パスワードを忘れた? アカウント作成
35157 journal

yasuokaの日記: A判の起源

日記 by yasuoka
桜井進の『雪月花の数学』(祥伝社, 2006年8月)の以下の文章が気になったので、ちょっと調べてみた。

用紙の専門用語で「A列」と呼ばれるA判は「A0」から始まる。A0は縦の長さが1189mm、横が841mmだ。計算してみれば分かるが、面積は0.999949m2。要するに1m2になる。きわめて絶妙な数字である。このA0を基点として半分にしてゆく数列を編み出したのは、色彩理論で有名なドイツの化学者、ウィルヘルム・オストワルトである。彼は1909年にノーベル化学賞を受賞しているが、哲学者でもあった。オストワルトの考案したA判は、後にドイツ工業院の規格となる。(pp.48-50)

結論から書くと、A判を考案したのはFriedrich Wilhelm Ostwaldではない。Ostwaldが『Börsenblatt für den Deutschen Buchhandel』1911年10月18日号に発表した紙のサイズは、1cm×1.41cmを基本として、1.41cm×2cm、2cm×2.83cm、2.83cm×4cm、…と倍々にしていくもので、A判とはサイズが全く異なる。

DIN 476「Papierformate」(1922年8月18日制定)の基となったのは、フランスで18世紀末から使われてきた紙のサイズだ。たとえば、フランス共和暦13 Brumaire an VII (1798年11月3日)公布の法律2136号「Loi sur le timbre」には、以下の6種類の紙のサイズが規定されていた。

                  HAUTEUR LARGEUR SUPERFICIE
Grand registre     0.4204  0.5946  0.2500
Grand papier       0.3536  0.5000  0.1768
Moyen papier       0.2973  0.4204  0.1250
Petit papier       0.2500  0.3536  0.0884
Demi-feuille       0.2500  0.1768  0.0442
Effets de commerce 0.0884  0.2500  0.0221

これらのうち、Grand registreは0.4204m×0.5946m=0.25m2でA2判、Moyen papierは0.2973m×0.4204m=0.125m2でA3判そのものだ。また、Grand papierはドイツでのB3判、Petit papierはドイツでのB4判、Demi-feuilleはドイツでのB5判である。つまり、6種類の紙のサイズのうち、Effets de commerceを除く5種類が、いずれもDIN 476にそのまま採用されている。

ちなみに、日本標準規格第92号「紙ノ仕上寸法」(1929年12月4日決定)は、A判はDIN 476を踏襲しているものの、B判はDIN 476より少し大きい。ドイツのB0が1.4142m2なのに対して、日本のB0は1.5m2である。なお、A判とドイツのB判は、ISO/R 216「Trimmed sizes of writing paper and certain classes of printed matter」(1961年11月勧告)で国際規格となったが、日本のB判は国内規格のままである。

この議論は、yasuoka (21275)によって ログインユーザだけとして作成されたが、今となっては 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

アレゲは一日にしてならず -- アレゲ見習い

読み込み中...