yasuokaの日記: 戸籍委員会の速記録
人名用漢字の新字旧字のネタを探すべく『戸籍』のバックナンバーをチェックしていたところ、No.316~No.340にかけて、昭和21年10月24日~昭和26年6月29日に開催された司法省戸籍委員会(のちに法務庁戸籍委員会、法務府戸籍委員会を経て民事行政審議会戸籍委員会)の速記録が掲載されているのを見つけた。特に、昭和24年6月2日の第14回法務府戸籍委員会の以下の部分が興味深かったので、とりあえずここに記しておこうと思う(『戸籍』No.331 (1973年11月号), pp.19-33)。
鵜沢議長 今日実状に即さない戸籍事務の取扱について御意見を伺いたいと思います。先ず、例の名前の文字の取扱についてであります。これは戸籍法第五十条、施行規則第六十条によつて内閣昭和二十一年告示第三十二号当用漢字表に掲げる漢字又は片かな、平かなということになつているのでありますが、これの施行当時姓名判断等の面から、もう六十字ふやしてもらいたいという声もあつたが、その後も、改名等の問題があるわけで、最終的には文部省の方とも協議しなくてはならないが、差当り皆様がどうお考えになつておられるか、お伺いしたいと思います。
成毛委員 これはもつとふやした方がよいと思います。例えば、弘とか寅とかもつとありますけどよく使われているのですからこういうのは、ふやしてもよいのではないかと思います。
新田委員 これは随分一般の人から抗議があるのですが。制限を廃止してしまつたらどうでしようか。
河合参列員 この問題は、要するに今後、日本の国語について我々どういう風に協力するかが問題になるのであつて、現在、日本の文字は五万もあり、日本人の八割六分までが小学校しか出ていないのでその小学校を出たものは、平均六百五十六字しか書けないというのです。出来れば従来通り五万の文字を残しておけば便利ではあるが、将来子供達が生長した時の事を考えるとこれはこの際我々が国語問題に協力をしてやつていかなくてはならないのではないかということになるのであります。国語審議会においては、この文字をもつと少くしたらどうかという意見もあつた程であります。
新田委員 御もつともですが無理強いをするというのはどうかと思われます。
河合参列員 人の名前だけはかながきに出来ないものだからどうしても読む者に強制する事になるわけで、その点から制限をはずすことには不賛成です。
中村委員 私は漢字制限はよいと思います。私共が戸籍の読み合せをしていても非常に読めない字が多いのであります。
朝生委員 姓の方に難かしいのがあるのに、名前だけ当用漢字であるというのはおかしいのではないか。
西井委員 一家創立の場合等は制限するのがよいでしょうね。
成毛委員 今は名前が沢山の文字でそれぞれ異つてつけられているが将来は同じような名前が多くなるという不便が出て来るのではないでしようか。この点からこの制限はとつた方がよいと思います。
鵜沢議長 大体、河合さんの言われた国語制策の面からの考え方と、今迄の国民感情の面からという二つを除いては大体名の文字だけを法律で制限するということに問題があるのでしようか。
新田委員 名前の制限は憲法違反だという声もある位です。
鵜沢議長 国民感情以外の理由で反対の理由はありませんか。
成毛委員 今も言つたように同姓同名が多くなつて将来困るのではないかと思います。
鵜沢議長 遠方からおいでになつておられる方もありますので、今日はこの辺で打ち切りたいと思います。
え、そこで打ち切っちゃうの? という感じがしないでもないが、法務府民事局第二課長の鵜沢晋としては、『真相』の松原宏遠が長女「瑛美」の出生届不受理で民事局に怒鳴りこんできていたので、ちょっと皆んなにも訊いてみたかったということなのだろう。ちなみに発言者の顔ぶれは、千葉地方法務局戸籍課長の成毛鐵二、千代田区役所民生課長の新田豊、東京地方裁判所判事の河合清六、大宮市役所戸籍課長の中村芳太郎、千葉市役所戸籍課長の朝生重三、東京都庁総務局地方課の西井昌司なので、たいして遠方じゃなかったりするのが微妙だったりする。
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