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von_yosukeyanの日記: 中国の原潜

日記 by von_yosukeyan

中国海軍の状況を示す有名な言葉として「長大な沿岸線を警備する」と「いつの日か台湾を征服する」の二つの言葉がある。世界最大の地上兵力を持つ中国人民解放軍だが、海軍建設に関してはかなりの苦難があった

中国は内陸部の人口と都市の規模が大きいが、それでも長大な沿岸線を抱える海洋国家でもある。しかし、その沿岸線の警備するためには中小型の艦船が大量に必要となる。また、台湾征服のための艦船といっても遠洋航海能力は必要がないので、80年代までは中国艦隊は数は多くても比較的小ぶりな艦船が多かった

潜水艦に関しても同じことが言える。中国の潜水艦は1960年代までにソビエトから輸出されたロメオ級と、ロメオ級の設計図を参考に潜水艦隊の建設が開始された。ロメオ級(Project633)は1959年に登場したディーゼル動力潜水艦で、ソビエトでは20隻前後が建造されたが、本国では生産が中止された後も中国を含めた友好国に輸出され、中国と北朝鮮ではライセンス生産も許可された。これが中国のロメオ級(Type033)で100隻近くが生産されたと言われている

ロメオ級(Project633)は元々、ソビエト潜水艦隊の主力潜水艦として計画され、元々は100隻以上の建造を予定していたが、原子力潜水艦の登場によって建造数が削減されたという経緯がある。そのため、ロメオ級は以後のロシア通常動力潜水艦には見られない長距離航行能力や派生型が検討せており、ソビエトと中国が友好関係にあった時代に、これらの技術が中国に輸出された

SSN-2Aスティックス対艦巡航ミサイルの発射能力を付与した、ロメオ改(Project633A)の設計図(実際にはロシアでは生産されなかった)を元にした武漢級(Type033G)もそれである。SSN-2Aスティックスは、地上発射バージョンのSSC-3のライセンス版であるシルクワーム沿岸警備用対艦巡航ミサイルとして極めて有名なミサイルで、小型飛行機くらいの大きさのある旧式なシステムで誘導方式も改良が加えられているとは言えかなり旧世代に属する。武漢級は生産数が少ない上に、退役が進んでいる。中国はロメオ級を北朝鮮とエジプトに輸出している

この武漢級をベースに改良したものが、最新型の明級である。ただ、明級は独自開発したAIP推進システム(スターリングエンジン)を2001年に登場した20番艦から搭載していると言われ、戦闘情報システムも元々のロメオ級が搭載しているスターリングラード戦闘情報システム(第二次世界大戦中の米国システムのコピー)から大幅に改良されていると言われる

これらを含めると、中国の潜水艦隊の中核はこれらロメオ級の派生システムとして40隻前後が作戦行動についているものと考えられる。これら通常動力潜水艦は、主に沿岸部の哨戒作戦用と機雷敷設や特殊部隊運用などの特殊任務と見られている

もう一つ、ロシアから輸入したものとしてゴルフ級ディーゼル潜水艦がある。弾道弾発射を前提に設計された最初の潜水艦で、SS-1BスカッドAミサイル(NATOコード)の海上発射バージョンのR-11FMを搭載したバージョンが2隻完成形で、残る1隻分が組み立てキットの形で輸出され中国で組み立てられた。90年代までにはすべて退役したとの情報もあるが、1隻が試験艦としてミサイル発射実験を行っているという話もある

原子力潜水艦は、Type091から計画中のType094までの4種類がある。いずれも、中ソ関係が冷却化して以降に開発が開始され、独自技術で開発されたものだ

漢級(Type091)は、水中基準排水量4500トンから5500トンの攻撃型原子力潜水艦で、形式は不明だが加圧水型原子炉1基を搭載し、最大速力25ノット前後、最大潜航深度は250メートルから300メートルとされているが詳しいことはわかっていない。1974年に登場したが、原子力推進系にトラブルを抱えていて建造ペースも遅かった。3番艦からYJ-8(CSS-3、いわゆるC801)対艦巡航ミサイルを装備するために船体が延長され水中排水量も1000トン増えているが、艦対艦巡航ミサイルであるYJ-8を水中発射できないために、浮上して発射しなければならないという致命的な問題を抱えている。また、騒音が大きく、実用的なレベルに達していない。5隻が建造された

夏級(Type092)は、さらに開発が遅れて1981年に登場している。中国初の国産戦略型潜水艦で、JL-1(巨浪1号)を12基搭載し中国の核抑止力の中核として期待されたが、発射システムのトラブルで大規模な事故が発生し、実際に作戦配備が開始されたのは1988年のことで、常時作戦配備されている状況ではない。結局、1隻しか建造されなかったことを考えても、夏級が現実的な核抑止力として機能しているかどうか疑問である。なお、改良型のJL-2を搭載予定だが、開発が遅延しているため現在も搭載されていない

Type093は、漢級の後継艦として計画中のもので未だに登場してない。サイズは漢級より一回り小さい4000トンクラスで、一軸推進だが加圧水型原子炉2基が搭載される予定だ。潜水艦の騒音原因はスクリューの水中放射音と原子炉周り、それにタービンの共振が原因なので、一軸推進で原子炉を複数搭載する構成が適当なのかどうかわからないが、原子炉技術の未熟さを補うためではないかと考えられる。設計にはロシア人技師が参加していると言われ、雑音レベルは漢級よりは低いと思われる

Type094は、夏級の高景観として計画中だがやはりまだ登場していない。サイズは不明で9000トンから1万トンクラスと、中国が国産化したものでは最大クラスになるが、搭載するJL-2(巨浪2号)の開発が遅延しているため登場はさらに遅れると思われる。JL-2はJL-1と同様に地上発射型の固体推進ミサイルをベースにしているもので、JL-1が最大2000キロ前後だった射程距離が8000キロに伸びる。ベースとなっているDL-31(固体推進三段)を改良したものだが登場は少なくとも2010年以降になると思われる

全般的な問題として、中国は原子炉国産技術が未熟であるために、推進系のトラブルを抱えている。さらに、ミサイルの水中発射技術も国産の独自なものなので、かなりのトラブルが発生している。さらに、中国沿岸の大陸棚は水深が極めて浅いために、潜水艦の作戦行動には不適切である。そのため、南方海域や遠洋などでの作戦行動の必要があるが、こういった地域では米国や日本の対潜哨戒が活発で作戦行動が取りにくく、元々遠洋艦隊基盤がない中国にとっては非常にやりにくい

そういった意味で、中国の原潜は安全だが極めて狭い地域で活動していると思われ、東シナ海や黄海ではディーゼル潜水艦による活動が適している。外洋活動で必要な海底の詳細なデータ収集が90年代後半から、海軍の海洋調査船が行っているのもこのためであると思われる

今回の中国の領海侵犯は原潜、それもおそらく漢級であると思われているが、明級の20番艦である可能性も否定できない

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