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von_yosukeyanの日記: R-11/R-17/ND-1/TD-1/TD-2

日記 by von_yosukeyan

北朝鮮の弾道弾技術は、原則として旧ソビエトが供与したSS-1CスカッドB(北朝鮮名Hwasong5)と、スカッドBをベースに発射管制システムを改良したSS-1DスカッドC(北朝鮮名Hwasong6)を技術的な基盤としている。これに加えて、中国のロケット技術も関係していると言う説もあるが定かではない

SS-1BスカッドA(ロシア名R-11)は、1955年に登場したソビエト地上軍向けの戦術短距離弾道ミサイルで、ケロシン-硝酸燃料を使用したミサイルだった。ケロシン-硝酸燃料は出力は高く、ケロシンは安定的であるが、硝酸の取扱が非常に難しく(ミサイル本体内で保存ができない)発射にかなりの時間を要すること、また酸化剤としての硝酸は赤く長い煙の軌跡を引く(発射地点を目視で確認できる)ことから、1970年までには全てが退役している。R-11の反省から改良型として投入されたのが、SS-1CスカッドB(ロシア名R-17)で、本体を1メートル延長し燃料に非対称ジメチルヒドラジン-抑制赤煙硝酸(UDMA-RFNA)を採用したものだ。この他に、誘導システムの改良や、運搬車輌としてキャタピラを使用したTELから大型車輪を使ったMAZ-543TELを採用するなど、現在のスカッドシリーズに近い形に改良が加えられている

#ちなみにここでいうケロシンとは、オクタン価の高い灯油、つまりジェット燃料などに近い性質のもので、石油ストーブに使うと芯が燃え尽きること請け合いである
#1/20追記
#cyber205氏にご指摘をうけたのだが、オクタン価が高い=ストーブの芯が燃え尽きるほど熱量が高い、というのは間違っている
#ロケット用に使用されるRP-1燃料は、高熱量のケロシン燃料の一種である。ケロシンが液体酸素と同じく多用されるのは常温で安定しており、タンク構造などを簡易にできる点であり、結果的にロケットの総重量を軽減できるからである。ジェット燃料であるJP燃料はいくつかのグレードが存在するが、概して配管凍結防止のために水分含有量を軽減したものである

R-17が登場した時点で、すでにR-11の後継としてはSS-12スケールボード(ロシア名OTR-22/9M76、通称Temp)が登場していたが、R-17も平行して相当数が整備された。おそらく、製造コストの高いTempを安価なR-17で補完することと、固体燃料のTempと液体燃料のScadシリーズを整備することでリスクヘッジを狙ったものだろう。一方で、R-17はソビエト地上軍だけでなく、ソビエトの友好国に大量に輸出され、生産設備も北朝鮮やリビア、エジプト、シリア、イラクなどに移転されている

以下は推測だが、R-17は発射システムが自動化されていないというR-11以来の欠陥を引きずっており、発射時の手順ミスや誘導システムの問題から命中精度はそれほど高くない。R-17に限らず、道路移動型の短距離弾道ミサイルは、戦術目標を攻撃するための戦術兵器として使用されるが、大抵は核弾頭を搭載しているので命中精度は良い越したことはないが、コストや配備数の観点から考えればある程度妥協できる。しかし、通常弾頭を装備した場合には命中精度の悪さは無視できない問題だが、第三諸国の軍事独裁政権の虚栄心を満足させる程度の効果はあるだろう。冷戦期に、ソビエトが大量にR-17と生産技術を移転したのはその辺りの事情があるのではないかと考える

さて、北朝鮮に供与されたSS-1CスカッドBは、独自に改良が加えられSS-1DスカッドC相当のシステムを開発されたとされる。北朝鮮は、元々日本から工作機械を輸入して本国ソビエトよりも水準の高いミサイル技術を維持できるという立場にあったと言えるので、それほどおかしい話ではない。スカッドCのエンジンを4基束ね、直系を約50センチ、全長を約4メートル拡張したのがNoDong-1、いわゆるND-1と呼ばれる短距離弾道ミサイルである。ND-1は相当数が製造されて、北朝鮮の外貨獲得のためにアラブ諸国を中心に広汎に輸出された。ND-1はスカッドシリーズよりも一回り大きいものの、改造したMAZ-543Tel車輌に搭載することができるため老朽化したスカッドの後継として購入した国も多い

#以下、北朝鮮のミサイルは衛星によって最初に発見された地点の名称が付与されている。ND-1は北朝鮮では木星1号と、TD-1は白頭山1号という北朝鮮名が存在すると言われている

ND-1と後継のND-2は極めて偶然なことに、イランのSRBMであるシャハブや、パキスタンのガウリとの共通点が極めて多いのだが、これは開発にあたって北朝鮮・イラン・パキスタン・中国が相互に技術協力をしているためだとされているが、当事国はこの事実を否定している。また、開発にあたってはロシア人技術者も関与していると言われている。いずれにせよ、この四カ国は核関連技術でも相互的に技術交流を行っていると見られており、パキスタンが行ったガン型ウラニウム核弾頭の実験データの多くが北朝鮮に渡っていると考えられている

ND-1を第一段目に採用し、第二段目に中国のM-11(東風11、NATOコードCSS-7)MRBMを採用したものが、MRBMであるTaepoDong-1(TD-1)である。しかし、これには異論も多い。M-11は固体推進の二段式ミサイルで発射重量も大きいが、実績もあり国産化もされているScadC改良型を採用していると言う説も有力である。一方、少数説としてケロシン・液体酸素を採用しているという説(Janes年鑑)もあり定かではない。一致しているのは、TD-1の第一段目はND-1であること。多段式のミサイル開発は北朝鮮にとってTD-1が初めてであるので、技術的に中国からの援助を受けていることは確実であると言える

TD-1の射程距離をより延長したものがTD-2である。これらは開発中ということもあってか、さらに不明な点が多い。多くの推測では、第一段目はND-1のエンジンを使用しているとされる。第二段目に関しては、全くの新規開発か、中国からの弾道弾技術が流用された、ScadCそのものなどの説が入り乱れていて確証はない。いずれにせよ、TD-2の開発は資源的にも資金的にも最優先で行われているにもかかわらず、技術的な問題に加え北朝鮮の経済難の深刻化により遅れている。2002年と03年にはテストサイトで大規模な爆発事故が発生し、ミサイル開発に深刻な打撃を受けているという観測もある

TD-1は、98年に第三段目を追加したシステムを日本海に向けて発射しブースターは日本海と三陸沖に落下した。北朝鮮は、これを人工衛星打ち上げ用ロケットであり平和目的のために使用したと主張している。第三段目は固体ロケットブースターであると推測されている

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