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von_yosukeyanの日記: 韓国はなぜ親北的な外交政策を堅持するのか

日記 by von_yosukeyan

韓国の政治を理解する上で重要なのは、韓国の支配体制である

韓国の政治制度は、アメリカの大統領制度をモデルとした強大な大統領権力に特徴を持つ。直接選挙によって選ばれる大統領が、首相を任命する(議会の承認が必要)ために、韓国の政治制度はよくアメリカ大統領制度の影響を強く受けたフランス第5共和制と比較がなされる

しかし、韓国の支配体制は基本的には保守基盤によって支持されているというよりも、むしろ軍、官僚、経済界が強く結びついたエスタブリッシュメントと、特定の出身地域の官僚による利益誘導的な政治構造によって構成されているといえる。80年代まで、韓国政治はこのエスタブリッシュメントと、民主化を要求する労働勢力との対立構造によってすべての説明が可能であった

#韓国の政治制度は、6度にわたる変更が行われている。現在の第6共和制は、87年に大統領に就任した盧泰愚大統領(旧軍勢力)から、金泳三、金大中を経て、現在の盧武鉉大統領に至る。大統領の任期は4年で再選はできない

しかし、1988年に韓国でオリンピックが開催され、 金泳三大統領が完全に民主的な手段によって選出される民主化時代を迎えると、政治の関心は経済問題に焦点が移るようになった。その傾向が高まったのが1997年から98年にかけて東アジア諸国を襲った通貨危機である。この通貨危機によって、エスタブリッシュメント構造を支えてた財閥が解体され、金融機関に膨大な公的資金が注入された後に、経営不振財閥の解体、外資への売却、政治主導による合併などを経た

金大中政権下に行われた経済改革は、90年代後半からの韓国の急激な経済成長の原動力となる一方で、若年層を中心とした失業率を増大させた。一方で、金泳三政権と金大中政権は財閥・軍・学閥・閨閥主義から何とか脱することができたものの、地域主義からは脱することが出来なかった。なぜならば、両者もまたエスタブリッシュメントと労働運動との対立構造時代からの政治家であるからである

金大中政権の与党である民主党は、エスタブリッシュメントから冷遇されてきた全羅道などの地域を地盤とする。これに対して、最大与党であるハンナラ党と自由民主連合の支持基盤は、従来のエスタブリッシュメントの輩出地域である忠清道や慶尚道を地盤とする。こういった地域対立の問題が、2000年の地方選挙の大きな争点となり、「落選運動」と称される一種の市民革命が発生した。02年の大統領選挙でも、地域主義的な金大中政権の出身党である民主党候補でありながら、地域主義を否定する弁護士出身の盧武鉉が大統領に当選した

こういった韓国国内の政治の変革と共に、韓国の対外政策を転換させるもう一つの転機となったのが旧円圏経済システムの復活である

韓国経済は、対米輸出を基本とし、生産財の大半を日本から輸入する加工貿易が伝統的な経済構造だった。しかし、98年の経済危機により、IMFによる厳しい国内経済構造の改革を経て、「米国主導の経済システムから東アジア地域に根ざした経済システム」の転換が意識されるようになった。これが、日本が提唱したアジア通貨基金構想(AMF構想)の失敗にも関わらず、東アジア地域の通貨スワップ制度や、アジア債券市場構想に日本と共に積極的に推進したことにも顕れている

一方で、韓国経済の回復は従来の対米輸出に偏重したものから、対中輸出・対日輸入を中心とした経済システムに変動した。対日輸出が、中国からの安価な製品に押され激減する一方で、日本からの直接投資や、中国の旺盛なハイテク製品需要に支えられ、韓国経済は復活を果たした。この旧円圏の復活は以下のように示せる

資本 日本>韓国 日本>中国
生産財 日本>韓国 日本>中国 韓国>中国
消費財 中国>日本 中国>韓国

こう言った経済構造が成立しうるのは、従来のイデオロギー的な冷戦構造から、地域の安定を前提とした経済システムであり、アメリカからの隷属関係と、日本や中国との歴史的・精神的な対立からの脱却を必要とするものだった。

こういった背景から、韓国は従来の冷戦構造の象徴である北朝鮮政策に関しては、従来の併合または合併方式による統合よりも、むしろ融和的に北朝鮮政権の存続を認めつつ、北朝鮮の崩壊による経済的・政治的な混乱を回避するべきである、という一定のコンセンサスが形成された

経済界の中にも、東西ドイツ統一によって経済的にも人口的にも優位だった西ドイツが、東ドイツの合併によって10年来の経済混乱を目の当たりとしたことが、南北統一に消極的にならざるを得なくなってきた。国土的にも人口的にも劣る韓国が、巨大な北朝鮮と統一したときの経済混乱は計り知れないもので、むしろ北の経済発展を助け、南北の水準が同一になったときにこそ、合併を行うべきであるという考え方が90年代以降形成された

民衆レベルでも、従来「悪の共産主義帝国」である北という意識から、同じ民族であり冷戦構造によって分断されただけ、という意識的な近さ、そして敵視政策を取ってきた保守エスタブリッシュメントへの反発から、金大中政権の太陽政策を支持してきた。盧武鉉政権も、この太陽政策を基本的には継承している

しかし、ここ数ヶ月で盧武鉉政権は危機に瀕している。国会内では、少数勢力である民主党が内部的に地域主義派閥と、大統領支持派に分裂している一方で、ここに来て前回大統領選挙における、SK財閥による不正献金疑惑が政治を混乱させている。一方で、SK疑惑を追及してきた最大与党、ハンナラ党でもSK財閥からの不正献金疑惑が浮上し、民主党・ハンナラ党から大統領支持派が集団離脱し、50名にも満たない新与党のウリ党を結成した

野党ハンナラ党は、保守野党勢力を結集して大統領不正献金疑惑を追及する構えで、先週独立検察官設置法を国会に通過させたが、大統領勢力は12月に国民の信認を問う国民投票を行う構えである。これに対して、大統領に対する世論の支持は低下しつつあるが、ハンナラ党などの野党勢力の支持も今ひとつである

対北朝鮮政策の基本であるKEDO支援と食糧支援が頓挫し、財閥による不正献金、北への不正送金事件によって南北の経済交流も失速しつつある。一方で、北が望むのは韓国が経済復興を果たしたのと同じように、日本との国交回復と経済支援である。90年代の国交回復交渉を経て、北は日本との直接対話への必要条件として、米国との関係改善の必要性を痛感し、核問題を通じてアメリカとの接近を試みている

しかし、アメリカの保守勢力(除:ネオコン)は、独裁的で非民主的、そして冒険主義的な北朝鮮政権の存続を認めることには消極的である一方で、北朝鮮が崩壊すること自体にも危機感を持っている。よって、北を崩壊しない程度に存続させることは、日中米の共通した利害であり、この中に韓国やロシアといった周辺国の思惑もある程度は一致していると言えるだろう

だが、この利害一致は各国の本質的な思惑や、国内情勢の変化によって微妙な温度差が存在することも確かである。六カ国協議が進展しないのは、こういった温度差がそもそも六カ国による北情勢の打開というフレームワークの限界を示していると言えるだろう

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私は悩みをリストアップし始めたが、そのあまりの長さにいやけがさし、何も考えないことにした。-- Robert C. Pike

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