von_yosukeyanの日記: 郵貯をめぐるいくつかの問題
小泉政権は例によって、「行政改革」を目玉にした構造改革を提唱しているが、その改革の要は特殊法人改革である
この特殊法人の統廃合/民営化に必要なものとして、郵貯を民営化するという方針がある。しかし、郵貯の民営化にはいくつかの問題点がある
■制度的問題
郵貯は世界最大の金融機関であるにも関わらず、金融監督当局である金融庁(FSA)や日銀(BOJ)の直接的な監督を受けない。郵貯の設立根拠は郵便公社法であり、監督官庁は総務省である。郵貯を民営化する時点での議論では、まず民営化するとしたら銀行法に基づく銀行免許を取得して一般の金融機関とするか、それとも現在のように特別法を設立根拠とした半公的金融機関とするかという問題もあるし、監督官庁をFSAとするかにも議論がある
もう一つ、郵貯は法律により一般の金融機関とは異なる恩恵を受けている。例えば、郵貯は印紙税が免除されているし、郵便局などからは固定資産税が徴収されてない。こういった国営時代の恩恵を、民営化後も継続するのは好ましくない
■資本問題
さらに、郵貯が仮に一般の銀行と同じ規制を受けるとなると、問題となるのは自己資本比率規制をどうするのかという問題が出てくる
郵政公社は郵貯部分だけでも235兆円、簡保では124兆円。合計で約360兆円もの資金を持っている。両者とも、ほとんどの預金を国債や財政投融資債によって運用しているが、これに対して郵貯事業単体での自己資本に相当する内部保留は6兆円に過ぎない。これは単純に換算すれば、自己資本比率は2.5%となり、2003-2006期中期経営計画が予定する2006年度期末での目標預金残高の203兆円が達成されれば、何とか3%が確保できる。
しかしながら、一般の国内基準行に義務付けられる自己資本比率4%を大きく割り込んでいることは明らかで、生田日本郵政公社総裁が主張する10兆円規模の内部保留を何とか確保しなければならない
一方で、公社の三事業の一つである郵便事業は、今年3月末で6500億円もの超過債務に陥っている。公社発足時にも、郵便事業単体での自己資本比率は1%台となっており、仮に郵貯を民営化するとすれば、三事業を一体化して民営化するのか、それとも郵便事業を公社に残しながら、他の金融事業を民営化するのか、といった民営化形態の議論に深刻な問題を投げかけると考えられる
■金利・資金調達問題
郵貯は、貸し出し部門を持たない金融機関であるので、基本的に保有する債券のフィーから経費を差し引いた分がそのまま預金金利となる
しかし、長期金利の低下で、10年国債の入札金利に連動する財投債の金利も低下傾向にあり、以前のように銀行と比べて高い金利を維持することが不可能になりつつある。特に、郵貯資金の大半が長期の定額預金に依存しており、金利低下によって他の金融商品に資金が流れ込む可能性が極めて高い
国営事業時代には、暗黙的な国の全額保証が存在しており、郵貯は国民の小額貯蓄手段として広く普及した。しかし、民営化によって一般の金融機関と同じように預金保険機構(JDIC)の預金保険がかけられれば、定期預金では1000万円までしか保護されないし、JDICに支払う預金保険料の問題も生まれる
■問題なのは…。
こういった郵貯民営化の障害になると考えられる問題が、実は郵貯民営化の議論の中でほとんど手付かずになっている点である。郵貯は3年を経営計画周期としているので、2006年か2009年を目処に民営化が行われると考えられるが、現状では2006年の民営化はほとんど不可能に近い
また、民営化の形態に関しても様々な意見がある。全銀協や経団連が示した民営化案があるが、これに対する政府案や公社案が示されておらず、議論を行えない状況が続いている。小泉政権は本気で郵貯を民営化するつもりなのか、と言われれば大きな疑問符がつくのではないかと思う
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