von_yosukeyanの日記: [CCIPS]英国の鉄道 2
非常に些細な部分だが、相変わらずこだわってみる
Q4;Here in Britain, we recently shut down the governemental body that regulated our train services because they were tending to take the side of the small number of contact personnel at the train companies that they dealt with on a day to day basis rather than the side of the faceless multitiude of passengers who they only knew through a few angry mails.
仮訳;ここイギリスでは、電車の運行を管理していた行政当局が閉鎖に追い込まれています。なぜなら行政側は、数通の苦情メールくらいでは無視されてしまうような、顔が見えない大勢の乗客ではなくて、日々取引している少数の鉄道会社の担当者に味方する傾向があったからです。
ちょっと意味がつながらない
イギリスの鉄道当局は主に次のようなものがある
第一に、交通省(Department for Transport)内局の鉄道局(Strategic Rail Authority)、交通省監督下の英国鉄道(British Railways Board)である。SRAは、鉄道運輸行政の戦略決定を行う機関で、後述するLT社の清算監督も担当した。また、SRAのはNetwork(TOC)に対するフランチャイズ許認可権限や鉄道会社への補助金の交付権限も有する。一方、BRBは旧国有鉄道機関の評議会を継承したもので、国有鉄道資産が民営化され、また監督権限も専門機関が設立されたことで存在意義は薄いが、諮問機関的な位置づけに加えて、鉄道警察の監督が任務となっている
第二に独立行政機関である鉄道管理局(Office of the Rail Regulator)、通称ORRである。ORRは鉄道施設を保有するLT社の監督や、車両リース会社などへの監督権限及びフランチャイズの許認可権限を有する。SRAが、産業育成を目的とした機関であるのに対して、ORRは消費者保護と競争確保のための機関であるので、独立行政機関となっている
第三に、保健省(Department of Health)健康安全局(Health and Safety Executive)傘下のHMRI(Her Majestys Railway Inspectorate)という機関である。HSEは、保健省の内局だが実質的に外局的な位置づけで独立性が高い。HMRIは、鉄道事故調査と安全性の勧告を行う行政機関で、後述するNetworkに対する許認可権限の一部も有している
さて、イギリスの鉄道民営化は他のヨーロッパ諸国と同様に、中曽根政権下での日本国有鉄道の民営化の強い影響を受けた。日本国有鉄道は北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州の6地域会社と貨物1社の計7社に分割民営化されたが、英国は日本での成果を参考にしつつ、異なる方式での分割民営化を試みた
イギリスでの分割は、日本での地域分割方式とは異なり、いわゆる上下分割方式で行われた。まず、メジャー政権下の94年に列車以外のおよそ鉄道運行に必要な鉄道施設を所有する特殊会社として、LailTrack社(LT社)が設立され、BRBの監督下に入った。これに、鉄道車両を保有するリース会社3社が別に民営化され、さらに鉄道運行を行う運行会社(Network)に分割された。このNetworkは旅客会社25社、貨物会社5社の計30社である(94年時点)
LT社は鉄道施設を保有するだけでなく、Networkに対して軌道利用料を請求し、その資金で鉄道を保守管理し、またNetwork間のダイヤ調整を行う。一方、リース会社はNetworkに対して鉄道車両をリースする。つまり、Networkは単に営業免許(フランチャイズ)を保有するだけの会社であり、参入容易性と競争性を鉄道に導入するための試みであった
しかし、民営化は直後から困難に直面する。元々、イギリスの鉄道民営化は肥大化する鉄道施設の保守コストを節約するためだったが、LT社の民営化によって利益追求という新たな目的が課せられた。よって、LT社は人件費を削減するために、まず子会社に従業員(Navigator)を人材派遣会社に転籍させ、時間給で雇用するという体制を作った。さらに、その保守も安全を確保できる最小限の保守に限ったために、鉄道施設の老朽化が急速に進行した。一方で、Networkから徴収する軌道利用料を大幅に値上げする
#イギリスの初期産業革命期の大量輸送機関は運河であった。1761年にブリッジウォーター公爵家領のウェスリーからマンチェスターを結んだウェスリー運河はその始まりで、同運河の完成を見て各地で運河建設ブームがおこった。この運河建設に従事した土方をNavigatorと呼んだ。後に鉄道建設の際にも使われ、転じて鉄道保守者をNavigatorと呼ぶようになった
鉄道施設が老朽化したままなので、LT社は一方的に列車の走行速度に大幅な制限を課し、民営化直後からダイアの大幅な乱れが常態化することになる。97年、LT社は政府保有の特殊会社から完全民営化を達成し、利益確保に邁進することになるが、老朽化した鉄道施設の更新のためにNetworkや政府から多額の補助金を与えられていたにもかかわらず、アップグレードは遅れ、逆に株主に対し多額の配当を行うなど乱脈経営が問題となった
この間、重大事故も多発する。99年にパディントン事故では31人が死亡し、00年のハットフィールド事故では4人が、03年1月の地下鉄事故では復旧に三ヶ月を要した。最大の事故が03年10月17日にピカデリー線で、2日後の19日にノーザン線で脱線事故が発生し多数の死者が出た。いずれも、レールの老朽化による事故で99年のハディントン事故と同様な原因だった
このような、鉄道事故の多発とLT社の乱脈経営は保守党政権から労働党政権に交代するとさらに悪化し、調査によると英国民の半数以上が鉄道よりも飛行機の方が安全であると回答している。また、別の調査によると鉄道施設の老朽化によって、英国では鉄道移動よりも自動車で移動する方が環境負荷が低くなっているという報告まで出る始末だった
極めつけが、2001年LT社は乱脈経営の末に交通省により破綻認定され、SRAによる監督下に置かれた。破綻処理を経てLT社はNetwork Rail社として再出発したが、軌道保有会社としての問題点は解消されないままである。そもそも、上限分離方式による民営化が責任問題を複雑化させ、サービスの質や安全性を低下させる原因となっているが、すでに複雑な所有関係にある各鉄道運用会社の権利関係から後戻りはできない状況になっている。一方、監督権限のあるORRとSRAが基本的に放任状態にあることも問題のひとつである。そもそも、国鉄の民営化の時点でイギリス政府はサービスの質の低下を、補助金とペナルティ(ダイアが遅延すれば乗客に対し運賃の払い戻しや鉄道施設内で販売される飲料の無料配布)でカバーする方針で、安全性の確保に冠しても多少の安全性の低下による死傷者は、保険金によってカバーするするほうが安上がりであるという政策が根底にある
こういった鉄道政策上の問題点は、労働党政権による補助金削減政策によってさらに助長され、公共鉄道網に対する英国民の不信感は増大し続けている。他のヨーロッパ諸国の状況を見ると、フランス国鉄は民営化の方向に向かっているが相変わらず国有体制を堅持しているし、ドイツやアメリカでの鉄道行政もイギリス労働党政権下ほどの混乱は見せていない
さて、問題の訳文であるが、鉄道会社との取引という部分からSRAを指すのではないかと思われる。SRAは94年にOPRAF(鉄道許認可局)として誕生したが、2000年運輸法によりSRAへ改組された。原文はこれを指しているのではないか、という推測と政府関与企業(GSE)的なLT社の経営破綻を指すのか定かではない。なお、英国民の大半はSRAとORRの違いについてあんまりよくわかってないんじゃないかと思う
#参考文献
金山裕通「英国レールトラック社破綻にみる民営化組織のガバナンス問題」PHP政策研究レポート第6巻68号
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