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yasuokaの日記: 「者の中に点のある渚」と「者の中に点のない渚」

日記 by yasuoka
とつか町だよりにもコメントしたが、「者の中に点のある渚」と「者の中に点のない渚」とに関しては、「」や「」とは違う、また独特の問題があったりする。とりあえず、人名用漢字表とJIS規格票の周辺を追ってみることにしよう。
JISの原案にあたる『情報交換のための漢字符号の標準化に関する調査研究報告書』(日本情報処理開発センター, 1976年3月)では、29区78点に「点のある渚」が収録されていた。また、1976年7月30日に内閣告示された『人名用漢字追加表』にも「点のある渚」が収録されていた。つまりこの時点では、少なくとも内閣とJISの認識は一致しており、「点のある渚」が標準的な字体だったわけである。
ところが法務省民事局は、1976年8月20日に『法務省民二第4726号民事局第二課長依命通知』を全国の法務局長および地方法務局長あてに送付し、各支局長および市区町村長に周知するよう指示している。『人名用漢字追加表』で告示されたのは「点のある渚」だが、これに加えて「点のない渚」の出生届も受理して差し支えない、というものだ。つまり、人名用漢字として「点のある渚」も「点のない渚」も認める、というものだった。しかし、この依命通知は、JISの原案委員会には特に伝わらず、1978年1月1日制定のJIS C 6226では、29区77点に「点のある渚」が例示されているだけだった。
ところが法務省は、さらに暴走する。1981年10月1日に改正された『戸籍法施行規則』では、何と「点のない渚」が人名用漢字に昇格していた。この際に「点のある渚」は人名用漢字許容字体となり、当分の間だけ子の名に使える漢字となってしまった。1983年9月1日に改正されたJIS C 6226では、これに合わせて、29区77点の例示字体を「点のない渚」に変更した。1987年3月1日にJIS C 6226は、規格番号がJIS X 0208に変更されたが、「点のない渚」はそのまま変更されず現在に至っている。
1995年1月1日制定のJIS X 0221では、U+6E1Aに「点のない渚」と「点のある渚」が併記されており、これら2種類の字体が同じ文字コードに統合されている。もちろん、ISO 10646やUnicodeも同様である。一方、2000年1月20日制定のJIS X 0213では、「点のない渚」が1面29区77点に、「点のある渚」が1面86区87点に収録されており、両方の字体を使うことができる。つまり、「渚」における点のあるなしを、JIS X 0213では文字コードの違いで表現している。
さらに法務省は、『戸籍法施行規則』の2004年9月27日改正で、「点のない渚」も「点のある渚」も、いずれも等しく人名用漢字とした。これに対し、JIS X 0221は現在、改正作業中で、改正後は「点のある渚」をU+FA46で、「点のない渚」をU+6E1Aで表現するようになる予定である。
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