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von_yosukeyanの日記: TSEがCIO職創設/夜間取引市場開設を検討 4

日記 by von_yosukeyan

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051216AT2Y1600616122005.html

どうもなんだかなぁ…。

夜間取引に関する経緯を振り返ってみると、元々ネット証券協議会(NSA)が、東証に対してシステム負荷の分散を求めて市場創設を要望していた。これは、証券会社のシステムの負荷が最も集中する朝8時30分から9時30分くらいまでの寄り付きの時間帯の負荷を分散するのが目的である

個人の取引者が「仕事中ではなく、仕事が終わった時間帯に開いている市場があればある程度分散できる」ということで、具体的には午後3時に市場が閉まった後の、午後7時くらいから0時までの時間帯を想定しているようだ。NSAの夜間取引市場開設提案に対して、東証が拒んできたのは東証の大株主である証券会社の反対がある

少なくとも、午後5時以降に取引市場を開くということは、東証の株主の大半を占める対面取引(電話や店頭で顧客から注文を受け付ける従来型の取引)を主要な収益源とする証券会社の理解は得られにくい。この時間帯に窓口に人員をはりつけるのは不可能だし、コールセンターで集中的に受注処理を行うにしてもコスト的な問題が生じる。勢い、夜間市場というのはネット取引か自動音声応答取引専用の取引市場であることを意味する

対面取引が主体の証券会社、特に準大手以下規模の証券会社や地方の地場証券以外は、ここ数年の個人のネット取引への移行によってかなりの打撃を受けている。手数料水準が全く違いすぎるし、何より客の迷惑も考えずに商品勧誘を行う営業員もいない。ここ最近の証券市場の活況にしても、取引の大半はネット取引が主体で、対面営業を行っている証券会社でも、窓口に対する問い合わせの大半がネット取引の操作方法であるという。加えて、銀行による証券仲介業解禁によって、これまで対面取引の最後の砦だった「ネットを使わない比較的裕福な中高年」にしても銀行窓口経由かネット取引に流れる傾向にあり、膨大な人員を抱える対面取引主体の証券会社は苦境に立たされている

夜間取引が開始になれば、対面取引が中心の証券会社はネット取引に軸足を移さざるを得ないが、こういった証券会社の大半はシステムは大手証券のシステム子会社(NRI、DIR、日本フィッツなど)が提供するASPサービスを利用しているので、システム的な競争力はあまりない。何より、対面取引が主体でありながら、巨大な顧客基盤を抱える大手証券でさえネット取引に力を入れているわけだから、米国株や中国株、韓国株といったネット専業証券と競合しない商品を主体としたり、投信の販売に力を入れたりしているわけだ

東証がこの時期になって夜間取引市場の開設を検討しはじめたというのは(仮に事実だとして)、ネット取引の拡大というよりも、対面取引主体の証券会社からの反対の弱まり、特にこれまで準大手以下の証券会社の経営に配慮して反対していた大手証券の方針転換があるのだろう。ただし、西室会長の発言というのは私的なものと考えられるし、実際に夜間市場を実現するためにはいくつかの問題点がある

第一に、流動性の確保が問題になる。実は、かつてゴールドマン・サックス証券がmoontradeという名称で私設の夜間市場を開設していた時期がある(証券取引法上の取引所ではない)。このときに問題になったのが主に個人投資家に限定した市場だったために、取引量が大したことなかったことだ。小口注文が主体である夜間市場においては、流動性の大きいオークション方式での取引は不可能に近い。よって、moontradeにおいては、NASDAQやJASDAQが採用するマーケットメイク方式での取引が行われているが、moontradeの場合にはゴールドマンサックス1社が気配値を提示する方式で、法的に見れば顧客とゴールドマンサックスの間の相対取引である。マーケットメーカーが1社であるというのは価格形成力が低く、JASDAQのように数社程度がマーケットメーカーとなって流動性を確保しなければまともに顧客を呼び込めないだろう。しかし、それにはNSA加盟4社では少し問題があり、やはり大手証券をどこまで参加させるかが成功の鍵になる

