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yasuokaの日記: Dvorak配列の宣伝映画

日記 by yasuoka
August Dvorak監督のサイレント映画『A Motion Study of the Dvorak Simplified Typewriter Keyboard』(University of Washington / Robert Chick Studios共同制作 ©1942)が、YouTubeで公開されている(前編, 後編)という話を耳にしたので、さっそく見に行ってみた。一般公開されたことのない幻の映画なので、噂でしか知らなかったのだが、実際に見てみると、さすがにDvorak配列の宣伝映画だけあって、もの凄い画像が立て続けに流れる。何せノッケから

Motion pictures show why the mastery of typing has been difficult.
Here is one of the first workable typewriters, built by Christopher Latham Sholes in 1873.
In these first typewriters, vertical wires operated the typebars, which hung in a circle under the platen. To prevent the wires and typebars from crossing, and interfering with one another, Mr. Sholes purposely placed frequently-used letters in different quadrants of the typebar circle. Mr. Sholes' solution to his mechanical problems, resulted in this keyboard.

というテロップとともに、1873年発売の『Sholes & Glidden Model』の画像と、その当時のQWERTY配列の画像が、立て続けにドーンドーンと出るのだ。これじゃあ誰だって「使用頻度の高い文字どうしの活字棒が離れて配置されるように、SholesはQWERTY配列を作ったのだ」っていうネタを、つい信じ込んでしまうだろう。

だが実際に『Sholes & Glidden Model』の活字棒の配置を調べてみると、使用頻度の高い文字どうしであっても、活字棒は必ずしも離れていない。連続使用頻度第1位のTとHは確かにほぼ対角線上にあるが、第2位のEとRの活字棒はほとんど隣あって並んでいる。第3位のHとEは120度くらい、第4位のIとNも120度くらい、第5位のAとNは90度くらい、第6位のIとTは45度くらい、第7位のAとTは90度くらい離れている。つまり、連続使用頻度の高さと活字棒の離れぐあいの間に、ほとんど相関がない。

しかも、ちょっと考えればわかることだが、市販された『Sholes & Glidden Model』の活字棒の配置を決定したのは、発明者のChristopher Latham Sholesではない。活字棒の配置を最終的に決めたのは、E. Remington & Sons社の技術者たちで、具体的にはJefferson Moody CloughやWilliam McKendree Jenneだ。彼らは、Sholesが持ち込んだキー配列はほぼそのまま踏襲しながらも、タイプライターの内部機構は徹底的に改良していて、その結果、活字棒の配置は大きく変わってしまっている(U. S. Patent No.199263)。つまり、『Sholes & Glidden Model』をもとに「使用頻度の高い文字どうしの活字棒が離れて配置されるように、SholesはQWERTY配列を作ったのだ」などと言ったところで、それは歴史的経緯を全く知らないヤカラの当てずっぽうに過ぎないし、実際の使用頻度とも全く合っていない。

もちろん、この宣伝映画が示すように、Dvorak配列はQWERTY配列に比べれば、それなりに「打ちやすい」配列なのだろう。しかし、いくらDvorak配列の方がいい(と思ってる)からって、QWERTY配列に対するガセネタを広めてまで、Dvorak配列を宣伝するのは卑怯なんじゃないか、と思うのである。

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吾輩はリファレンスである。名前はまだ無い -- perlの中の人

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