yasuokaの日記: マイナンバーと地方税法における守秘義務
『自治体ソリューション』第1巻第9号(2015年3月号)「Q&Aで読み解くマイナンバー制度」のQ48
地方税法では、地方税に関する調査や徴収に従事する者が地方税関係情報を第三者に提供することを禁じる守秘義務について規定されていますが、番号法の規定に基づいて情報提供ネットワークシステムを通じて地方税関係情報を提供することと地方税法上の守秘義務との関係は、どのように考えるべきでしょうか?
(p.39)を、読んでみてほしいとの御連絡をいただいた。読んでみたのだが、『地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン』(平成25年8月)に関して大嘘が書いてあり、はっきり言って読むに耐えないものだった。特に以下の部分がひどい。
このガイドラインにおける記述が意味していることは、情報提供ネットワークシステムを通じて他の行政機関に地方税関係情報を提供することが許容されるのは、番号法別表第二に規定されている事務のうち、
a. 法律の定めにより、本人が行政機関に対して報告を行う義務がある場合
b. 本人の同意により秘密性が解除されている場合
のいずれかに該当する場合であり、aのような法律の定めがない場合は、bに該当する場合に限り、情報提供ネットワークシステムを通じて地方税関係情報を提供することが許容されるということになります。
そんなこと、『地方公共団体における番号制度の導入ガイドライン』には書いてない。当該ガイドラインの実際の文章(p.107)は、こうだ。
また、番号法別表第二に規定している情報提供ネットワークシステムを利用することができる組み合わせについては、上記①で述べた現在の地方税法上の守秘義務の運用を踏まえ、
a. 利用事務の根拠法律において、本人が行政機関に対して報告を行う義務が規定されており、本人にとってはその行政機関に情報が伝わることは秘密として保護される位置づけにないと解される場合
b. 利用事務が申請に基づく事務であり本人の同意により秘密性が解除される場合
に限って列挙されている。
「番号法別表第二に規定されている事務のうち」aとb「が許容される」ってのは大嘘で、「番号法別表第二」はaとb「に限って列挙されている」と、当該ガイドラインは述べているのだ。「別表第二のうちaとbが許容」と「別表第二はaとbを限定列挙」では、話も何も全く違ってしまう。しかも「利用事務が申請に基づく事務であり」を削るかたちで、わざわざ「本人の同意」が必要であるかのように擬装してるし。こういうタイプの「元の意図を捻じ曲げる引用もどき」ってのは、正直なところ話にならない。
そもそも番号法第29条は、行政機関個人情報保護法第8条第2項第1号を書き換えることで、「本人の同意」に「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって」という厳しい条件を付けている。端的には、本人が同意しようと同意しまいと、番号法別表第二の事務における特定個人情報の扱いが変わったりはしないのだ。一方で、地方税法における守秘義務が、「本人の同意」で解除されるなんて話は、地方税法のどこにも書いていない。ヨタ話もいいかげんにしろ、と思うのだが、このあたり総務省自治税務局はいったいどういうつもりなんだろう。
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