yasuokaの日記: 「獨」の甲骨金文用例 6
日記 by
yasuoka
私(安岡孝一)の4月2日の日記の読者から、昨日の『東京新聞』(第26716号)のp.1「筆洗」を読んでみてほしい、との御連絡をいただいた。
▼さて問題はドイツ。漢字表記は「独逸」や「独」となる。一八〇〇年代にはすでにあったと聞くが、「独」の当て字に対し、ドイツ人の漢字研究者クリストフ・シュミッツさんが差別的ではないかと問題提起している▼気にしたことがなかったが、白川静さんの「字解」によると「独」の字には「一匹の獣」の意味がある。日本人得意の語呂合わせの類いで、ドイツに対し侮蔑の意味を込めケモノヘンを当てたわけではないと信じるが、妙な漢字を勝手に当てられた側には不愉快な話であろう▼「逸」には逸品など、良い意味もあるとなだめてみても収まるまい。傷つく人がいる。問題提起に耳を傾けたい。
白川静に『字解』なんて本は無かったように思うのだけど、『字通』(平凡社、1996年10月)の誤植だろうか。
だとしても、私の知る限り「獨」には、甲骨金文の用例は見つかっていない。もう少し時代が下ってから作られた漢字の可能性が高いのだ。一方、白川漢字ワールドのメインターゲットは、あくまで古代呪術の時代である。その点を考えると、「獨」や「独」を白川静の説で解釈するのは、そもそも論として無理がある。作られた時点で「蜀」の原義が失われていた可能性があり、音だけが使われた可能性があるからだ。ましてや19世紀以降の用例を解釈するなど、牽強付会もいいところだろう。どうしても「一匹の獣」と解釈したいのなら、そういう甲骨金文の用例を、ぜひ『東京新聞』は発掘してほしい。
中華思想 (スコア:1)
例のドイツ人による記載です。白川静が「中華思想です」と言ったのを、このドイツ人が勝手に「(日本人の)中華思想です」と補った気配があります。
明治以降、ドイツ人の日本語学者/話者はいくらでもいたのに、このドイツ人と同様の主張はないように思います。白川を含め、過去に同様の主張をした日本人はいたのでしょうか?
Re:中華思想 (スコア:2)
「独逸」と「独乙」の表記に関する議論としては、最近の論文だと
あたりが挙げられるんですけど、「中華思想」とか言ってる論者は見当たりませんでした。まあ、もうちょっと古い論文も見てみるかな。
字解 (スコア:1)
Re:字解 (スコア:1)
Re:字解 (スコア:1)
『常用字解』第二版における「獨」 (スコア:2)
このあたりを、私(安岡孝一)の今日の日記 [srad.jp]で少し考えてみました。今日は、白川静の誕生日らしいので、よければどうぞ。