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299225 journal

yasuokaの日記: ライシャワーと地名のローマ字 1

日記 by yasuoka

昨日のパスポートのヘボン式ローマ字の読者から、ハングルのローマ字も混在している、との御意見をいただいた。そのあたりについて、以前、私(安岡孝一)が『NかMか』を書いた際に調べたことをふっと思い出したので、ここに記録しておくことにする。

1937年9月21日に内閣告示された「訓令式ローマ字」に対し、Edwin Oldfather Reischauerは、もう一つ重要な論文を書いている。George McAfee McCuneとの共同執筆で、『Transactions of the Korea Branch of the Royal Asiatic Society』の1939年10月号(Vol.29, pp.1-55)に発表された「The Romanization of the Korean Language Based upon Its Phonetic Structure」である。当時は、朝鮮総督府においても「訓令式ローマ字」が有効であり、総督府の英語名称も「Government-General of Chosen」から「Government-General of Tyosen」に変更されたほどだった。これに対し、ライシャワーとマッキューンの論文は、訓令式ではなく、ハングルの音韻によるローマ字を提案したもので、日本政府の方針に真っ向から反対したものだった。

1943年8月、アメリカ陸軍少佐となったライシャワーは、朝鮮を含む日本の地名のローマ字表記に、McCune-Reischauer SystemとModified Hepburn (Romaji) Systemの使用を提案している。この提案はArmy Map Serviceの公式方針となり、これに添って「Guide to Geographical Names in the Japanese Empire」(U. S. Board on Geographical Names, Special Publication No.25, 1944年8月)も決定された。この結果、アメリカではその後も、日本本土の地名のローマ字表記についてはModified Hepburn (Romaji) Systemが、朝鮮の地名のローマ字表記についてはMcCune-Reischauer Systemが、それぞれ使われ続けることになった。

ちなみにこの方針は、日本本土においてはGHQに踏襲され、1945年9月3日のSCAPIN-2に、以下の命令が含められる(Part II, 17)ことになったわけである。

The Japanese Imperial Government will insure that the names of all towns, municipalities, and cities are posted in English on both sides of each inter-city highway entrance and on railroad station platforms, using letters at least six (6) inches high. Transcription of names into English shall be in accord with the Modified Hepburn (Romaji) system.

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