von_yosukeyanの日記: 銀行と企業
産業再編や不良債権処理といっても、それぞれの企業と銀行の関係を無視することは不可能に近い。主に、企業は銀行との関係や歴史的な経緯から、財閥系企業、新興グループ系企業、独立系企業の三つに分けられる。
財閥系企業は、戦前の15大財閥のうち金融部門と産業部門を併せ持った三菱、住友、三井の三大財閥と、産業部門を持たなかったが巨大な金融部門を保有していた安田、渋沢、強力な金融部門を持たなかった川崎、根津、大倉、古川といった企業群を指す。特に、三菱(機械)、住友(鉱業)、三井(商社)の旧三大財閥は、歴史的にも資本的にも財閥系銀行と深い関係があり、高度経済成長期には膨大な生産力と有利子負債を積み上げてきた。
新興グループ系は、戦前の中小財閥のうち金融部門を持たなかった企業群や、戦後生まれた企業のうち、日本独特のメーンバンク制によって財閥系ないしは独立系銀行の企業集団の傘下に入った企業で、旧財閥系では日興證券(旧興銀系から三菱系)、戦後派では日本信販(旧三和系)などがある。メーンバンク制を取っているという意味では財閥系と同じだが、異なる点は企業同士の関係が希薄であるという点で決定的に異なる。
最後に挙げられるのは、メーンバンク制を取らず独自に発展してきた企業で、戦前から存在する企業と戦後に生まれたベンチャー企業から大企業に発展した例、旧国営企業が民営化された例の三つがある。戦前派では、トヨタ自動車(住友系から三井・東海を中心とする並列メーンバンク制)や日立製作所(旧日産コンツェルン系)、野村證券、日本生命、戦後派ではソニー、京セラ(三和系)など京都御三家、旧国営企業系ではNTT、JR、JTなどだ。
財閥系銀行に代表されるのは、東京三菱(三菱)、三井住友(三井、住友)の二つで、新興グループ系に属するのがみずほ(第一勧業、富士、興銀)、UFJ(三和、東海)、りそな(大和、あさひ)などで、企業構成が異なるので、必然的に貸出債権のポートフェリオも異なる。財閥系銀行では、大企業融資比率が高く、親密企業に対する身内意識が高いが、優良企業も多い(三菱の場合、三菱重工、キリンビール、三菱商事。三井の場合、三井物産、三越。住友の場合、住友商事など)ため不良企業から再編が進んだり、財閥系有力企業に不良企業を吸収させる形の再編が中心だ。
東京三菱の場合、東京銀行が外為銀行であった関係から、メーンバンクとする大企業は少なく、三菱単独での企業再編はあまり見られない。これに対して、三井住友の場合は財閥系同士の合併であったために、不良企業からの再編を進めているが、巨額の不良債権を抱えるNECや東芝といった企業の再編は、銀行が主導となって再編するには規模が大きすぎる感じがある。また、三菱の場合には、親密企業が三菱の枠から飛び出す場合が増えており、例えば日興證券は三菱から離脱してシティー(トラベラーズ・グループ)と、三菱自動車はダイムラー・クライスラーと提携した再建に、東京海上は日動火災と提携しミレアを結成、明治生命は安田生命(旧安田財閥の中核企業)との経営統合するなど三菱から距離を置いているし、三菱自体も傘下の証券会社再編では日興ではなく旧野村系の旧国際証券を中核とした三菱証券を誕生させている。財務基盤は比較的堅調な東京三菱だが、取引企業の流出と収益率の低さには問題がある。三井住友は、バブル期の住友銀行の悪行が祟り、三井系の取引企業の中に強烈な拒否感が存在することも確かで、統合の主導権を握っている住友系企業の状況が悪化しつつある今、ソフトランディングが可能であるかに生死が決すると思われる。
これに対して、新興グループ系に属する銀行は主に、独立系銀行と地銀上がりの銀行の二つに分けられる。前者に属するのがみずほで、後者に属するのがりそな、その中間がUFJ(三和は独立系、東海は地銀系)になる。
まず、みずほは旧中小財閥をかき集めた上に、戦後派の企業の寄り合い所帯と言った感が強く、富士が芙蓉グループを戦後結成したが結束力は弱く、一勧、興銀をメーンバンクとする企業も同様である。メーンバンクの重要性が低下した石油ショック以降、距離を置く企業が増えており、残っているのは経営に問題がありメーンバンクの支援を受けなければならないような企業ばかりで、問題企業との癒着体質は簡単には解消できないように思える。それでも、みずほは勧銀、興銀と旧特銀の流れや旧安田(富士)の歴史的な経緯から旧国営企業系や地方公共団体、特殊法人との「特別な」既得権益があり、それが分割・合併という複雑な統合スキームを生んだといえるが、個々には魅力があっても全体でみれば絶望的な低収益率で、経営の異常な混乱からして士気は低い。国有化ないしは、分割した上で外資などへの売却による効果が高い
地銀上がりのりそなは、大企業との取引比率が低く、中小企業や流通、建設、不動産といった企業の準メーンといった形での取引が多く、顧客基盤も規模の割にはそれなりにある。それでも、統合スキームの複雑さはみずほに劣らず、リージョナルバンクを標榜する割には、これといって地域に密着した収益モデルを打ち出すに到っていない。国際業務を放棄し、旧大和が得意とする法人向け信託業務がどれだけ拡大できるかにかかっているといえる。
中間的な存在のUFJは、三和系企業の離脱や地盤沈下から大企業取引の劣化が目立つ一方で、三和や東海が抱える中小企業取引の内容は比較的良質で、並列メーン行としている企業には京都系ブランドやトヨタ、中京地方の技術系優良企業などの存在は強い。しかし、不動産系やノンバンクへの不良化した貸出も巨大で、参加商社の再編なども進みが遅い。しかし、利ざや収益率があまり高くなく、手数料収入も高いことから、三井住友と共に不良債権問題が片付けば長期的な成長には期待ができる数少ない銀行の一つだ。問題は不良債権比率の高さと、自己資本の不足であり、国内企業や外資など、外部からの強力なバックアップが必要に思える。
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