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日本

yasuokaの日記: MJ縮退マップとマイナンバー

日記 by yasuoka

私(安岡孝一)の2011年7月13日の日記の読者から、朱一星の『「絶対漢字」と漢字の「字体」―デジタルファースト時代の漢字コード問題―』(京都外国語大学研究論叢, 89号(2017年7月), pp.161-176)という論文を読んでみてほしい、との御連絡をいただいた。読んでみたのだが、事実無根のネタが書き連ねてあって、かなりひどいシロモノだった。特に「MJ縮退マップ」に対する誤解がひどく、ノッケからこんな内容なのである。

2016年1月より,日本で個人番号(マイナンバー)制度の本格的な実施と共に,各自治体では人名漢字登録に関してある措置が行われた。それは,住民基本台帳ネットシステム統一漢字と戸籍統一漢字など約6万字ある文字情報基盤の漢字を過去の関連告示等をもとに整理し,最終的には約1万字のJIS X 0213 (JIS第1水準~第4水準)文字表への「縮退」である。

個人番号制度の実施は2015年10月5日、「MJ縮退マップ」の発表は2015年3月31日だ。両者の間には何の関係もなく、たとえば、通知カードや個人番号カードの氏名欄も、「MJ縮退マップ」の適用などしていない。「MJ縮退マップ」がそういう用途に使えない、という事実は、私自身、何度か(これとかこれとか、あるいはIPAの会議で直接)指摘したとおりだ。

漢字に対する「包摂」は,次の三種類に大別できると思う。一種類目は,本論文冒頭に触れたマイナンバー制度の実施と共に行った情報処理推進機構の「縮退マップ」による措置である。厳密に言うと,これはユニコードの漢字包摂と一線を画すべきであるが,ユニコードの漢字包摂とまったく同じ方向の発想である。このことには異論を挟む余地がない。

異論を挟む以前に、朱一星の論旨が全く理解できない。そもそも「MJ縮退マップ」による「措置」など、通知カードの氏名欄にも、個人番号カードの氏名欄にもおこなわれていない。おこなわれていない「措置」に対して、それが「ユニコードの漢字包摂とまったく同じ方向の発想」とか書かれても、何のことなのかサッパリ理解できない。これ以降も「包摂」に関して、エンエンと議論しているかのように見えるのだが、そもそもの事実認識に何か誤りがあるらしく、サッパリ理解できない文章が続いている。

6年前にも感じたのだが、朱一星は「議論の前提となる事実を確認する」という視点が、全く欠落しているように思える。その結果、論考全体が「砂上の楼閣」というか、「妄想」としか言いようのないものになっている。6年たってもこのザマじゃ、さて、どうしたものやら。

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