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日記

yasuokaの日記: 表面分析法の標準化におけるQWERTY配列

日記 by yasuoka

ネットサーフィンしていたところ、吉原一紘の『標準化の軌跡』(Journal of Surface Analysis, Vol.22, No.1 (2015年7月), pp.2-10)という論文に行き当たった。表面分析法の標準化の歴史について述べた論文だが、どうやら橋本毅彦に騙されたらしい。問題の部分を引用してみよう。

タイプライターは19世紀後半にScholesにより考案された.当時のタイプライターは長いバーの先に活字 を取り付け,キーを叩いて印字するタイプであった.この方式だと連続する文字のバーが近くにあると,ぶつかり合ってうまく打てなくなる.そのため,連続する頻度の高い文字のキーはできるだけ〈離れて〉配置するようにした.これが現在,一般に使われている「QWERTY」配列である.しかし,この考え方は,作業効率という観点からは正反対で,タイピングの効率を考えれば,連続する頻度の高い文字のキーはできるだけ〈近接して〉配置すべきである.

「Scholes」がChristopher Latham Sholesのことを指しているのだとすると、この文章は全くのガセネタだ。英語において、連続する頻度が最も高い2文字はthだが、tとhはQWERTY配列で近接して配置されている。その次がerだが、やはり隣り合っている。「できるだけ〈離れて〉」などいない。

しかし,タイピストたちは慣れ親しんだ「QWERTY」配列から離れようとはせず,現在でも「QWERTY」配列が標準となっている.これは「de facto standard」と呼ばれる.

19世紀末の話ならば、確かにQWERTY配列は「de facto standard」だったろうが、現在においてはANSI INCITS 154やJIS X 6002になっているのだから、もはや「de jure standard」だろう。というか、そういう「de facto standard」が「de jure standard」になっていくスッタモンダを、『キーボード配列 QWERTYの謎』の終章に書いたのだが、表面分析研究会の方々には届かなかったのかしら…。

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