yasuokaの日記: シフトJISの誕生 10
Windowsの前身にあたるMS-DOS開発時にマイクロソフト社などによって考え出されたのが「JIS漢字のコード領域をごっそり1バイト文字の領域と重ならないコード領域にズラしてしまえ」という方法、すなわち「シフトJISコード」でした
という誤解を非常に多く見かけるので、「シフトJIS」誕生に関して私が知る限りのことを、ここに記しておこうと思う。
「シフトJIS」を最初に採用したのは、三菱電機『MULTI 16』搭載の『日本語CP/M-86』で、1982年4月20日出荷開始(この時点の『日本語CP/M-86』は暫定版)である。この『日本語CP/M-86』を開発したのは、マイクロソフトウェア・アソシエイツと三菱電機であり、Microsoft社ではない。というのも、『CP/M-86』はDigital Research社の製品であり、日本での権利はマイクロソフトウェア・アソシエイツが握っていた。Microsoft社の出る幕はない。
その後、1982年10月29日にマイクロソフトウェア・アソシエイツは、『日本語CP/M-86』の文字コードである「シフトJIS」を他社も採用するよう、カリフォルニア州モントレーでデモンストレーションをおこなった。これを受けて、Microsoft社とその日本代理店であるアスキー・マイクロソフトは、1983年5月リリースの『MS-DOS 2.01』で「MS漢字コード」を採用している。ただし、この時点での『日本語CP/M-86』の「シフトJIS」と『MS-DOS 2.01』の「MS漢字コード」は、異なる点が一点だけあった。1区1点の「 」に対するコードが、「シフトJIS」では2020だったのに対し、「MS漢字コード」では8140に変更されていたのである。
なお、マイクロソフトウェア・アソシエイツがアスキー・マイクロソフトの子会社として設立された、というのは確かに事実だが、だからと言って、「シフトJIS」の開発までアスキー・マイクロソフトがおこなった、とするのは間違いである。Digital Research社製品はマイクロソフトウェア・アソシエイツが、Microsoft社製品はアスキー・マイクロソフトが、それぞれ担当するという「住み分け」は、マイクロソフトウェア・アソシエイツがDigital Research社の極東総代理となる際の基本条件だった。しかもマイクロソフトウェア・アソシエイツは、アスキー・マイクロソフトとの資本関係を1982年3月に解消しており、「シフトJIS」の発表はそれより後のことである。
シフト JIS 関係 (スコア:1)
Re: シフトJIS関係 (スコア:1)
古川享さんがシフトJIS誕生について書いています (スコア:1)
古川さんのブログで、シフトJISについてお聞きしたら、その誕生について非常に詳細なコメントをくださいました。
よろしければご参照ください。
Re:古川享さんがシフトJIS誕生について書いています (スコア:1)
http://spaces.msn.com/members/furukawablog/Blog/cns!1pmWgsL289nm7Shn7c... [msn.com]
Re:古川享さんがシフトJIS誕生について書いています (スコア:1)
これに対して、マイクロソフトウェア・アソシエイツの方は、長谷川均さんと岡崎健さんの『漢字CP/M®のコード体系 [bookpark.ne.jp]』(情報処理学会マイクロコンピュータ研究会資料, 26-2, 1983年3月7日)とか阿部雅人さんの『CP/M漢字標準化 漢字処理の現状』(information, Vol.2, No.4 (1983年7月), pp.81-87)とかの資料があって、わりとウラが取れる。で、現時点では、私としてはマイクロソフトウェア・アソシエイツに軍配を挙げているわけです。ただ、まあ、私もものすごく自信があるってわけじゃないので、『日本における最新文字コード事情 [kyoto-u.ac.jp]』(システム/制御/情報, Vol.45, No.9 (2001年9月), pp.528-535; No.12 (2001年12月), pp.687-694)や『文字符号の歴史 欧米と日本編』(共立出版、2006年2月発行予定)では、結構微妙な表現になっているんですが…。
Re:古川享さんがシフトJIS誕生について書いています (スコア:1)
資本関係の解消 (スコア:0)
それにしても、yasuokaさんの日記を拝見していたら、ほんの20年前のことでも解釈の問題というよりも事実の誤認らしきことが多いですね。ちょっと昔のことが一番不確かなのかもしれませんね(蛇足でした)
Re:資本関係の解消 (スコア:1)
資料はどんどん多くなっているのですが、信用ならない文書の比率も高いから、真実を明らかにするのは手間がかかります。
資料はそのソースを評価した上で吟味しないと、自分もウソ情報の発信源になりかねないし。
私は、ビデオデッキ進化論のようなものを書いてみたいと思っていますが、当時のビデオ雑誌はライターが開発担当者の半ば宣伝文句を書き写していることが多くてぜんぜん信用できません。
βは初期から殊再生が得意で、VHSはぜんぜんダメだったのに、現在はVHSが軽々と特殊再生をしている理由をきちんと書ける人ってあまりいないでしょう。
質問だらけですみません。 (スコア:0)
Re:質問だらけですみません。 (スコア:1)