von_yosukeyanの日記: 乱訴社会 日本
なんつーか、米国は乱訴社会だと言うけど、実体としては日本の方が乱訴社会であるといっても過言ではない
欧米諸国の法体系は、大別してローマ法を起源とする大陸法と、ゲルマン系民族を中心に形成された英米法の二つがある。前者は、イタリア、フランス、ドイツなど大陸諸国が、後者はイングランド(スコットランドは大陸法)、アメリカ、カナダなどイギリス系旧植民地に多い法体系である
#といっても、大陸系諸国の中でも法体系は同じとは限らない。フランス法は第一帝政時代にナポレオン法典によって形成された法体系が中心となっており、ナポレオン戦争によって大陸諸国に拡散したがその後も政権の交代で変異し続けている。プロイセン法はローマ法を再研究した成果で、同じローマ法体系といっても内容はかなり異なる。現行のドイツ法も、プロイセン法の直接的な継承ではなく、ドイツ帝国時代、ワイマール時代、西ドイツ時代、そしてEU統一法典時代とそれぞれ変異している
#英米法体系の中でも特異なのが、イングランド法とスコットランド法である。スコットランド王国は、ケルト系民族が中心だったためにローマ法体系の影響を受けており、イングランドと紛争時代にあった中世からルネサンス期にかけて、ネーデルランド(オランダ)などとの交易により近世的な大陸法体系が形成された。これは、イングランドとの連合王国(グレートブリテン)成立以後も、大陸法を基準とした独自の法体系が維持され、最高裁にあたる貴族院もイングランド法ではなくスコットランド法によって審議を行った。このため、イングランド法とスコットランド法は相互に影響を受けている。ちなみに、スコットランド法は裁判官の独立性が高く保障されており、裁判所による法規創造能力が強い
わが国は、直接的にはフランス法とプロイセン法に大きな影響を受けたために大陸法体系を持つと言われる。しかし、実際には随所にイギリス法(イングランド法)の影響も受けているし、戦後にはアメリカ法の影響も強く受けている
#例えば、現行憲法の違憲立法審査権などもそうだし、独立行政委員会制度などもそうだ
英米法の中でも、特に米法は裁判所による法規創造能力に特徴を持つ。判例法体系といわれるゆえんだが、裁判所が自由に法規を創造しているから、乱訴社会であるという見解は明らかに違う
例えば、不法行為法を考えてみるとわかりやすい。日本の不法行為法は、大陸法とも微妙に異なり侵害形態を列挙せずに、原則的に権利侵害は個別に裁判所が判断する形式である(もちろん、権利損害の要件はある)。しかし、どのような形態が侵害になるのかが非常にわかりにくい。製造物責任にしても、判例体系によって形成された概念ではなく、立法によって作られた概念(製造物責任法)である
一方の米法は、これを判例法の蓄積によって理論化する。一義的には、裁判所による判決がこれを示すが、後に法学者によって類型化される。米国の不法行為法が極めて強力なのは、柔軟性ではなくこの類型化に特徴があり、刑法における一種の構成要件のように厳格な適用要件が存在する
従って、乱訴といっても何でもかんでも裁判所が審理に移すわけではないし、変な裁判例をことさら強調しすぎている感がある。裁判統計的にも、米国は訴訟は多いが、日本では行政に対する申請に近い業務を、裁判所による判決で確定する事務が非常に多いので、直接的に比較するのはちと正確ではない
#例えば、日本でいう建築確認申請に対する異議申し立て手続きは、米国では裁判で処理する州が多い
逆に言うと、日本では行政訴訟の提起がほとんど不可能なほど行政事件訴訟法の原告適格要件が厳しいし、交通違反の罰金など本来なら裁判で解決すべきことが、日本では行政処分による簡易的な処置に委ねられている例が多い。また、民事訴訟で集団訴訟制度(クラスアクション)がないし、裁判官による訴訟指揮が弱く、問題解決に非常に時間がかかり、効率的とは言いがたい
一方で、裁判所に行ってみると地方の地裁でも膨大な件数の訴訟が提起されている。そのほとんどが、貸金訴訟、遺産相続紛争、医療過誤訴訟などで、裁判官1人あたりが受け持つ年間訴訟は、都市部の第一審で平均400件と異常な状態にある。そりゃ、毎年裁判官の自殺者が絶えんわけよ
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