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yasuokaの日記: 黎明期の全指タイピング法

日記 by yasuoka
全指タイピング法の嚆矢とされるElizabeth Margaret Vater Longleyの『Type-Writer Lessons for the Use of Teachers and Learners Adapted to Remington's Perfected Type-Writers』(Cincinnati, 1882年)の運指法を分析してみたところ、なかなか興味深い結果になった。特徴的な例を以下に示すので、ためしにQWERTYキーボードで打ってみてほしい。
after [42132]
a[左手小指]→f[中指]→t[人差指]→e[薬指]→r[中指]
answer [413432]
a[左手小指] n[右手人差指] s[左手薬指]→w[小指]→e[薬指]→r[中指]
because [1324232]
b[左手人差指]→e[薬指]→c[中指]→a[小指] u[右手中指] s[左手薬指]→e[中指]
citizens [22123213]
c[左手中指] i[右手中指] t[左手人差指] i[右手中指] z[左手薬指]→e[中指] n[右手人差指] s[左手薬指]
congress [23112344]
c[左手中指] o[右手薬指]→n[人差指] g[左手人差指]→r[中指]→e[薬指]→s[小指]→s[小指]
exactly [3242131]
e[左手薬指]→x[中指]→a[小指]→c[中指]→t[人差指] l[右手薬指]→y[人差指]
important [213221411]
i[右手中指]→m[人差指]→p[薬指]→o[中指] r[右手中指]→t[人差指]→a[小指] n[右手人差指] t[左手人差指]
judgment [21211311]
j[右手中指]→u[人差指] d[左手中指]→g[人差指] m[右手人差指] e[左手薬指] n[右手人差指] t[左手人差指]
kind [3212]
k[右手薬指]→i[中指]→n[人差指] d[左手中指]
knowledge [213333213]
k[右手中指]→n[人差指]→o[薬指] w[左手薬指] l[右手薬指] e[左手薬指]→d[中指]→g[人差指]→e[薬指]
length [331121]
l[右手薬指] e[左手薬指] n[右手人差指] g[左手人差指]→t[中指] h[右手人差指]
looked [322132]
l[右手薬指]→o[中指]→o[中指]→k[人差指] e[左手薬指]→d[中指]
many [1411]
m[右手人差指] a[左手小指] n[右手人差指] y[左手人差指]
object [311321]
o[右手薬指] b[左手人差指] j[右手人差指] e[左手薬指]→c[中指]→t[人差指]
plaintiff [434211211]
p[右手小指]→l[薬指] a[左手小指] i[右手中指]→n[人差指] t[左手人差指] i[右手中指] f[左手人差指]→f[人差指]
power [43321]
p[右手小指]→o[薬指] w[左手薬指]→e[中指]→r[人差指]
prosecution [42332121231]
p[右手小指] r[左手中指] o[右手薬指] s[左手薬指]→e[中指]→c[人差指] u[右手中指] t[左手人差指] i[右手中指]→o[薬指]→n[人差指]
punishment [4212312311]
p[右手小指]→u[中指]→n[人差指]→i[中指] s[左手薬指] h[右手人差指]→m[中指] e[左手薬指] n[右手人差指] t[左手人差指]
question [42231231]
q[左手小指] u[右手中指] e[左手中指]→s[薬指]→t[人差指] i[右手中指]→o[薬指]→n[人差指]
raised [242321]
r[左手中指]→a[小指] i[右手中指] s[左手薬指]→e[中指]→d[人差指]
subversive [3212323213]
s[左手薬指] u[右手中指] b[左手人差指]→v[中指]→e[薬指]→r[中指]→s[薬指] i[右手中指] v[左手人差指]→e[薬指]

すぐに見てとれるのが、各文字を担当する指が決まっておらず、単語によって指を変えている点である。たとえば「e」は基本的に左手薬指の担当だが、場合によっては左手中指も使う。あるいは「u」は基本的に右手中指の担当だが、場合によっては右手人差指も使う。もっともややこしいのが「k」で、基本的に右手中指の担当だが、流れによって人差指だったり薬指だったりする。むしろ、文字と指の関係が固定的な方がまれで、「a」が左手小指、「g」が左手人差指、「h」が右手人差指、「n」が右手人差指、「q」が左手小指、「z」が左手薬指にほぼ固定されている以外は、運指は自由自在と言ってよい。

つまるところ、Mrs. M. V. Longleyの全指タイピング法においては、同じ指を連続して使わないことがポリシーであって、そのためには指と文字を固定的に対応させるべきではない、ということである。このポリシーは『Caligraph Lessons for the Use of Teachers and Learners Designed to Develop Accurate and Reliable Operators』(Cincinnati, 1882年)でも同様であり、彼女にとっては、キー配列にかかわらず最優先すべきポリシーだったと思われる。

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