von_yosukeyanの日記: 宮台blog (2)
宮台blogの所論をもう一度見返してみると、強烈に違和感を感じるのは間接金融システムが新規創業を阻害しているという観点である
これは既に述べたように、間接金融システムに依存した国々の中でも新規創業が活発な国もある、という点だ。むしろ間接金融のシステム自体は英米を中心に活発であるというだけで、間接金融・直接金融が対立項になっているとは思えないのだ
もう一つ、新規創業がわが国では低調である理由が、金融システム自体に帰結できる問題か、という点である。確かに、わが国ではキャピタルに対して直接投資を行うスキームが貧弱で、ほとんどが信用力が一定程度ある大企業に対する投資がほとんどであるということは確かだ。そもそも、株式のようなリスクの高い投資手段が一般的ではないというのと同時に、BBB格以下の社債への投資といったミドルリスク投資も一般的ではないし、スタートアップ企業に対して直接投資を行うピンクシート市場(グリーシート市場)もまだまだ規模としては不十分である
しかし、宮台が述べるように「アイディアに対して融資を行わない」ということがそれほど特異なことなのだろうか? そもそも、資本金も営業網も存在しないスタートアップ段階で、事業の将来を適切に予測して融資するスキームなど、世界中を捜してもそのようなものはむしろ少ないのではないだろうか
元々、アメリカのベンチャー投資はシリコンバレーにおける半導体産業などを中心に行う投資ビジネスから始まった。AT&Tベル研究所でトランジスターを開発したノーベル物理学賞受賞者の一人、ウィルアム・ショックレーが起こしたベンチャー企業ショックレー研究所の研究員7人が集団で退職して作った半導体ベンチャー、フェアチャイルド・セミコンダクターは、大手航空・防衛・光学機器メーカーのフェアチャイルド・カメラ・アンド・インスツルメンツ社からリスクマネーを受けて設立された。以後、フェアチャイルド出身の技術者から、ナショナル・セミコンダクタ、インテル、LSIロジック、AMD、MIPSテクノロジーといった幾多の半導体企業が生まれた。
こういった半導体ベンチャーに対してスタートアップ資金を供給していた企業は、決してアイディアだけに資金を投じていたわけではない。技術者が主体となった企業に対して、資金だけでなく経営ノウハウや、販路をレクチャーするコンサルタント業務も一括して行う場合が多く、それがフェアチャイルドのような巨大多国籍企業であれ、投資銀行であれ、ベンチャー・キャピタルであれ同じことなのではないだろうか
それが、90年代後半のドットコムバブル期には、アイディアだけで資金を供給するというVCが現れた。確かに先物的なイメージがあるが、こういった現象は過去のバブル期にも存在してたし、それらの末路がどうなったのか、というのも簡単に想像がつくだろう
そういうわけで、VCや投資銀行がアイディアだけで資金を供給するというのは、普通に考えてありえない。創業数が少ない、というのは確かに金融システムの抱える問題点もあると言えるが、かといって金融システムだけに帰結できない問題であることも確かだ。言ってみれば、この10年間は第二次世界大戦後で最大のクレジット・クランチの時期でもあるが、この間でも新規創業は皆無ではない。し、過去を遡ってみても戦後生まれの企業はたくさんある
問題なのは、創業時に係る各種の法的手続の煩雑さや、投資家や創業者に対する教育の不足ではないだろうか。以前、商法改正に係る最低資本金規制の緩和に対する批判の中で、規制緩和を棚上げしたままで最低資本金規制を緩和することは無意味であるばかりでなく有害であると批判したが、創業者を支援するための体制もまた不足しているように思える
これは、公的な支援体制を充実しろ、と言っているわけではない。創業支援自体がビジネスになるわけだから、こういったビジネスが充実するべきだということである。例えば、個人的に創業できそうなビジネスモデルを(企画書込みで)持ってることは持っているが、その妥当性を客観的に評価したり、検討する機会というのは非常に少ない。わが国のベンチャー創業で、金融機関や商社出身者が重要な役割を果たしているのは、こういった企画段階での妥当性評価や資金調達スキームを理解している人間が、こういった会社の内部的な教育やキャリア形成で生まれている、ということができるからである
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