第二に、システム上の問題がある。東証のシステムは、前述したとおりオークション方式での取引システムであるが、仮にマーケットメイク方式を採用するならば新規のシステム開発が必要になるし、JASDAQのようにオークション/MM方式のハイブリッドを採用するにしても結局は同じことになる。また、証券会社側のシステムでも、午前9時から午後3時までの営業時間(実際にはヘラクレスの取引時間は3時10分まで)を前提に構築されたシステムで、この他の時間帯では決済処理などのバックオフィス業務や、システムそのものがバッチ処理に当てられているので、夜間市場が開設されてもネット証券以外の証券会社は参入が少し難しくなる。ネット証券でも、楽天証券のように勘定系システムのバッチ処理時間が長いために、夜間市場を仮に開設したとしても現状のシステムでは取引が不可能になるところもあるだろう。この辺りは、銀行がATM24時間稼動できない理由に似ている

第三に挙げられるのが、取扱銘柄の問題だ。二部のような流動性の低い銘柄と、大型株を同時に取引対象にするというのは、少し無理がある。どこまで対象にするのか、仮に全銘柄を対象とするならば流動性確保をどうするのかといった問題にからんでくる。取引銘柄が少なすぎれば、個人客も寄ってこない

そして、最後に言えるのが決済の問題だ。大半のネット証券が、顧客が買い付ける株式の入金は完全前金制としているが、夜間取引の時間帯には資金決済を行う全銀ネットが稼動していない。ネット銀行や大手銀行は、EDI決済(リンク決済)を導入しているので基本的に24時間即時に資金移動できるが、実際に証券会社の決済口座に入金されるのは一部のネット銀行を除いて決済データを転送しているだけで、資金移動は予約扱いになっている。では、いつ決済されるのかというと、一部のネット銀行は即時に決済されるが、ある銀行は午前0時に、ある銀行は翌日午前8時30分の全銀ネットのオンライン時刻以降(証券会社側の受取口座が他銀行に指定されている場合。例えばMHBKとMHCB。JNBとSMBCなど)、または午前9時の営業時間開始時刻(これが一番多い)と、決済時刻がバラバラで統一されていない。そして、証券会社側も、決済の買付可能額への反映が即時な会社(決済データの転送の時点)もあれば、実際の資金決済が終了した時刻とする場合もあり、やはり統一が取れていない。買いたいときに買える市場として夜間市場を導入するのならば、この辺りのルールの統一も考慮に入れたほうがよいと思う

以上のように、夜間市場開設に向けてはかなりの問題点が存在し、検討を開始する(これ自体が本当かどうかアヤシイものだが)にしても、即座に実現できるような問題ではないと思う。そもそも、東証が負荷分散のために夜間市場開設を行う前に、OTC(相対取引)市場を東証とは別のどっかがえいや、っと開設するとか、MM方式とオークション方式をハイブリッドで持っているJASDAQが手がけた方が自然な感じがする。別に、NSA加盟4社あたりが独自にOTC市場やECNを開設してもよさそうな気もするが、規制や証券決済の関係で一筋縄にはいかない

海外の場合はどうなのか、というと取引時間が日本の場合と比べてそもそも長い。加えて、電子取引ネットワークであるECNが発達しており、NYSEやNASDAQといった既存市場を脅かす存在にまで成長している。こういったECNでは、上場株式だけでなく未公開株の取引や、海外株式をスポンサードADR(ADRの最大金融機関がBONYである)として取引されており、証券市場の裾野を広くしているわけだ

東証が直面している問題は、システム以外にも市場としての国際的な地位低下など様々な問題がある。アジアの成長企業は、東証を素通りしてニューヨークやロンドンで資金調達を行っているし、東証外国部が廃止されて一部に吸収されたとはいえ、時代錯誤な旧規制時代の一部・二部制度が果たして必要なのかといった問題がある。外国企業の上場を呼び込むには、外国部の廃止だけでなく証券決済が一般の上場株とは別に決済されているという問題の解消など、問題点は多く夜間市場開設以前になすべきことが多い。今回の西室氏発言は、アドバルーン程度と受け止めておいた方が無難に思えるし、東証首脳人事の方向性によってはどう転ぶか良くわからない問題でもある

ところで、CIO職創設というところだが、図らずしも東証のシステムガバナンスが未成熟であるということを示している一例であると言えるだろう

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