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教育

yasuokaの日記: 白川静『常用字解』第二版における「獨」と「髑」

日記 by yasuoka

私(安岡孝一)の4月6日の日記の読者から、白川静『常用字解』第二版(2012年3月、平凡社)の「独(獨)」(p.533)を読んでほしい、との御指摘をいただいた。

形声。もとの字は獨に作り、音符は蜀。蜀に韣(ゆみぶくろ)の音がある。蜀は牡の獣の形で、虫の部分はその性器の形。牡の獣は群れを離れていることが多いので、獨は一匹の獣の意味から、人に移して「ひとり」の意味に用いる。特・徒と通じて「ただ」ともよむ。

この「獨」には、篆文が示されているだけで、甲骨金文の用例は無い。また、「獨」を「形声」としながら、その解釈に「蜀は牡の獣の形」なんてのを持ち込んでしまっている。そんなことをすると、同音の「髑」の解釈に困る。というのも、「獨」にも「髑」にも、私の知る限り、甲骨金文の用例は見つかっていない。いずれも、もう少し時代が下ってから作られた漢字の可能性が高く、「蜀」の音だけが使われた可能性が高いのだ。その点を考えると、「獨」に対して「蜀は牡の獣の形」という解釈を示しておきながら、「髑」に関して何にも言わないのは、かなり恣意的な論法だと言わざるを得ない。

「獨」だけを解釈して「髑」を解釈しない、という態度は、『字通』や『字統』においても同様である。「髑」を解釈すると何かマズイのかもしれないし、あるいは、「髑」が白川漢字ワールドのメインターゲットから外れている、ということかもしれない。ただ、「髑」という漢字こそ、古代呪術による無理矢理な解釈が面白そうだと思うのだが、そのあたり白川静は、どう考えていたんだろう。

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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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