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yasuokaの日記: 漢字制限と保科孝一

日記 by yasuoka

芳賀明夫ブログでの私(安岡孝一)のコメントを読んだ方々から、「戦後日本史漢字対談は、いつですか」とご質問があった。いや、その、お相手はクラレの会長さんだし、私の方がいくら乗り気でも、そう簡単に実現するとは思えないんだけど…。

ただ、正直なところ、私が和久井康明の『漢字の使用制限を撤廃せよ』(日本経済新聞、第44902号(2011年1月31日)、朝刊p.5)に、噛みついたのは、この記事が漢字制限のことを話していながら、記事の中に「国語審議会」も「文化審議会国語分科会」も出てこないからだ。それでいて、「連合国軍総司令部(GHQ)」が当用漢字を導入した、なんていう話が出てくる。

それは少なくとも、昭和20年11月27日の国語審議会での保科孝一(国語審議会幹事長)の以下の発言を、全く無視しているということだろう。

社会上教育上の立場から漢字は自然に減少し、文体の平易化は自然に行われることと思うが、本問題はさらに新日本再建上断行の時は今であり、日本の民主化にとり欠くべからざる重要事業である。ことに連合軍司令部から文部当局に対し教科書の漢字表を1500字ぐらいにせよとの申入れがあった由であるが、その申入れにしぶしぶ応ずるのは当方としては不見識であると思う。よろしく独自の立場から1200字ぐらいにしたいと考える。

ただし、保科孝一は、その5年ほど前には以下のような発言もしているので、実は、かなり要注意人物だったりする(『國語教育』昭和15年6月號p.4)。

陸軍が兵器名稱および用語の簡易化を圖られるに至ったことは、單に國防の上からばかりでなく、一般國民教育の上から見て、一層慶びに堪えないところである。今日のごとく、文化に對する世界的競争の激しい時代において、文字の教育に多大の時間と努力を費やしていては、勝味のないことは明である。ことに漢字制限の成否は國家興亡のわかれるところで、このままに看過することが出來ない重大な問題である。

まあ、これらの発言を読む限り、保科孝一は、日中戦争だろうが敗戦だろうが、大日本帝国陸軍だろうがGHQだろうが、とにかく漢字制限がやりたかった、ということなのだろう。そのあたりを、『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂、平成23年3月発行予定)では、私なりに描いて見せたつもりなので、ぜひぜひ読んでみてほしい。

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「科学者は100%安全だと保証できないものは動かしてはならない」、科学者「えっ」、プログラマ「えっ」

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