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日本

yasuokaの日記: 常用漢字は「外字」なのか 5

日記 by yasuoka

榎並利博の『電子行政における外字問題の解決に向けて』(富士通総研経済研究所研究レポート, No.400, 2013年2月)を読んでほしい、とアチコチから連絡をいただいた。読んでみたのだが、2010年の『常用漢字表』改定にまつわる議論を全くフォローしておらず、そのために、正直かなり頓珍漢な内容となっている。それを端的に示しているのが、【追補2】の以下の文章だろう(p.41)。

時代に即して合理的に物事を考え、外字問題を解決していくのは、本来国語審議会の役割ではないだろうか。国語審議会の存在意義が問われていると言っても良いだろう。

存在意義も何も、国語審議会は2000年12月に、『表外漢字字体表』の答申をもって解散した。いまさら存在意義とか言われても、読者は困惑するばかりだろう。こういう調子なので、文化審議会国語分科会が答申した『改定常用漢字表』も全く理解しておらず、その結果、以下のようなわけのわからない「問題解決のための提案1」がおこなわれている(p.37)。

(案1)行政手続きで使用する漢字(氏名や地名など)をJIS第1水準とJIS第2水準に制限し、それ以外の漢字の使用を法律で禁止する。現状でそれ以外の漢字を使っている場合は、JIS第1水準とJIS第2水準の範囲内の類似した漢字に置き換え、置き換え不可能な漢字については「ひらがな」または「かたかな」に置き換えることとする。なお、氏名漢字の置き換えについては、本人の同意を得ることが望ましいが、不可能である場合は職権によって行うこととする。

現時点での『常用漢字表』2136字の中に、JIS第1水準でもJIS第2水準でもない漢字があることを、榎並は知らないのだろうか。この研究レポートの中では全く論じられていないし、過去の議論(たとえばこれ)も全く引用されていない。少なくとも「頰」に関してどうすべきかくらいは明示しないと、「問題解決」にならない。一方、「問題解決のための提案2」は、もっと不可解である(pp.37-38)。

(案2)行政手続き(戸籍業務を除く)で使用する漢字(氏名や地名など)をJIS第1水準とJIS第2水準に制限し、それ以外の漢字の使用を法律で禁止する。現状でそれ以外の漢字を使っている場合は、JIS第1水準とJIS第2水準の範囲内の類似した漢字に置き換え、置き換え不可能な漢字については「ひらがな」または「かたかな」に置き換えることとする。なお、氏名漢字の置き換えについては、本人の同意を得ることが望ましいが、不可能である場合は職権によって行うこととする。

人名用漢字の「鷗」を戸籍以外では「鴎」と書け、という提案で、それはそれで面白いが、到底容認される提案ではないだろう。しかも、この提案だと、たとえば「岡山市中区穝東町」は、町名表示を全て変更しなければならないのだが、そのコストはいくらで、それは誰が負担してくれるのだろう。それは、たかが「外字」問題を解決するのに、見合うコストなのだろうか?

非常に残念だが、この研究レポートの議論は、「和文タイプライターのために漢字を制限せよ」と同レベルで、「かな漢字変換の最前線を知らない人」としか言いようのない議論だ。「外字」のコストがかかっているのは事実だが、それはその「外字」が現在あるいは過去に使用されている以上、いつかは必要となるコストだし、それに見合った入出力法を開発する必要もあるだろう。そういう議論をちゃんとおこなわず、使用する漢字の方を制限したいのなら、せめて、現時点での常用漢字と人名用漢字がどうなっているかぐらい、ちゃんとチェックしてからレポートしてほしい。

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