y_tambeの日記: 輸入ワクチンとBSE
日記 by
y_tambe
この辺りも、今は完璧にスルーされてるみたいだけど。
新型インフルエンザ用の輸入ワクチンは、培養細胞(MDCK辺りだったと思うけど)を用いて作製されてるようですが、そのうち「BSE(いわゆる狂牛病)の感染リスクが?!」なんて話が出てくるんじゃないかと予想してみたり。
基本的にワクチン作製では、まず「生きたウイルス」を多量に作る必要があります…十分に弱毒化したワクチン株ならそのまま、そうでなければそのウイルスを壊して、予防用のワクチンにする。で、その「生きたウイルス」を作るためには、これまた「そのウイルスが増殖できる、生きた細胞」が必要になります。日本で用いられてる、ウイルスの鶏卵培養法では、有精卵(ふ化鶏卵)を、その「生きた細胞」の集団として使ってるわけです。で、輸入ワクチンの場合、その代わりに動物の培養細胞を用いて作ることになります。
動物細胞を培養する場合、それを培養するための溶液(培地)には、さまざまな成分が必要になります。それも菌類とか植物など、他の生物とは異なり、糖類や必須アミノ酸、ビタミン、塩類など(いわゆる基本培地を構成するもの)だけでは培養ができません。他の動物に由来する生体成分(さまざまな成長因子タンパク質などを微量に含む)が不可欠です。通常、哺乳動物細胞では、ウシ胎児血清(Fetal bovine serum, FBS, Fetal calf serum, FCS)を5〜10%程度培地に添加して培養する必要があります。
このウシ胎児血清は、生体由来成分なもので商品ロットごとのバラつきがあり、その良否が細胞の生育に大きく影響するので、細胞生物学屋さんにとっては非常に重要なものなのですが、2000年代初頭にそのメーカー供給がほとんどストップしてしまったことがあります。そう、BSE騒動の影響で。ウシ胎児血清も異常プリオンが検出される可能性があるから、ということで、輸入量が減り、元からかなり高かった価格もさらに高騰してしまいました。
#その後、BSE騒動も随分と下火になり、国産とかオーストラリア産のウシ胎児血清を取り扱うメーカーも増え、現在はさほど問題はありません。
例えば、ヒト幹細胞治療の分野などではワーキンググループで、培養時に用いるウシ胎児血清と、異常プリオンの問題についても話が出てます。細胞培養によるワクチン作製でも、この辺りは無関係ではないはずなんですけど、「供給量を確保せよ」という論調の陰に隠れてしまってる感がある。特に海外では、日本ほど異常プリオンに神経質でない国が多いわけで、「国内での規準に照らし合わせれば」問題になって、後から騒ぎ出す人が出てくるんじゃないの? とか予想してみたり。
個人的にはまぁ、培養液からのプリオン混入(ワクチン精製過程では、むしろ濃縮されそうだし)のリスクがどの程度のものなのか「全く見当がつかず、判断の手がかりすらない」というのが正直なところ。なので、果たして安全側に倒して判断すべきか、それともとりあえず直近の問題だけを考えて「良し」とするかは、本当に悩ましいのだけど。
まぁ安全側に倒すなら、最低限のプリオンのモニタリングくらいは実施しておく、ということになるかなぁ……もっとも、それ以前に「輸入ワクチンは高齢者用、低年齢の人はできるだけ鶏卵ワクチンで」という風な割当が可能なら、それでほぼ解決可能な問題だろうと思いますけどね。
#プリオン病は遅発性なので、高齢者だったら万一感染しても発症前に天寿を全うする可能性が高いから。
新型インフルエンザ用の輸入ワクチンは、培養細胞(MDCK辺りだったと思うけど)を用いて作製されてるようですが、そのうち「BSE(いわゆる狂牛病)の感染リスクが?!」なんて話が出てくるんじゃないかと予想してみたり。
基本的にワクチン作製では、まず「生きたウイルス」を多量に作る必要があります…十分に弱毒化したワクチン株ならそのまま、そうでなければそのウイルスを壊して、予防用のワクチンにする。で、その「生きたウイルス」を作るためには、これまた「そのウイルスが増殖できる、生きた細胞」が必要になります。日本で用いられてる、ウイルスの鶏卵培養法では、有精卵(ふ化鶏卵)を、その「生きた細胞」の集団として使ってるわけです。で、輸入ワクチンの場合、その代わりに動物の培養細胞を用いて作ることになります。
動物細胞を培養する場合、それを培養するための溶液(培地)には、さまざまな成分が必要になります。それも菌類とか植物など、他の生物とは異なり、糖類や必須アミノ酸、ビタミン、塩類など(いわゆる基本培地を構成するもの)だけでは培養ができません。他の動物に由来する生体成分(さまざまな成長因子タンパク質などを微量に含む)が不可欠です。通常、哺乳動物細胞では、ウシ胎児血清(Fetal bovine serum, FBS, Fetal calf serum, FCS)を5〜10%程度培地に添加して培養する必要があります。
このウシ胎児血清は、生体由来成分なもので商品ロットごとのバラつきがあり、その良否が細胞の生育に大きく影響するので、細胞生物学屋さんにとっては非常に重要なものなのですが、2000年代初頭にそのメーカー供給がほとんどストップしてしまったことがあります。そう、BSE騒動の影響で。ウシ胎児血清も異常プリオンが検出される可能性があるから、ということで、輸入量が減り、元からかなり高かった価格もさらに高騰してしまいました。
#その後、BSE騒動も随分と下火になり、国産とかオーストラリア産のウシ胎児血清を取り扱うメーカーも増え、現在はさほど問題はありません。
例えば、ヒト幹細胞治療の分野などではワーキンググループで、培養時に用いるウシ胎児血清と、異常プリオンの問題についても話が出てます。細胞培養によるワクチン作製でも、この辺りは無関係ではないはずなんですけど、「供給量を確保せよ」という論調の陰に隠れてしまってる感がある。特に海外では、日本ほど異常プリオンに神経質でない国が多いわけで、「国内での規準に照らし合わせれば」問題になって、後から騒ぎ出す人が出てくるんじゃないの? とか予想してみたり。
個人的にはまぁ、培養液からのプリオン混入(ワクチン精製過程では、むしろ濃縮されそうだし)のリスクがどの程度のものなのか「全く見当がつかず、判断の手がかりすらない」というのが正直なところ。なので、果たして安全側に倒して判断すべきか、それともとりあえず直近の問題だけを考えて「良し」とするかは、本当に悩ましいのだけど。
まぁ安全側に倒すなら、最低限のプリオンのモニタリングくらいは実施しておく、ということになるかなぁ……もっとも、それ以前に「輸入ワクチンは高齢者用、低年齢の人はできるだけ鶏卵ワクチンで」という風な割当が可能なら、それでほぼ解決可能な問題だろうと思いますけどね。
#プリオン病は遅発性なので、高齢者だったら万一感染しても発症前に天寿を全うする可能性が高いから。
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