von_yosukeyanの日記: 香港ドル
香港ドルという通貨は、香港政庁の金融管理局に対し、民間の金融機関が米ドルを預託し、預託の範囲内で香港ドルを発券できるという特異な通貨制度である。このため、香港ドルは米ドルとペッグした通貨であり変動相場制を予定していない
発券銀行として認定されているのは、英大手銀行の香港上海銀行(HSBC)、英スタンダード・チャータード銀行、中国四大国有銀行の一つ中国銀行の三行である。しかし、実際のところはHSBCが大半の紙幣を発行している。実は、香港ドルは同じ額面でも発行銀行によって異なる図案の紙幣が存在しており、Yahooニュースの写真にもあるように紙幣も発券銀行ごとに全く異なる図案が使われている
前にもHSBCについて書いたことがあるが、HSBCはイギリスが中国大陸植民地経営のために設立した植民地銀行の一つである。明治維新直後には日本にも進出して、日中貿易の仲介を果たし、戦後の経済発展にも寄与した銀行でもあるが、一方でイギリスの香港では支配的な地位を築いた銀行でもある。中国共産党政権の成立によって、もうひとつの拠点である上海から駆逐されたHSBCは、発券業務と、金融シェアの独占により高い収益を得ることになった
HSBCが大きく変貌したのは、80年代からである。イギリス本国が、金融ビッグバン(金融規制撤廃)を大胆に推し進めていった結果、英国の金融市場の「ウィンブルドン化」、即ち外国金融機関による買収が相次いだ。99年に、イングランドの名門銀行ナットウェストがスコットランドの地方銀行であるRBSに買収された例なども典型的であろう
そして、香港返還である。HSBCは、ほぼ唯一のイギリス資本として、イングランドの名門銀行ミッドランド銀行を買収し、「イギリス本国」への進出を果たした。これ以降、米国、オーストラリアなどアングロサクソン系の銀行を買収して巨大化した。その極めつけが、持ち株会社制への転換と、持ち株会社本社を香港ではなく、イギリスに移転した事件である
香港返還に伴い、香港ドルの発券銀行はHSBCとスタンダード・チャータードの二行体制から、中国銀行を加えた三行体制に移行した。中国銀行は、中央銀行ではないが元々は、中国共産党政権発足時には中央銀行機能と商業銀行機能を併せ持った金融機関だった。これから、中央銀行機能を分離してできたのが、中国人民銀行である
それでも、中国銀行はHSBCよりもずっと中央銀行らしい。中国銀行の傘下には、様々な株式会社制商業銀行が存在し、それらを実質的に支配している。つまり、HSBCやスタンダード・チャータード銀行は英資本を代表し、中国銀行は大陸資本を代表としているのである
ところで、中国政府の外資に対する金融市場開放の一環として、大陸内での外国銀行の営業規制が緩和されつつある。HSBCは大陸内でもフルブランチを提供しており、かつてのように香港でも上海でも業務を行っている(尤も、現実的に言えば香港イングランド銀行だが)。また中国銀行傘下の交通銀行の株式を取得し、本格的な中国業務に乗り出している
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