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von_yosukeyanの日記: [判例]MRSA感染による敗血症と医療ミス

日記 by von_yosukeyan

H15.10. 7 東京地方裁判所 平成 9年(ワ)第19783号 民事第37法廷判決

■主文
1 被告は,原告Aに対し,9433万5054円及びこれに対する平成8年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告Aに対し,同原告が昭和大学病院を退去した日から同原告が死亡するまでの間,毎月末日限り,1日当たり1万5000円の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告Bに対し,385万3729円及びこれに対する平成8年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は,原告C,同D及び同E各自に対し,110万円及びこれに対する平成8年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は,これを10分し,その4を原告らの,その余を被告の負担とする。
7 この判決は,第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。

■判旨
・F担当医は,7月15日午前中には原告Aの感染の原因菌がMRSAであることを知り得たのであり,また,原告Aには,7月13日から7月15日午後7時ころにかけて,断続的に,高熱,CRP値の上昇,呼吸機能,肝機能及び腎機能の軽度の低下等,感染症を疑わせる症状が見られたのであるから,遅くとも7月15日午後7時ころには,それらの症状がMRSAによるものであり,直ちにMRSAに対する治療を開始しなければ,原告Aが重篤な結果に陥ることを認識し,その時点でこれを回避するための治療を開始すべき義務があったというべきである

・本件羊水の細菌培養検査の結果,検出されたMRSAに対してはバンコマイシン,ゲンタマイシンなどに薬剤感受性が認められていること,被告病院の患者から検出されたMRSAについて,平成7年4月25日から同年7月11日までの間に報告された15件の薬剤感受性結果を見ると,全件についてバンコマイシンに感受性があることが確認されている状況であったことなどの事実からすれば,本件において,MRSA感染症治療として被告病院が投与すべきであった抗生物質はバンコマイシンであったと認められる

・原告Aの状態は,MRSAを原因菌とするセプシスあるいはそれに引き続いて敗血症に陥っているにとどまっている段階であり,まだ敗血症性ショックには至っていなかったと認められるところ,上記(1)認定のとおり,敗血症に対するバンコマイシン有効率は74%から90%とされ,また,ショックに至らない重症敗血症に対する致死率は10%から20%にとどまるものとされていることにかんがみれば,本件において,被告病院が遅くとも7月15日午後7時ころの時点で,原告Aに対してバンコマイシンを投与していれば,原告AがARDSやDICを発症し,MOF状態となり,心停止により低酸素脳症に陥るという本件結果を回避することができた高度の蓋然性が認められるというべきである。

・上記3,4より,被告病院には,遅くとも7月15日午後7時ころからMRSA感染症治療として抗生剤バンコマイシンを原告Aに投与すべき義務があったにもかかわらずそれを怠った過失があり,その結果,原告Aに心停止という結果が生じたと認められるから,被告病院を経営する被告には,不法行為が成立するものと解される

■感想
本件は、帝王切開手術を受けた原告がMRSA感染に伴う敗血症によって心停止状態となり、重度の後遺症を負った昭和大学病院事件の第一審判決である

本件では、MRSA同定時期、治療としてのバンコマイシン投与の妥当性と治療開始時期が主な争点となった。同種のMRSA感染症による医療紛争に対するリーディングケースとなると思われる

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「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」、科学者「えっ」、プログラマ「えっ」

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