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von_yosukeyanの日記: 原子力潜水艦(2)

日記 by von_yosukeyan

さて、こう書くとソビエトの原子力潜水艦技術が劣っているように思えるのだが実際には二つの意味でそれは違っている

一つは、重大な問題を抱えていた原子力潜水艦クラスは、すべて実験的な存在であった点である。特に初期のシステムには重大な欠陥があったが、その後にもいくつか問題のある実験的なシステムが配備された

その中でも最も特徴的なのが、プロジェクト705アルファ級原潜である。これは、先に述べた重金属冷却方式を取った原潜シリーズの一つで、当初は実験的なものと見られていたが、結局7隻前後が配備された。

アルファ級は原潜としては極めて小型で、排水量は3000トン前後しかない。アルファ級は高性能なVM-40原子炉と、高度にシステム化されたアコード戦闘情報システムによってわずか30名の乗員によって運用することができる。にも関わらず、アルファ級は実用化されている潜水艦の中では最も早い40ノットの速度を出すことが可能で、最深潜水震度も750メートルと軍用の潜水艦としては世界記録を持っている。40ノットという速度は、当時のアメリカの主力魚雷の速度を上回る速度である

VM-40原子炉は、詳細は明らかではないが一次系冷却材に鉛・ビスマスによる液体金属冷却方式を採用し、極めて高い温度(高い出力)で運用が可能である。その反面、この原子炉は一次系が常に120度前後で熱せられている必要があり、停泊時には蒸気による保温が必要(実際には問題が多く、常に原子炉が稼動状態に置かれた)など問題点が多かった。また、船殻にはチタン合金が採用され、デザインも流体力学研究では世界最高峰の地位にある中央流体研究所のデータを元に設計されたが、チタン合金の溶接に極めてコストがかかるシロモノだった

#ちなみに、液体ナトリウムを一次系に使用する高速増殖炉の場合でも、同じように原子炉停止時にはナトリウムを熱しておかなければならないという問題点が存在する。フランスのスーパーフェニックスや日本のもんじゅの場合、一次系配管に巻かれたヒーターによってナトリウムの凝固を防いでいる。このため、高速増殖炉は一般的に自己が発電する電力を上回るエネルギーをヒーターが消費している

一番艦は試験中に事故を起こし使用不能となり、二番艦以降のシステムも事故が多発したため、わずか10年ほどの運用で停止されてしまった。

もう一つのソビエト的トンでも原潜技術として注目すべきなのは、タイフーン級戦略原子力潜水艦である。水中排水量3万3千トンと世界最大の潜水艦で、SSN-20ミサイルを合計20機搭載できる巨大な潜水艦である。システムとしては問題点は少なかったが「でかけりゃいい」という設計思想が災いして、結局ベストセラーとなったデルタ級にその座を譲っている。

ソビエト時代の原子力潜水艦は、大量のシリーズが存在するが結局長期間使用されつづけたのは、戦略原潜ではデルタ級、攻撃原潜ではビクター級がその主力でありつづけた。デルタ級は最近までIV級の建造が継続して行われ、シリーズ合計で50隻近く建造された。ビクター級は、当初は騒音レベルが大きく問題も多かったが、lll級はロサンゼルス級と同等の戦闘能力を持つといわれている

ビクター級の後継として開発されたのが、シエラ級とアクラ級という二つの異なる設計思想に基づいて開発された攻撃原潜である。

シエラ級はアルファ級で開発されたチタン製の外殻を持つ6000トン級のシステムで、赤外や水流の流れと、音響探知を併用する未だに西側では確立されていない技術によって開発された。しかし、チタンを用いるために極めて製造が困難で、l級とll級の合計で4隻(1隻はアメリカ原潜バトンルージュと衝突して失われる)しか建造されなかった。

アクラ級は、シエラ級と同じく70年代から開発が進められ、同時期の80年代半ばに登場している。9000トン前後の大型艦で、船殻の大型化で水中爆発からシステムを防衛するという設計思想で開発され、巡航ミサイル運用を本格的に想定した多目的原子力潜水艦である(アメリカのこのシステムは、80年代後半に登場したロサンゼルス改級で限定的に取り入れられシーウルフ級で本格的に取り入れられたが、シーウルフ級のキャンセルによってわずか2隻しか配備されない)

このように、ソビエトの原子力潜水艦技術は、お得意の流体力学と冶金技術、原子炉技術によってかなり高度なものだが、政治的な問題でしばしば事故や問題を引き起こしてきた。冷戦後の資金不足で、新しいシステムの配備は遅れており、むしろ潜水艦技術は輸出指向の通常型潜水艦であるキロ級シリーズやスターリングエンジンを搭載したアムール級などの開発に注力されている。キロ級は、中国やインド、イランなどへの輸出が活発に行われている

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アレゲはアレゲを呼ぶ -- ある傍観者

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