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von_yosukeyanの日記: 有斐閣ポケット六法がポケットに入らないサイズである件 1

日記 by von_yosukeyan

とは、もちろん「ポケットに入らないのにポケットを名乗るのは不当表示ニダ」というジョークなのだが、有斐閣ポケット六法や岩波コンパクト六法など小型の学習用六法の電子化の意味がないと断じるには次のような理由である

第一に、学習用六法はペーパーベースでの物理的制約というそのものの意味がある。六法は狭義の六法(憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法。仮に六法典と呼ぶ)以外にも、主要なものでは行政法、経済法、国際法といった法律が含まれるし、六法典の特別法として、例えば民法に対する不動産登記法や民法施行法、商法に対する商法特例法や手形法、小切手法、民事訴訟法に対する民事訴訟規則(最高裁令)、破産法など200あまりの法令が収録されている。収録されている法令は毎年改正される上に、タイムリーな新法を収録するために新しく掲載される法令もある一方で、サイズ的な問題から要約の形で掲載されている法令もある。電子化による物理的制約の撤廃は、(時代によって変化する)学習用最低限の法令を掲載するという学習用六法の趣旨に合わない

第二に、参照性の低さだ。学習用六法においては、電子化によるメリットである検索性はあまり必要とされない。理由は明らかで、法律の学習においては条文を丸暗記することよりも、どこに何の条文があるかという構造理解が重要であるからだ。従って、教官は意図的に初学者に対して教科書に条文が掲載されていても、実際に六法を参照することを要求する

これには、もう一つ意味がある。法令を理解する上でしばしば直面する条文の競合(例えば民事上の請求権の競合)や、基本法と特別法との関係を理解する上で条文の相互参照が欠かせないからだ。特に民法と民事訴訟法、刑法と刑事訴訟法の関係は、民法や刑法の基本理解の上で流れとしての訴訟手続法を学習するというのが一般的だから、頻繁に六法をめくって相互参照する必要が出てくる

しかし、電子化辞書の場合では画面上の制約から複数の条文を同時参照するのは面倒だし、階層検索・キーワード検索のいずれもペーパーには劣る。単一の条文を見るにはPDAでも構わないかもしれないが、相互参照となるとある程度大きな画面が必要になるがノートPCなどではでかすぎてペーパーベースの方が軽いという問題もある。六法でも一度に2ページしか開けないじゃないか、という反論もあるだろうがこの手の辞書にはあらかじめ複数のしおりが用意されているか複数本のひもが用意されていて相互参照がやりやすくなっている。また学習者にはポストイットは必需品だ

第三に、どうせ1年か2年で捨てるものなんだからしるしや書き込みやメモを遠慮なくできる点も重要だ。電子辞書でできないわけではないが、第四には電源が必要ないという問題もある

もちろん、電子化が全く不要といっているわけではない。施行令や省令など行政法分野では膨大な条文が存在するし、判例法に至っては公式判例集のうち戦後最高裁民事・刑事だけで59巻刊行されていて、もしペーパーベースで持つならば本棚がひとつ埋まる。判例雑誌の復刻版は、DVD化によって劇的に価格が下がりDVD2~4枚組に収まり、値段も50万円を切った。法庫や法令データ提供システムの登場によって、法令検索は非常に楽になった。それでも、基本六法や学習用辞書の需要は相変わらず存在する。現に電子辞書を使いながら、紙の六法をめくるという光景は、法実務家やパラリーガルを問わず相変わらず存在する

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「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」、科学者「えっ」、プログラマ「えっ」

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