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yasuokaの日記: レミントン社のタイプ学校 2

日記 by yasuoka
松崎和久の『グループ経営と連携戦略』(学文社, 2006年4月)を読んだところ、ここにもQWERTY配列に関するアヤシゲなネタが披露されていた(pp.206-207)。

たとえば,今日,われわれが使用するパソコンのキーボード配列は,QWERTY配列によって標準化されている.しかしながら,その成り立ちや配列方式からみても,このQWERTY配列は非効率なものであるといわれている.このような非効率な配列方式が支配的なものとなった最大の理由とは,ある歴史的な偶然の出来事がその後にも大きな影響をもたらすという事実である.つまり,パソコンのキーボード配列の起源は,QWERTY配列を開発したレミントン社がタイプ学校を開校した際,QWERTY配列によって教育したことから普及し,その後,顧客の囲い込み(ロックイン)やネットワークの外部性が働き,事実上の標準となった経緯がある.

ここでいう「レミントン社」が、最初にQWERTY配列のタイプライターを発売したE. Remington & Sonsを指しているのなら、この文章は全くのデタラメだ。私の知る限り、E. Remington & Sonsがタイプ学校を開校したなどという記録はない。というか、そもそもE. Remington & Sonsはタイプライターの製造を請け負っただけで、営業や販売はDensmore & Companyが全ておこなっていた。その後、販売業者はLocke, Yost & Batesに変わり、さらにE. T. Fairbanks & CompanyからWyckoff, Seamans & Benedictへと変遷しているが、この間もE. Remington & Sonsがタイプ学校を開校したなどということはない。実際、1880年代のタイプ学校は、基本的には個人経営であり、しかも複数の会社のタイプライター、特にRemingtonとCaligraphの両方を教えている場合が多い。タイプ学校によって、QWERTY配列が「事実上の標準となった」などという説は、当時のタイプ学校の実情を全く調査していないヤカラの妄想に過ぎない。
そもそも、この書籍は「グループ経営」に関する著作のはずなのに、なぜTypewriter Trustというかなり巨大な「グループ経営」を無視して書かれているのだろう。現代の「グループ経営」だけが大事なのであって、19世紀末アメリカの「グループ経営」など知る必要もない、ということなのだろうか。

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  • Yasuokaさんへ

     と学会会長として有名な山本弘は、「不幸の手紙研究」を発表しました。
     彼は不幸の手紙を収集し、微妙なバリエーションがあることを発見し、それを系譜にしたのです。すると、進化の系統樹みたいなものができて、非常におもしろい結果が出ました。「棒の手紙」と俗に言われている奇妙な文章の起源がわかったのです。
    http://homepage3.nifty.com/hirorin/bonotegami.htm [nifty.com]
     これと同じようなことが、QWERTY伝説にもないでしょうか?最初に誰かがウソを書き、それを書き写して・・・と伝言ゲームが続くうちに、書き手にとって都合のいいように修飾が加えられていく。
    • 実は、今、書いてる本の第8章は「ドボラック配列とQWERTY伝説」っていう仮題を付けてまして、QWERTY伝説が変化していく様子を頑張って追っています。さすがにナンバリングとか全然されてないので、系統樹は無理ですが…。書店に並ぶまでには、まだもう少し時間がかかりそうですけど、乞うご期待!
      親コメント
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にわかな奴ほど語りたがる -- あるハッカー

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