性は非常に高い(例えばNECが開発中の端末など)。しかし、ここで問題になるのは、リアルタイム性の確保と知的所有権の問題である
リアルタイム性の確保という観点から見ると、Montavistaなどは例外としても、TOPPERSやEmblixのように、ITRON上にLinux/Windowsのエミュレーション環境を装備したり、ITRON上でLinuxカーネルを動作させる方法。また、リアルタイム性が要求される部分はベースバンドチップ上のITRONで動作させ、それほどリアルタイム性が要求されないアプリケーションの処理にはアプリケーション・プロセッサ上のLinuxやWindowsで動作させるという方法が考えられる
もう一つの知的所有権の問題では、デバイスドライバやアプリケーションなどで、組込特有の知的所有権処理の問題が実装方法によってはネックとなる可能性がある。そこで、ITRONとLinux/CEを共存させることでリアルタイム性の確保と同時に知的所有権の問題を回避するという方法がありえる。
#坂村がRMS『フリーソフトウェアと自由な社会』に対する書評において「組み込みLinuxをITRONの上で動かしてGPLの制約を逃れる手法」と述べているのは、この後者の問題で、内容としては難点が多いが日経エレクトロニクス(NE)2003年6月23日号も似たような主張を行っている。
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さて、これとは別の話になるが、組込向けのシステム開発でもOSS的な開発手法を採用するという動きがある。しかし、これは必ずしもGPLをそのまま適用するという動きを指すものとは限らず、一部にはGPLに似たライセンスを提案/採用するという動きがある
これは一概にはいえないが、以下のような特徴がある
1)解釈上の問題点を明確にしたこと
契約の時期や成立要件などをGPLよりも明確に規定する傾向にある。また、日本語を正文とすることで紛争発生時に裁判所法74条問題を解決することもできる2)知的所有権の所有主体を企業ではなく、非営利団体に移譲すること
これは、様々な開発者(企業)が参加する場合に、仮に紛争が発生した場合に多数の開発者が紛争主体となる場合が想定される。そこで一旦、成果物を非営利団体に権利を移譲して一括して管理する方法がとられる。メリットとしてはそれ以外に、非営利団体に知的所有権侵害のチェック機能を持たせることで、紛争の未然の防止に役立てることができる3)ソースコードの一括管理
ただ、こういったGPLとは異なったライセンス形態は、第一にGPLの批判として登場したライセンス形態であること。第二に、知的所有権の所有主体が非営利団体かMicrosoft(MSFT)の違いがあるだけで、MSFTのShared Sourceの概念とほぼ同一であること。第三に、非営利団体のJASRAC化への懸念があることなど非難を受けやすい側面もある
しかしながら、こういったライセンス形態は基本的にはApache Software Licenseのようにオープンソースの枠組み範囲内での独自のライセンス形態を模索するもの多く、GPLではない、またはGPLに対して批判的であるからOSS全体とも対立する概念であるという理解は正当ではないと思う
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