パスワードを忘れた? アカウント作成
7433386 journal
日本

yasuokaの日記: 国語審議会固有名詞部会における人名用漢字選定

日記 by yasuoka

人名用漢字の「晋」と「麿」の読者から、松坂忠則が書いた『当用漢字の危機』(教育国語, 第39号 (昭和49年12月), pp.2-23)という記事をお教えいただいた。

この戸籍法改正案は、衆議院は通過したが参議院で押さえられて、流れてしまった。しかし、政府は政治的配慮によって、国語審議会に、人名用の漢字を百字ほど補足する案を注文した。それで国語審議会は九十二字を選んで建議し、それが翌二十六年に「人名用漢字別表」として内閣告示になった。「丞、亮、圭、弥」や、十二支の「丑、寅」の類が選ばれている。わたしもその字さがし作業に加わったが、百字近く集めるのに苦労した。わざわざ補足しなければならないと認められる漢字など、ないからである。

まあ、松坂には松坂の立場があるのだろうが、国語審議会固有名詞部会(昭和26年3月13日, 20日, 27日, 4月4日, 11日, 19日, 5月4日, 14日)の議事録を読む限り、松坂の↑の文章を鵜呑みにするわけにはいかない。少なくとも、3月27日の固有名詞部会の時点では、93字の人名用漢字候補が集められていて、4月4日には、さらに13字の追加候補が提案され、いったんは106字になっている。ところが4月11日に人名用漢字候補は92字になり、4月19日には87字に削られ、さらに5月4日には47字にまで削られたのだが、5月14日には92字まで復活して、『人名用漢字別表』(昭和26年5月25日内閣告示第1号)となったわけである。つまるところ、固有名詞部会の中にも人名用漢字反対派と賛成派がいて、その綱引きで92字に落ち着いたわけである。

もちろん松坂はバリバリの反対派であり、↑の文章も、昭和49年末という時期からして、人名用漢字追加という法務省の「策謀」に対する「牽制」であったことは、想像に難くない。しかし、結局『人名用漢字追加表』(昭和51年7月30日内閣告示第1号) 28字により、松坂の「牽制」もむなしく、人名用漢字は120字となってしまったわけである。

この議論は、yasuoka (21275)によって ログインユーザだけとして作成されたが、今となっては 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

アレゲはアレゲを呼ぶ -- ある傍観者

読み込み中...