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NTT

von_yosukeyanの日記: 普通預金債権の第三者弁済

日記 by von_yosukeyan

一個前の日記について

以前からの漏れの主張とちと違うような感じがしているかもしれないので一言書いておく

ここで違和感を感じているのは、東京三菱銀行事件横浜地裁判決との整合性である。この判決は、盗まれた証書(通帳)によって普通預金と定期預金が第三者に引き出された、という案件だがこの判決の中で普通預金の利便性や流動性から、定期預金については銀行側の過失要件を厳重に判断しているのに対して、普通預金に対しては認めていない、というものだ

普通預金は振込や振替、自動引き落としといった決済に使用される口座であり、キャッシュカードを発行することによって自動機での非対面的な取引を認めている流動性預金である。こういった普通預金を、定期預金と同等の過失要件を当てはめるというのは銀行側にとって酷であると同時に、銀行取引の利便性を害すると思われるからである

というのは、普通預金は通帳と払い戻し請求書に署名捺印があれば、即座に引き出すことができ、銀行側もそれに応じなければならないが、定期預金は満期が到来しなければ払い戻しは行わない。例外的に、期限前払い戻しという制度があり、期限前の払い戻しに対しては約定金利ではなく同期間の普通預金金利を適用するか、約定金利に預け入れ期間に応じて90%から40%を乗じた金利を適用するものである

よって、定期預金の期限前払い戻しというのは銀行業務において特段の注意を要すべき業務であり、民法478条の要件である善意・無過失(そして注意義務)が要求される。一個前の日記で引用した労金東京地裁判決は、「手袋をはめていた」「勤務先について答えられなかった」「原帳支店(口座開設支店)でない」などの特段の注意を払うべき事情があったにも関わらず、これを怠ったことが注意義務違反に該当すると判示しているが、普通預金に対しても行うべきなのかという疑問、すなわち従来の判例が取ってきた立場とは異なるものである点が違和感というか、興味をひくのだ

もう一つ普通預金払い戻しに関係する論点として総合口座取引がある。総合口座とは、普通預金口座を核に定期預金や貯蓄預金をセットにした口座のことで、この総合口座の特徴の一つに定期預金担保貸付がある。総合口座に定期預金を組み合わせておくと、定期預金を担保として一般的には定期預金の額面90%(公社債、金融債の場合には80%)または、最高500万円前後を限度に、定期預金の約定金利+0.5%前後の金利で貸付を行うというものである。例えば、普通預金口座の残高が足りないときに自動的に融資を行う、といった制度でカードローンとは本質的には異なる

キャッシュカードで払い戻した場合に、定期預金担保貸付が自動的に行われるという性質から考えると、弁済である478条はそのまま適用できない。しかし、判例は478条の類推適用法理を持ち出して銀行側の免責を認め、法理としては確立している。判例は、さらにこの478条類推適用法理を拡張し、カードローンにまで及ぼそうとしている傾向がここ10年ほどあるが、学説にはこれに反対するものが大半である

しかしながら、カードの取引は有人での対応ではないために注意義務違反を問うべきものがない。そして、キャッシュカードやカードローン取引約款には、暗証番号やカード自体の管理について取引者責任を明示しているものが大半である

以上の点を考えると、個人的には流動性預金たる普通預金と定期預金というカテゴリの下に一元的な線引きを行うのは違和感を感じる。昨今の印鑑や印影の偽造問題を考えると、たとえ普通預金取引であっても注意義務違反を問うことができる、という本判例は非常に興味深いと考える。ただ、この場合の普通預金の法的な位置づけを478条との関係だけでなく民法の外形信頼法理の中で同位置づけを行うべきなのか、という点に関してはもう少し考察が必要な気がする(続く)

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未知のハックに一心不乱に取り組んだ結果、私は自然の法則を変えてしまった -- あるハッカー

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