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von_yosukeyanの日記: 次世代原子炉

日記 by von_yosukeyan

先日の日経に、MHI(三菱重工)がWHと次世代原子炉で中国市場参入を本格化するという記事が掲載されていた

MHIが中国の原子炉市場に参入するのはこれが始めてではない。すでに建設中のCANDU炉の原子炉構造物をMHIが受注していて納入が完了している。CANDU炉というのは、いわゆるカナダ型重水炉のことで、形式的には加圧水型に分類できるが減速材に重水、燃料に天然ウランを使った独特な炉だ。時代遅れな炉に見えるが、結構第三諸国では採用されている炉で安全性も高い

需要的に言えば、国内の原子炉市場はすでに飽和状態にあるし、今後原子炉需要がありそうなのは、仮に建設再開を行ったとして米国と、残りは中国くらいだ。バルト三国が新規に原子炉を建設したがっていて、欧州炉が採用できなかったら米国か日本の炉を、という話もあったりするが、まだ未確定な話だ

実は、中国は炉の入札に際していくつか重要な条件を課している。技術移転条件と、炉形式を加圧水型炉に限定している点だ。CANDUは加圧水型重水減速・軽水冷却型なのでギリギリ条件に合致しているが、GE型の沸騰水型原子炉(BWR)は条件に合わないので入札できない。GEと日立製作所・東芝連合が米国市場に的を絞っているのはそのためである

前にも書いたが、世界的に見ると原子炉形式はPWR(加圧水型軽水炉)が主流である。減速形式が軽水以外を使用しているものも含め、全体の四分の三くらいがPWRタイプだ。炉形式を統一して全体コストを抑えるという観点から見れば、韓国もPWR炉の一種である韓国標準炉に統一しているが、炉形式がばらばらというのは米国と日本、ロシアくらいなものだ(ロシアもPWRが標準化しつつあるが)

しかし、PWRに限定しながらも炉形式に関してカナダ、米国、フランス、ロシアと全く異なる仕様の炉を購入しているのは、中国高速鉄道に見られるような技術移転の必要性からと、標準炉選定のための必要性からであると思われる

一方で、輸出側にも思惑がないわけではない。いずれも、輸出対象は実績のない新型炉が多いという点である。PWRに関しては、日本原子力発電が敦賀に計画している3・4号炉が実現すれば世界初の改良加圧水型原子炉(APWR)になるが、中国に輸出を検討している炉は、これよりもさらに進んだAP600炉の輸出を検討している

PWRにしてもBWRにしてもそうなのだが、第一世代から第三世代までは一貫して炉の大型化に特徴があった。スリーマイル事故を契機に、炉の安全性の向上が認識されるようになると、第四世代炉(ABWR、APWR)は若干その傾向が見られるようになるが(特にABWRでは再循環系の改良が行われている)、炉構造の単純化とECCS(緊急炉心冷却装置)の改良が同時に進められた

AP600炉は、大型化ではなく中小型炉の方向性を示し、PWRのトラブルの最大の要因である高圧環境下における配管構造の強化や、蒸気発生器の細管破断による冷却材喪失事故に対する脆弱性の強化などが図られている

おそらく、MHIが参加するのはCANDUと同様に日本が独自に改良を進めてきた炉構造物のうち、圧力容器のプレスコンクリート製原子炉格納容器(PCCV)などであろう。PCCVを採用した炉は、すでに第二世代の超大型炉である原電敦賀2号機で採用されていて、東電の柏崎刈羽で建設されたABWRなどにも標準的に採用されている(そて原電敦賀3・4号炉にも採用予定)。世界的に採用実績が少ないが、安全性やコストの観点からいえばPCCV工法による炉は競争力が高い。もし、受注できれば日本のゼネコンも参入できる余地が生まれるだろう

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