von_yosukeyanの日記: セブンシスターズ(1) 2
あれは、96年か97年のことだったと思う。漏れはまだ高校生で、それが意味することの重大性を充分認識できなかった
IBCAは重要な格付け機関のひとつで、現在は合併してフィッチIBCAとして有名な組織の一つだ。スタンダード・アンド・プワーズ(S&P)やムーディーズ・インベスターズのような著名な格付け機関と比べて知名度がイマイチ低いのは、この組織が格付け依頼を受けずに、独自の調査によって格付けを行う勝手格付けを行うのに対して、IBCAは基本的に金融機関からの依頼と詳細な財務調査なしには格付けを行わないという点で知名度が低く、そして逆に信頼性の高さでは、現在の三大格付け機関の中では最も高く評価されていた
IBCAが、東京三菱銀行、住友銀行、さくら銀行、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行、三和銀行、東海銀行の格付けを一段階落とすのを発表したできごとは、当時凋落の激しかった邦銀の国際的評価の下落を象徴する一つの現象くらいにしか思わなかった当時も漏れだが、実際にはこの事件がメガ4グループへの再編を動機付ける要因になったことはずっと後に知った。特に、レートウォッチ(格付けを見直すことを検討)後に格付けを下げられた銀行が、いきなり格下げを喰らった銀行を吸収する形で合併が行われたことも、IBCAの影響の高さを物語っている
IBCAがこのようにクレジット・リスクの判定で大きな影響を与えているのは、IBCAの格付けを参考にする国際的な大企業が多いからである。大手銀行が、国内的な業務に専念するリージョナルバンクか、インターバンクから資金を調達し、国際的な金融市場に参加するマネーセンターバンクとしてのメガバンクとして生き残るかの岐路は、その金融機関と大企業が取引するか否かにかかっている。IBCAはその意思決定に影響を与えるという意味で、重要な地位にいた。そして、邦銀はインターバンクでの資金調達も、国際金融取引でも困難を極めるようになる
IBCAの格付け見直しから数週間後、サウジアラビア政府が保有するサウジアラビア国営石油会社(アラムコ)が、邦銀の発行する輸出信用状(LC)の受け取りを拒否した。輸出信用状とは、貿易金融の場において、輸入品目の内容を確認し、代金支払いを銀行が保証するというもので、銀行側はLCの発行により保証枠の数パーセントの保証料を獲得するという、極めてワリのいい商売の一つである。石油貿易は、額の大きさと安全性の高さから輸出信用状業務に占める割合としても、利益率としても銀行にとっては格段に良い分野の一つで、とりわけアラムコ相手のボリュームは突出していた
アラムコの信用状受け取り拒否事件によって、邦銀でまともにLCを発行できるのは東京三菱銀行のみになってしまった。他の銀行は、LC発行を他の格付けの良い銀行に再保障する形か、LC発行業務を全く停止してしまう事態に追い込まれていた。もっとも、この事件よりも前から、全信託銀行と格付けが低下し、トヨタ自動車に増資要請を行っていたさくら銀行は、インターバンク市場から資金を全く調達できない異常事態が続いていた
影響はさらに、グローバルCMSの展開にまで及んだ。80年代、アメリカの代表的な金融機関であるJPモルガンは、大企業の資金調達を一本化する金融システム/サービスとして、キャッシュ・マネージメント・システム(CMS)を開発した。CMSは、企業が親会社や子会社がばらばらに行っていた資金調達を、一旦本社に一本化して親会社の信用で資金を調達し、親会社が子会社に資金を貸し出すというシステムで、金利コストを圧縮し財務管理を簡素化する商品として登場した。銀行側にとっても、CMSによって特定企業の取引を一つの金融機関に集中化できるために、大企業の囲い込みが容易になるメリットがあるが、一方でシステム開発に多額のコストがかかる。グローバルCMSは、多国籍企業相手のCMSサービスで、主要国に拠点があるマネーセンターバンクでなければ提供できないサービスだった
当時、東京銀行を吸収合併したばかりの東京三菱銀行は、(東京銀行の)世界的な知名度や(三菱銀行の)取引企業の多さから、国際金融市場では圧倒的な地位を獲得していた。この東京三菱だけでなく、JPモルガン、シティバンク、HSBC、ドイツ銀行といった世界的な大銀行と対抗するには、グローバルCMSの拡充が必要だった。しかし、LC発行が事実上単独で出来ない状況に追い込まれ、インターバンクでの資金調達も多額のプレミアムを支払わなければならない状況下で、グローバルCMSを展開できるような状況ではなかった。東京三菱銀行を除く邦銀は、なだれを打って国際業務の縮小と撤退をはじめ、すでに多額の開発費用をつぎ込んできたグローバルCMSのシステム開発も縮小や見直しに追い込まれていった
このように、日本の金融にも大きな影響を与えるアラムコという企業体はどのような存在であろうか。世界の石油市場を左右する企業体として、古くはセブンシスターズ(スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー、スタンダード・オイル・オブ・カリフォニア(ソーキャル)、バキューム、テキサコ、ブリティッシュ・ペロトリアム、ロイヤル・ダッチ・シェル、CFP)と呼ばれる石油メジャーが、現在ではスーパーメジャー(シェンブロン・テキサコ、エクソン・モービル、BPアモコアルコ、ロイヤル・ダッチ・シェル、トータル・フィナ・エルフの5社)に加え、新興勢力であるロシアのユーコスやガスプロムなどの準メジャーを加えた7社が事実上世界の石油市場を独占している
しかし、アラムコの存在はこういったスーパーメジャーの地位を超越した位置に存在する。それは、石油市場におけるサウジアラビア王国と、国名に自身の名すらつけるというサウード家とアメリカの親密な関係にある
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