von_yosukeyanの日記: 三菱自動車赤字決算
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041108-00000205-yom-bus_all
正直、予想された範囲の決算なので株価も大して反応していない
どうでもいいが、昨年文藝春秋に三井住友フィナンシャルの増資スキームを批判する記事が掲載されたことがあった。まぁメインの記事は、旧住友銀行の不良債権飛ばしの実態を告発するという、かなり(旧さくら的)私怨に満ちたどうでもいい内容だったが、一般紙でこういう感じに増資スキームが批判されているのか、と暗鬱とした気分になった
SMFGの増資スキームを最も的確に批判していたのは東洋経済だったが、文藝春秋に限らず一般紙の批判はGSが引き受けた優先株の配当金利に集中していたように思えた。比較の対象がみずほフィナンシャルの2%の配当金利だから爆笑モノだが、たった4%の金利でGSが無条件で増資引き受けをおこなったなら、漏れがGSの株主だったら株主代表訴訟を起こすくらい腹立たしい話になっていただろう
90年代初頭に経営危機に陥ったシティーコープは、経営再建のために大幅な資本の入れ替えを決断し、中東の石油富豪を引き受け先として、実に配当金利11%の条件で優先株を引き受けてもらった。その後、シティーコープは劇的な経営再建に成功し、後にトラベラーズグループに吸収合併されシティーグループとなるが、ソレに比べれば4%という金利は破格の安さだ。SMBCの格付け(フィッチ)は、未だにBBB+であり一昔前ならSMBCの貿易信用状(L/C)の受け取りを拒否されてもおかしくはないくらいの水準である。実際、90年代半ばに邦銀でL/Cを問題なく受け取れていたのは大手銀行ではBTMくらいだった
SMFGが4%で増資をGSに引き受けさせることが出来たのは、増資スキームにおける各種の信用保証もさることながら、SMFGにとってGSは身内だからだ。GSは、長い間パートナーシップ形態の投資銀行で、98年の経営危機を契機に株式公開に踏み切ったが、実はそれ以前にも脆弱な資本から幾度か私募増資を行わざるを得ない場面があった。それを引き受けたのが当時の住友銀行で、SMFGとGSの間には一種の身内意識がある。それでもビジネスはビジネスだし、適正な金利水準を確保するのは当然のことだ
それに対して、MHFGの2%での増資スキームは違法スレスレのひどい増資だった。1兆円もの増資資金を確保するために、資金を貸し付けている取引企業や、少しでも金を持っている企業経営者個人や富裕層に対して、取引関係を背景とした増資強要や、証券取引法違反の勧誘など、一時は金融庁が処分を検討したほどの状況だったし、実際に口頭で注意すら行っていたくらいだ。処分に到らなかったのは、もちろん政治的な思惑からだったが・・・。
合法的に増資を行ったSMFGが自力で猛烈に収益を上げて不良債権処理を進める一方で、違法スレスレで社会的にも非難されるべき増資を行ったMHFGがスケールメリットのみで復活を果たしつつあるというのは非常に対称的に見えるが、同様に三菱自動車も復活が可能なのだろうか。国内の販売状況を見ると、前年度比で半分を割り込みかける状況だが、セグメント別に見ると軽自動車の販売状況は自社ブランド・OEM生産共にそこそこの水準であるし、海外販売に到っては北米を除いてほとんど影響は見られない。中止していた宣伝活動や、新車発売が再開すればいずれは客は戻ってくる、とおそらく三菱自動車の経営陣は思っているだろう
しかし、4月の株主総会における増資スキームと再建計画は欠陥だらけだった。そもそも、経営再建に必要な資金をグループ内で調達することができなかったために、株価を人質に取る形で投資ファンドのフェニックスキャピタルと、米投資銀行JPモルガン証券を相手に増資を行わざるを得なかった。異常に転換開始期限が早い条件がついたJPMS向けの優先株と、フェニックスが引き受けた普通株をJPMSに貸し出す形で、7・8月の転換期限にはJPMSはフェニックスから借りた普通株を空売りし、フェニックスは手数料を、JPMSは空売りの収益と限界まで値下がりして、値下がりリスクがほぼなくなった普通株を手に入れることができた
一方で、長期の転換条件の優先株を引き受けた三菱グループは、三菱重工と三菱商事を筆頭に三菱自動車に経営陣を送り込み、結局のところ三菱自動車の再建よりも自社の利益になる再建策を優先させた。三菱自動車の長年の品質問題の遠因の一つである購買部門の改革はグループ内増資であったことからほとんど不可能だし、増資額がまるで足りないので岡崎サイトを閉鎖して、岐阜・京都・水島に生産集約を行うという、冗談みたいな再建スキームを大真面目で実行しようとした
国内販売の低調はわかりきったことなのに、経営計画は4月の再建スキームを決定した時点での甘い計画のままだったし、生産力と人件費の削減ありきで決定された閉鎖計画の後に、どのように収益を上げて再生に結びつけるのか具体的な戦略がないまま突っ走ってきた半期であったような気がする
原油価格の高騰と、環境意識の高まりでいまさらSUVありきな再建計画も糞もないし、強みのある軽自動車部門への投資を削減してまで突っ込むような話でもない。結局、外部からの資本調達といってもあからさまに株価を人質にした増資だし、フェニックスキャピタルにしても、実態は銀行が不良債権処理のために債権をオフバランス化するために設立したようなインチキファンドだ。三菱グループ主導での再建という点には変りがない
いや、状況は変るかもしれない。BTMがUFJと経営統合を果たしても、しばらくは公的資金が残り銀行経営に対して国家による介入の余地が残る。BTMの三菱自動車向け債権の区分について、FSAとBTMがかなりやりあっているという話は有名だが、新車投入が本格化する来期に国内販売に回復の兆しが見られないならば、自社利益ありきな現経営陣と言えども、再度の金融支援ないしは増資に踏み切らざるを得ない。4月の再建計画策定の時点では、まだ切り売りする資産もあったし、産業再生機構による支援も有利な条件で可能ではあっただろう。しかし、再度の支援となれば話は別で、さすがにBTMも抜本的な処理に向かって走り出さざるを得ないだろう
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