von_yosukeyanの日記: 西川善文と住友銀行 3
文藝春秋2004年1月号に「三井住友銀行頭取 西川善文研究」という題の14ページにわたる記事が掲載されている。副題には「磯田一郎の呪縛は溶けるのか」「『巨大不良資産』の蟻地獄」「金融界のドンが嵌る「イトマン事件の深層」」と言った言葉が踊るが、内容はやや期待はずれだった
記事の内容自体は、主に1)今年初めの米投資銀行ゴールドマン・サックスからの総額5000億円の優先株による第三者割当増資の経緯に関する問題、2)SMFGの緊密先企業への不良債権飛ばし、3)西川氏個人の経歴といった内容だった
実のところ、この記事は既にいくつかの経済専門週刊誌などで取り上げられている話題ばかりで、2)の問題に関してはSMFG以外の金融グループにも多かれ少なかれ存在する話だ。逆に言うと、SMFGよりも酷い興和不動産問題などから比べて特筆に価するような話ではないような気もする
特に2)の問題に関して言えば、副題にもあるように旧住友銀行の3大政治案件である安宅産業事件、平和相互銀行事件、イトマン事件の三つの事件によって発生した不良債権処理が、関連会社に賭場割れているという話だったりするのだが、この処理に西川氏を中心とする住友銀行旧融資第三部が関わっていた、という話(3)から膨大な不良債権が塩漬けになったままで、1)の不明朗な増資問題に結びついているという結論である
こういう記事の構成の仕方は、一見もっともらしいように見えるのだが、実のところあんまり正確ではない。それどころか、かなり強引に話を繋げているという感じが非常に強い
気になったのは、一貫して記事は西川頭取を中心に、旧住友銀行案件を中心に話しが進められている点である。例えば、1)の増資問題では、わざわざGSのほかにも、J・P・モルガン・チェースの案があったこと(実際には複数の案があった)が強調されていたし、GSの増資スキーム自体の詳細な説明はない。反対に、JPMの増資スキームに関しては一言の説明もない。記事自体は、「みずほが2%のフィーで増資に成功しているのに、なぜSMFGは4%のフィーなのか?」なんて問いかけがあったのだが、逆に言えば2%のフィーで明らかな証券取引法違反の増資を強硬したみずほHDの増資が異常だったのであり、その前後に行われたUFJの増資や、4月以降にUFJやSMFGが行った劣後ローンによる増資のスキーム自体に全く触れられていない
増資問題は、これ個別では不透明な問題が存在することは確かだ。この点につき、東洋経済2003年6月14日号が詳細に触れているが、文藝春秋の記事はこれの丸写しに近い。だが、問題としてはかなり履き違えている点が多い。劣化した資本を増強するためには、かなりの金利を払って体力を温存し、少しずつ条件のよい資本増強を小出しに行うのが常套である。実際に、4月以降にUFJやSMFGが行った資本増強がそうだし(条件はGSのものよりもかなり良い)、この先例となったシティーグループの90年代初頭の経営危機では11%ものフィーを支払っているのである。逆に、信用力が低すぎて、こういった増資スキームが取れず一度きりの公募増資しかできなかったみずほFGの経営状況は破綻寸前であると言えるのだ
もうひとつの問題は、旧融資第三部と書いたように現在は融資第三部は存在しないことだ。これは住友銀行時代の話で、現在は三井案件も担当する部署や、企業再生部門など大量の部門に分割されていて、その数は十数部にも及ぶ。もちろん、その中にはかつての融資第三部には頭取案件と呼ばれる特殊な案件を扱う、頭取直属の部署が存在するが、それは旧住友の3大案件だけを取り扱っているわけではないのだ
そして、これらの問題を強引に結びつけたこと、逆に言えばすでに他誌が記事にしていることを劣悪な二番煎じにしているところ(大体、立花隆の~研究の真似なら第二弾、第三段と掘り下げるべきなのだが)は何故なのか、というとイロイロと想像が可能な記事になっているのだ
第一には、来年全国銀行協会会長行がSMFGであり、西川頭取が就任する予定なのである。毎年のことだが、全銀協会長行は一般メディアに袋叩きにされる。それ自体は一種の洗礼のようなものかもしれないが
第二には、この記事のソースがおそらくは旧三井系から来ていると思われる節がある点だ。特に、GSは住友銀行が過去に支援した経緯があるのだが、これから漏れたJ・P・モルガン・チェースは三井銀行の親密企業であり、三井家とは数十年にも渡る関係がある。そして、きんゆ再生の踊り場にきた昨今、かつて不良債権の総合デパートと言われたさくら銀行より、比較的傷の浅いと思われていた住友銀行の関連企業の不良債権が多かったのではないか、という今さらながらの話が噴出していたりする
そして、旧三井系が不満を抱く問題の一つに、最近のSMFGの問題先企業の処理方法にも不満を募らせていると思われるところがある。三井財閥系企業だけを見ても、三井生命(株式会社転換後にSMFG傘下入りの予定)、三井鉱山(産業再生機構入り)、三井トラストホールディングス(支援を行わないと明言)などである。これ以外にも、親密ゼネコンの処理問題では明らかに住友系を優遇しているのではないかという不満が未だにあるし、人事問題でも未だにもめている
第三には、この文藝春秋2004年1月号の別の記事にもあると思う
特集記事に「死ぬ物狂いで成長を実現せよ」という経団連会長でトヨタ自動車会長の奥田碩会長の記事が、同じく「ソニー親和は五度崩壊した」というソニー会長の出井伸之CEOの記事が掲載されている。この二つの企業は、旧三井銀行を並列メーンバンクとしていた企業で、特にトヨタは歴史的な経緯から旧住友銀行を敵として憎んでいる会社でもある。さらに、短い記事だが「ゴールドマン・サックスの正体」「不良債権とデフレ」なんて記事まで掲載されている。要するに、オール住友叩きな号なんじゃないか、と思えてしまうほどだ
そんな記事が出ていたのか…。 (スコア:1)
written by こうふう
Re:そんな記事が出ていたのか…。 (スコア:1)
こりゃ銀行の通常の反応じゃないですよ。相当頭に来てるみたいだ…。
Re:そんな記事が出ていたのか…。 (スコア:1)
written by こうふう