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yasuokaの日記: 『pronto pronto?』Vol.10のガセネタ

日記 by yasuoka
『pronto pronto?』Vol.10 (2007年11月)を読んでいたところ、「トリビア名誉教授 唐沢俊一のビジネス課外授業。」(p.17)に、かなり奇妙な記述を見つけた。

政治家などに贈られるお歳暮には高価なものが多いようだが、彼らも青くなるのは、豊臣秀吉がまだ羽柴秀吉と名乗っていたころ、主君の織田信長に贈ったお歳暮だ。記録によれば備前長船の名剣一振・白銀千枚・衣服百着・馬の鞍十頭分・白紙三百束・なめし革二百枚・明石干鯛千匹・干蛸三千個・野里の鋳物、ほかに信長の側室たちに銀子三百枚・小袖数百枚というすごさで、さすがの信長もこれには驚き、秀吉の実力に舌を巻いたという。

馬の鞍10頭分? 戦国武将に鞍だけ贈ってどうするんだろう? さっそく、これの元ネタを探してみたところ、遠山信春の『織田軍記』(貞享3年)が、天正9年12月の出来事として、以下のように記していた(巻第21)。

翌日秀吉登城し御目見、獻上の次第、國久御太刀一腰、白銀千枚、呉服百、鞍置馬十疋、播州杉原三百束、革二百枚、明石干鯛千枚、鑄物色々、蜘蛛蛸三千連、此外女中にも其々に進上これあり、大臣家甚だ御怡悦、今度因州鳥取の城を始め所々に於て武功の働き、當時無双名譽の由、斜ならず御褒詞これあり

元ネタには、ちゃんと「鞍置馬十疋」つまり「鞍を着けた馬10頭」って書いてある。「鞍置馬」を「馬の鞍」と解釈するなんて、正直言って、頭のネジが緩んでるとしか思えない。馬を贈る時には鞍を含め馬具一式を着けて贈る、っていう当時の慣例を知っていれば、馬の鞍だけ贈るなんていう馬鹿げた話にはならないはずだ。そう思ってこの文章を読み直してみると、元ネタは「國久御太刀一腰」なのに、これを唐沢俊一は「備前長船の名剣一振」にしてしまってる。宇多国久は越中の刀工だろ。なんでそれが備前長船になるんだ。

っていうか、信長は「甚だ御怡悦」だったのであって、「秀吉の実力に舌を巻いた」なんてことはない。そもそも信長が認める「実力」ってのは、因幡鳥取など各地の平定であって、お歳暮の量じゃない。それとも『pronto pronto?』のいう「ビジネス」においては、鳥取の城攻めより、主君へのお歳暮の量こそが「実力」だ、という主張なのだろうか?

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