von_yosukeyanの日記: なぜネット銀行の預金金利は高いのか
オークションなど、インターネット上の個人取引の増加にあわせるように、00年代前半から相次いでネット専業銀行や大手銀行のネット支店が開設された。代表的なものとしては、SMBC系のジャパンネット銀行や、ベンチャーファンドを中心に設立されたイーバンク銀行がネット専業銀行の代表として挙げられ、大手銀行系のネット支店としては三和銀行インターネット支店(現UFJ銀行インターネット支店)や富士銀行エムタウン支店(現みずほ銀行インターネット支店)、スルガ銀行ソフトバンク支店などが代表的なものである
これらをネット銀行という言葉でひとくくりにすると、欧米の同様なものと比較して相違点があるとすれば、金利水準が高く設定されているところだ。正確には銀行免許を取得していないので銀行とはいえないが、Paypalは預金(預かり金)に対しては金利は付与されていない。日本のネット銀行は、決済手数料を主な収益源としているが、Paypalの場合には預かり金をマネーマーケットファンドなどで運用し、決済手数料の代わりに預かり金の生む金利を主な収益源としているという違いがあるものの、どうもそれだけが原因ではないようだ
欧米のネット専業銀行の多くは、決済よりも資産運用目的な銀行の方が目立ち、決済手数料だけを主要な収益源としている銀行は少数派である。欧米では、銀行間の電子決済ネットワークが日本ほど充実していないため、クレジットカードや小切手など既存の決済手段を補完する決済スキームが発達した。これに対して、電子決済ネットワークが発達している日本では、決済そのものを収益源とする単独の銀行を設立することが可能であった
一方で、ネット専業銀行は固定費や運用費負担がかなりかかる。システムコストがかなりかかるので、専業銀行系ではUNIXを使ったオープン勘定系をネット銀行専用に開発しており、既存の勘定系パッケージを使用しているところはない。大手銀行系のネット支店は、むしろ独自の勘定系構築コストを抑えるために、既存の勘定系を利用している感がある
#ジャパンネット銀行とソニー銀行は、富士通の開発したネット専業銀行向けのオープン勘定系パッケージを使用している。このパッケージはデータベースサーバーとアプリケーションサーバーを中核とした三層構造で、ERPやディスカウント・ブローカーのシステムに構造が似ている。これに対して、地方銀行向けのオープン勘定系はハブを中核としたH&S型のシステムや、従来の勘定系中心型のシステムが多いが、ネット銀行ではあまり必要性がない情報系との膨大なデータのやりとりを意識した設計であるからである
#実際には大手銀行系のネット支店のシステムは、既存の勘定系システムのスペックがボトルネックになっている。特に、みずほ銀行の場合、旧富士銀行のTOPSをベースにしているために、みずほ銀行本体の勘定系統合に伴うシステム投資の凍結の影響をモロに受けている
もうひとつの運用費用は、取引量の増大に伴うシステム能力の増強やチャネルコストである。前者は回線やサーバーなどのコストだが、後者はいわゆるオーぺレーションコストである。コールセンターの人員や電話回線などもあるが、主要な支出は口座への入出金のコストである。ジャパンネット銀行の場合には、親銀行であるSMBCと、SMBCのコンビニATMである@bank、SMBCも提携しているイーネット、郵貯ATMを通じて入出金を行うことができるが、こういった役務取引費用の増大は、取引量に比例し増大する。イーバンクの場合には、既存の銀行に開設したショートカット口座に対する振込みだが、一口座あたり月10円程度の支出に加え、入金手数料のキャッシュバックなどで経常的なコストが発生する
これらのコストを削減するためには、口座にある程度の残金があれば入出金を抑えることができる。しかし、決済が主要業務であるネット銀行に、多額の現金を置く理由がない。したがって、金利を高い水準に設定して、オペレーションコストを削減するというのが、ネット銀行の預金金利が比較的高い理由である
では、高金利を維持するために預金運用はどうなっているのかというと、個人向けローンでの運用というのもあるが、ほとんどの場合は政府短期証券での運用か、コール運用であると思われる。結局はコストがかかることには違いはないのだが、ATMや指定口座への振込みが頻繁にあると、システムコストが増大する
ジャパンネット銀行などは、当初は個人向けローンを拡大する予定だったが、予定よりも融資残高は多くないようである。一方で、イーバンク銀行は当初個人ローンなど決済以外の収益は考慮に入れていなかったようだが、決済収益から投資銀行業務に収益モデルを転換したために、黒字化を達成してる。現在では、預金金利は0.1%台からJNBと同水準の0.06%台まで低下している
ネット銀行の収益目標が、計画よりも低水準であるのにはいくつかの理由が挙げられるだろう。第一に、ネット決済の市場拡大予測が甘かったことがあるだろう。しかし、それ以上の決済手数料に加えて、月額数百円程度の口座維持手数料が、ネット決済への参入増加によって徴収できなかったこともある。そして、第三には既存の銀行のインターネットバンキングが普及したことによって、ネット専業銀行の優位性が崩れたことも理由のひとつとして考えられる。特に、りそな銀行は今年に入ってから、決済手数料をグループ内振込みに関しては無料化、他行振込みでも税込みで100円(JNBの場合168円)という低水準な手数料を打ち出した。そして、第三にはネット専業銀行そのものの優位性が、口座数と手数料以外に見当たらない点も問題である
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