von_yosukeyanの日記: 中小企業支援と行政(1)
ちょっと古い話なんだけどバーチャルネット小役人改め霞ヶ関官僚日記から
中小企業支援体制としては、大別して以下のようなものがある
a)規制緩和
b)教育制度
c)融資制度
d)優遇措置
まず、a)の規制緩和だが、起業の阻害となるような規制の撤廃、例えば(個人的にはこれほど馬鹿馬鹿しい政策はないと思うのだが)株式会社や有限会社の最低資本金規制の撤廃や、各種距離規制の撤廃に代表される参入障壁の撤廃である
b)の教育制度とは、単純に潜在的な起業者に対して経営上のノウハウや経営や起業に必要な技能の習得などであり、欧米ではコミュニティーカレッジや大学と民間の交流、わが国では技術校や社会人大学院、商工会議所などの各種支援制度などがある。これだけでなく、例えば中小企業が新商品の開発に必要な技術を、大学や国公立の研究機関に求めるといったことも含まれるだろう
c)の融資制度は、資本が不足している中小企業に対して直接的に資金を供給する制度である。例えば、国民生活金融公庫や日本政策投資銀行による融資制度、自治体などによる保証制度などに代表される。最近では、都による東京都債券市場構想や、MBOを活用した融資スキームの提供、売掛債権の証券化、都営銀行制度などがある
d)の優遇措置とは、税制上の優遇や工場や事業所誘致のための周辺環境の整備や安価な土地の提供、賃貸借、土地整備などである
この観点から言えば、埼玉県戸田市のオレンジキューブはd)の優遇措置のカテゴリに入ると思う。しかし、実態としては記事にもあるようにSOHO支援というよりはむしろ、昨今乱発した自治体によるインキュベーターサービスに近い
#そもそも、箱物批判のある自治体によるインキュベーターサービスそのものが、建設業界に対する利益供与行為であるという批判も成立しうる
官僚氏の所論は、第一に「税金を使って一部を優遇することは許されない」というもの、第二に「SOHOよりも大きな企業に成長してくれる可能性の方が好ましい」という二点である
そもそも、起業の類型には次の二つがある。一つは、過去にも書いたがパートナーシップであり、現代の大企業と言われる組織体の大半が原則としてパートナーシップから非公開の会社組織、そして公開企業へと進化していく方向性を辿っている。もう一つが、既存の組織内部から新規事業を立ち上げていく方法で、企業内の事業部や、子会社、社内ベンチャー、スピンアウト、行政自信による全額出資または第三セクターなどの形態があろう
従来、パートナーシップは家族経営的な小規模企業形態と理解されてきた。個人経営もこの範疇に入るのではないかと思う。要するに、パン屋ならだんなさんがパンを焼いて、奥さんが店子をして、息子が配送するといった形態だ。こういった家族経営的な小規模企業が成長するには、例えば販路を拡大して製造を大規模化するとか、フランチャイズ形態にして指導料やブランド利用料を徴収するといった方法で、現に上場しているパン屋(といったらアレだが)もある
こういった個人経営からより規模の大きな企業への発展というのは、基本的には収益の拡大と資本の蓄積の二つが原因である。家族経営のパン屋が大きくなるには、家族に頼った労働力の確保ではなく、第三者を雇用して生産力を高める必要がある。そして、資本を蓄積し、それを生産設備に投下するのである
この規模拡大の原則の前提になるのが、雇用人数ないしは資本の規模が個々が独立して事業を営む場合よりも高い生産性が存在しなければ成立し得ない。例えば、先ほどのパン屋の例でいくと、パン屋を営む為に必要な最低雇用人数を4人とした場合、40人規模の企業組織であるパン屋の生産性が10倍以上にならなければならない
小規模な経営形態を、大企業へ発展する途上段階と定義した場合、中小企業や個人経営を行政として支援すること自体は合理的である。しかし、規模の拡大が生産性の向上に繋がらない場合には、こういった支援は意味をなさない
#ところで、官僚氏は国民生活金融公庫の支店に行ってみたことがあるだろうか? 公庫は建前としては、こういった発展途上の支援にあるはずだが、窓口の実態はとにかく酷い
規模の拡大が、生産性向上の前提とされる場合に、最も有効な政策的支援体制は、資本供給である。担保主義を取る銀行が、担保資産に乏しい中小企業に融資しないならば、行政がリスクを取って他人資本を供給するというものである。この考えは、遠くは明治期に特殊銀行日本勧業銀行設立建議(これは後に業務内容と設立順序が逆になって特殊銀行日本興業銀行として実現する)に見ることができるし、これらは先にあげたc)に集約することができる
しかし、特殊銀行時代の日本興業銀行(IBJ)に関する各種研究でも明らかのように、行政による資本供給が成功した例というのはあまり多くない。IBJに関して言えば、12年戦争期に軍需産業の発展に寄与をしただけで、むしろ「栄光のIBJ」だったのは株式会社に転換した戦後の中山素平頭取時代くらいなものである。むしろ、IBJが戦後、6大企業集団(三井、三菱、住友、芙蓉、第一勧銀、三和)に次ぐ、銀行系企業集団を形成したように、資本調達スキームで行政による支援を受けた企業というのは、その後も関係を清算することができなかった場合が多いのではないかと考える
こういった例は、中小企業支援のための各種の公的融資制度から、中小企業自体が抜け出せない場合が多い例に多く見られるのと同じではないかと思う。しかも、こういった公的融資制度は雇用や設備投資など「成長性を前提とした資本調達」が重視され、例えば企業の金融需要の一つである運転資金や、つなぎ資金、売り掛け債権の流動化といった、中小企業の資金ニーズとはミスマッチなものである場合もあるし、融資要件も非常に厳格で自由度が低い
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